March 04, 2012

金儲けのカラクリ(後編)

で、「リスクヘッジ」であります。

もしあなたが、リンゴ農家をやっていて、安定した経営を目指しているとするのであります。

この安定経営とは、この秋のリンゴを販売するときの価格の安定のことであります。これが春先の時点では、価格がどうなるかわからない。わからないから、これを最初から決めてしまうのが、この「リスクヘッジ」であります。

これを前回の方程式で書くと、こんなに簡単になるのであります。

G=((P)−V)Q+PQ(実際の利益は、現物の(F+VQ)がこれからマイナスされる)

前回の方程式の後にPQが追加されるのは、秋になって実際にリンゴを販売する分が加わるからであります。

■250円の価格で「売る」権利を100個買って、150円に値下がりした場合

(P)=(250円)
V=150円
P=150円
G=((P)−V)Q+PQ=((250円)−150円)×100個+150円×100個=25,000円

■250円の価格で「売る」権利を100個買って、400円に値上がりした場合

(P)=(250円)
V=450円
P=450円
G=((P)−V)Q+PQ=((250円)−450円)×100個+450円×100個=25,000円

この二つの場合をみて、おわかりでしょうか?

そうです、V=Pになるのですから、VQとPQは常に相殺されて、(P)、すなわち最初に決めた単価だけが常に残ることになるのであります。つまり、秋になって市場の価格に影響されることなく、予定した価格で販売できるわけであります。

この仕掛けは、材料などを安定的に仕入れる際にも、まったく同じように適用することができるのであります。

そして、今回最後のご説明は、「空売り」であります。

「空売り」を式で書くとこうなります。

(P−V)Q=G

え?

何が違うのかって?

そうです、同じであります。

値下がりが確実と予想される商品は、すべて「空売り」であります。なんで「空売り」って言うかと言えば、実際に売る現物の商品を持っていないからであります。持っていないにもかかわらず売ることができるのは、返済期限付きで現物を借りることができるからであります。

そうすると、どうなるか?

「空売り」の時の単価は、P。返済期限になって、返済するための現物を買う時の単価が、V。当然値下がりになっているので、P>Vとなって、P−Vはプラスになるのであります。つまり、利益を得ることができるのであります。

いかがでしょうか?簡単でしょう?

もちろん実際に行われている取引は、その種類も内容も多種多様それにもっともっと複雑で、それこそ生き馬の目を抜くと言われる取引のオンパレードでありますが、これは別に金融取引に限った話ではないことは、今更ご説明するまでもないことであります。

しかし、この基本がわかっているのといないのでは、大違いであります。例えば、こんな記事に出会って、これを読んでみた感想は、いかがでしょう?

 これに対抗するブリッジウォーターの策は、過小評価されている証券を買い、過大評価されている証券を空売りすることで、分散投資を大規模に展開することだ。たとえば、プラチナを買って銀を売る、あるいは30年物の英国債を買い10年物を売ると言った具合だ。そうすると分散投資の利益はたいてい市場の全般的な動向とは無関係な結果となるという。

 '11年の初め、米国債を悲観的に捉えていたブリッジウォーターは、空売りを進めた。債券市場が崩れ始めると、この賭け(その後、ブリッジウォーターは買いに転じているが)は大いに報われることになった。コモディティと新興成長市場の通貨への賭けも同様だった。'11年夏の時点では、多くのヘッジファンドが利益を出すために四苦八苦する中、ピュアアルファファンドは10%以上のリターンという好成績を出している。

 ダリオの成功の原因は何か?同僚のボブ・プリンスによれば、ダリオは「全体を俯瞰的にとらえる目を持ちながら、市場の機微にも通じている」トレーダー、ということになる。

 多くのエコノミストはインフレや失業率、マネーサプライといった統計を見て、それらの数字が自動車やテクノロジーなどの産業にとって何を意味するか考える。

 ダリオのやり方は逆だ。どんな市場でも目を付けたら、まず買い手と売り手を特定し、それらがどれほどの需要と供給を生むかを見積もる。そして彼の発見したことがすでに市場価格に反映されているかどうかをチェックする。反映されていなければ儲かる。米国債市場なら、ブリッジウォーターは毎週財務省のオークションを綿密に調査して誰が買っているのかを見る。アメリカの銀行か、外国の中央銀行か、はたまたライバルのヘッジファンドか。そして買っていないのは誰かも見る。コモディティ市場でも同じことをする。

「結局のところ、誰が買いそうで誰が売りそうか、そしてその理由は何か。儲けるために大切なのはその点に尽きるのです」

 そう成功のカギを断言したダリオは、今後の世界経済をどう読んでいるのか。そして世界最大のファンドがいま抱えている「問題」とは何なのか。
『ニューヨーカー』ジョン・カシディ記者のインサイドレポート 年俸30億ドル(2250億円) 世界最大のヘッジファンドを率いる男(レイ・ダリオ氏)の物語 上


ね?全然難しくないでしょう?

あたりまえのことを、あたりまえに書いてあるだけなんであります。

そうです、金儲けなんてものは、あたりまえのことを、あたりまえにやるだけなんであります。こんな超有名な世界的ファンドでさえ、こうなんであります。

ところが、これを当たり前にやらなかったから、巨額の資金消失となったのが、AIJ。

もう、何が問題だったのか、明白すぎるくらい明白でしょう?

中身を理解して「信頼」することに、何の問題もないのであります。

反対に、中身を理解しないまま「信頼」することは、これは「信頼」ではなく「妄信」と呼ぶのであります。 KAI

投稿者 kai : March 4, 2012 07:30 PM | トラックバック
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