August 17, 2012

それはダブルスタンダードとは言わない

佐藤優くん、もう少し頭がいい人物かと思っていたけれど、この程度では、ほんと日本の外務省(出身者を含めて)のお頭は大丈夫かいなと、KAIはほんと心配になるのであります。

 領土問題に関して、

 1.双方が領土問題が存在していないとする場合、領土問題は存在しない、

 2.双方が領土問題が存在するとしている場合、領土問題は存在する(北方領土に関しては、日露両国が領土問題の存在を認めている)

 3.一方が領土問題は存在するとし、他方が領土問題は存在しないとする場合、客観的に見て領土問題は存在する。

という3つのケースが存在する。竹島問題に関しては3.に該当する。日本は領土問題が存在すると主張し、韓国は領土問題が存在しないと主張している現状を、第三者が客観的に見る場合、領土問題が存在することになる。それだから、ICJ(国際司法裁判所)への提訴を含む外交交渉を日韓両国が行うべきである。

 このような日本の主張は、国際的に説得力を持つ。

 尖閣問題に関し、日本は領土問題が存在しないと主張し、中国と台湾は領土問題が存在すると主張している。客観的に見れば、3.のケースに相当する。国際社会から、日本が竹島問題と尖閣問題でダブルスタンダード(二重基準)を用いていると認識され、日本の誠実さが疑われる危険が存在する。この危険を回避するための外交戦略を外務省が考えているとは思えない。
【佐藤優の眼光紙背】尖閣問題をめぐり国際世論を日本に引き寄せる外交戦略を政治主導で構築せよ


佐藤優くんにお訊きしますが、なんですか、日本がたとえば一方的に「カラフト」に領土問題が存在すると言い出したら、これは「領土問題は存在する」となるのでありますか?

え?そんなことないでしょう?

こういった問題を、「論理的」に思考しているかのように勘違いする、今回のこれは典型であります。

こんなこと、「ダブルスタンダード」でも、なんでもないのであります。

おそらく、佐藤優くんの「論理思考」には、時間概念が欠けているのでありましょうが、これを理解できるように、「乗っ取り」問題に例えてご説明するのであります。

自分が所有するビルが、暴力団によって「乗っ取り」されてしまっている(つまり既成事実である)のが、竹島問題。

自分が所有するビルが、暴力団によって「乗っ取り」されようとしている(つまり防衛事実である)のが、尖閣問題であります。

確かに両者、「乗っ取り」問題、すなわち領土問題があるかのように思えるのでありますが、まったくそうではない。

それは、前者はこの解決のために、裁判所に強制立ち退き命令を出してもらおうとして、訴訟を起こそうと言うことであり、これを「立ち退き」訴訟問題と呼ぶことにするとして、では後者は、と言うと、どうなるか。

そもそもにおいて、後者には「乗っ取り」と言う事実そのものが存在しないのであります。

もともとからして自分はこのビルに住んでいる。暴力団がかつて住んでいてこちらがこれを「乗っ取った」事実そのものもないのであります。

これに対して、暴力団が、自分のビルが乗っ取られているので「立ち退き」訴訟をもし起こそうとしても、もちろんこちら側からすれば「立ち退き」訴訟問題など「存在しない」と言うし、裁判所も暴力団の申し立てを受け付けることはありえないのであります。(訴訟に巻き込まれないようにするための訴訟問題は「存在しない」と言うこと)

では、暴力団が竹島ビルの訴訟を受ける立場から考えてみるとどうなるか。

竹島ビルは、もともと自分たちのものだから、「乗っ取り」でもなんでもない。当然訴訟となる問題も一切存在しないと主張する。しかし、いくら「乗っ取り」ではないと主張しても、「乗っ取った」と言う事実は存在するから、「立ち退き」訴訟問題など「存在しない」といくら主張したところで、「存在する」のであります。

すなわち、この竹島ビルの「存在しない」と、尖閣ビルの「存在しない」には、天と地ほどの開きがあるのであります。

先に、佐藤優くんには時間概念が欠けていると書いたのは、まさにこのことであります。

「領土」とは、未来永劫に「領土」ではないのであります。

時間軸上のどの時点で「領土」であるのか、これがきわめて重要なんであります。

これを無視して「領土問題」のあるなしを言っても、まったくもって「無意味」としか言いようがない。

そして、竹島も、尖閣も、時間軸上、日本が最も早く国際法上の「領土」とし、いまもって他国の「領土」として奪われた事実はないのであります。(敗戦処理の間を除いて)

この意味において、両者とも、「領土問題」は「存在しない」のであります。

一方において、竹島は、近い過去のある時点で「他国」に「占拠」されてしまった。

これを実力行使ではなく平和的に解決する方法を日本は選択してきたのでありますが、この事実でもって、竹島においては、他国による「占拠」問題が「存在する」となるのであります。

これがしかし、「他国」の立場からはまったく逆に見えると言う、おおいなる「勘違い」をするのが、佐藤優くんの陥った「論理思考」における「瑕疵」であります。

これを具体的に書くと、こうなるのであります。

■竹島問題
<日本>:<国際法上領土問題:存在しない><領土占拠問題:存在する>
<韓国>:<国際法上領土問題:存在しない><領土占拠問題:存在しない>

■尖閣問題
<日本>:<国際法上領土問題:存在しない><領土占拠問題:存在しない>
<中国台湾>:<国際法上領土問題:存在する><領土占拠問題:存在する>


これをご覧いただければ、竹島問題における日本の「立場」と、尖閣問題における中国台湾の「立場」は、まったくもって似て非なるものであることがお分かりいただけるのであります。

であるからして、これは「ダブルスタンダード」でもなんでもない。

つまりは、そう言うことであります。

ここで、竹島問題における韓国の「立場」と、尖閣問題における日本の「立場」が同じではないかと、変な言いがかりをつける方が現れないとも限らないので、少々これに補足しておくのであります。

この「立場」のうち、韓国の「領土占拠問題」が「存在しない」というのは「ウソ」であります。

事実として過去に占拠が行われて、これが自国の「領土」であるから「占拠」ではないと言っているだけで、過去に「占拠」していまもって「占拠」しつづけている「事実」に変わりはないのであります。

これに対して、尖閣は、日本が「占拠」を開始した「事実」はない、過去「領土」となったずっとその前からそこに住んでいたのであり、住み続けていたものであって、「占拠」などする必要すらなかったのであります。

いまこれを、中国台湾が「占拠」しようとしている。

竹島の「占拠」とあわせて、この厳然たる事実こそ、広く世界に知らしめていく、日本外交史上まれにみる絶好の「チャンス」がいま訪れようとしているのであります。 KAI

投稿者 kai : August 17, 2012 04:00 AM | トラックバック