世の中には、「ビジネス」なり、「商売」なり、「金儲け」と言うと、こういったものを「低く」見る人々が、少なからずいるのであります。
そもそも、みなさんが成人するまでに受ける教育環境からして、この「お金」の大切さを理解し、これを生徒に伝えることのできる教師は皆無であると、KAIは断言してもいいと思うのであります。その理由は、また別の機会にご説明するとして、(以下略)
(お金とはなんであるのか?−−お金との付き合い方)
もちろんこれは、なにも教職者に限った話ではない。
仙谷氏は、自らの指示に従わない人物がよほど嫌なのであろう。公開を迫る声に対して、10日、こう述べた。
「(メディア側に)中・長期的国益よりも、今、映像を流し(報道し)たいというビジネス的欲望がある」「それで(公開しない)われわれに批判的になる」
(【櫻井よしこ 菅首相に申す】公開こそ国益だった)
「ビジネス的欲望」。これほどビジネスの価値を貶めた言葉を、半世紀以上生きてきたKAIでも見たことがない。そして、心の底から激しい憤りを感じないわけにはいかないのであります。
(耐えられない品性)
そんな彼らの主張を、それみたことかと勢いづかせる事件となったのが、AIJ問題であります。
そもそもにおいて、「彼ら」は、なぜ「金儲け」と言うものを「低く」見るのか。今回の標題のテーマについて、まずこの問題から考察するのであります。
そして、いきなりその答えでありますが、人の意識には「内なるもの」と「外なるもの」があり、「理解できない」とか「よくわからないもの」なる存在が、この「内」と「外」のどちらにあるのか、これが問題となるのであります。すなわち、「よくわからないもの」が「外」にあるときは、人はこれを「低く」見るのであります。反対に、「内」にあるときは、この「よくわからないもの」を「理解を超えるもの」として、あたかも心の中で「神」のごとく奉るのであります。
この詳細なる理路のご説明は、また別の機会に譲るとしまして、今回のポイントは、この「金儲け」なるものが、「彼ら」にとってなんだか「よくわからないもの」であり、かつ「外なるもの」であると言うことにあるのであります。
要するに、「金儲け」の意味も仕組みも、「彼ら」はこれをよく理解できないが故に、これを「忌避」ないし「毀損」させると言う形でもって「外なるもの」とすることで、自分自身の「内なるもの」の安定を図ろうとするのであります。
では、なぜ「彼ら」は「金儲け」の意味や仕組みがよく理解できないのか。次なる問題は、これであります。
これをご説明するために、まず、「金儲け」の基本、ビジネスモデルの方程式なるものを、みなさんにはご理解いただく必要があるのであります。
PQ=VQ+F+G
(P:売上単価、Q:売上数量、V:変動費単価、PQ:売上、VQ:変動費、F:固定費、G:利益)
(「モデル指向はなぜ必要か」から一部抜粋)
「商売」と書きましたが、別にこれに限ったことではなく、例えばサラリーマンの給料もまた、まったく同じこの方程式の世界なのであります。
もしあなたがサラリーマンなら、あなたの給料は、例えば月40万円とすると、PQ=40万円と書くことができるのであります。単位をつけて書き直すと、P=40万円/人月、Q=1人月、PQ=40万円/人月×1人月=40万円、となるのであります。
さらに右辺はどうなっているのかと言えば、VQとは仕入れですから、当然ゼロ。Fは固定費ですが、PQすなわち給料をもらうために毎月固定でかかる費用は、これもまた当然ゼロ。つまり、PQ=G(利益)となるのであります。(家賃は固定費ではないのですかと言う質問がありましたが、給与すなわち売上とは何の関係もありません。例えば実家に帰れば家賃はかからなくなります)
つまり、サラリーマンと言う「商売」は、給料と言う「売上」がまるまるそのまま「利益」となる、まことにもって「おいしい商売」なんであります。
これが、まったく同じ構造の、人材派遣ビジネスとなるとどうなるのか。
例えばあなたが派遣会社を通じて、A社で仕事をしたとしましょう。
派遣会社にとって、売上は、A社から支払われるあなたの給料分ですから、あなたが月40万円もらうためには、これに経費や利益を上乗せしてA社に請求する必要があります。これを式にすると、こうなります。
PQ=60万円
VQ=40万円
F=10万円
G=10万円
60万円売り上げても、たった?10万円の利益にしかなりません。
サラリーマンであるあなたの、売上がすべて利益になるのと、随分違うと思いませんか?
実は、これこそが、教師や弁護士といった方々が、「金儲け」とはなんであるのか、感覚的に理解できない根本の原因となるのであります。
ご説明しましょう。
教師や弁護士といった「彼ら」は、ビジネスモデルの方程式の左辺、すなわち「売上」までは、まず理解できるのであります。
しかし、方程式の「右辺」が、まるで理解ができていないのであります。あるいは、理解しようとすら、しないのであります。
しかも「彼ら」に限らず、世の中のほとんどの人々も、この「右辺」が理解できていない。それは、ネットを含めたあらゆる売り場で、安ければ安いほどいい、あるいは、さらなる値引きすらを求める一般の消費者の心理の中に、これを垣間見ることができるのであります。
「彼ら」の常識からすれば、「売上」とは「利益」であります。経営者は、すべて、がめつく儲けている、としか思えない。
この結果、「彼ら」は、ビジネスとは、「左辺」である「売上」、すなわち「PQ」としか、とらえらることができなくなってしまったのであります。この「事実」を証言する重要な記事があるのであります。
中沢 インターネットはそうした「呪いの言葉」が匿名で飛び交う空間で、僕自身は積極的に入っていこうとは思わない。でも、グリーンアクティブにはネットを新しいメディアとして政治的に活用できる若者たちに、仲間に入ってもらっているんです。
「アラブの春」の例もありますが、膨大な日和見細胞を善玉に変えることができるのは、あのメディアではないでしょうか。
(中略)
中沢 商品の単価×数量、GDPで国民の幸せをはかる時代はとっくに終わっている。それに代わる幸福の座標軸こそ、贈与の精神だと思います。
(特別対談 中沢新一×内田樹 「橋下現象と原発これからの日本を読む」)
※(引用者注)前段の発言は、今回の文脈とは関係ないのですが、前回書きました「短絡的思考」を示す証拠となるものであります。
これが、そうではなく、なるほどね、仕入れに結構かかるよね。ワタミの社員の給与ももっとあげてね、なんてことに「彼ら」の考えが及び出したら、この問題は一挙に解決するのでありますが、残念ながらそうはならない。
ビジネスモデルの方程式の「右辺」とは、その「金儲け」の仕組みそのものであります。すなわち「ノウハウ」であります。簡単には、これは明かされることはないのであります。ですから、ますます教師となる人間がこれを「理解」するチャンスに恵まれないままになっていくのであります。自分が「理解」しないことを、人は人に教えることはできない。期待することなど所詮無理なお話と言うべきものであったのであります。
しかし、さきの例えばワタミについて、その強烈な安値競争と言う下がり続ける売上単価の中からその利益を絞り出すために、固定費や仕入れ価格を限界まで削る努力に思い至らないのは、これまたこれは、これらサービスを享受する国民の「大罪」と言っても、差し支えないとさえ、KAIは思うのであります。
いまのいま、私たちの生活と言うものを支えているのは、「彼ら」の忌避する「ビジネス」であり「経済」であります。この根本の仕組みを理解しないがための、「不幸」としか言いようがない。私たちは、もはやこれを、これ以上は放置しておくわけにはいかないのであります。
いまや大問題となっている、かのAIJ問題。
この問題も実は、この会社の顧客である「基金の運用担当者」が、この会社がやっていた「金儲け」の「カラクリ」を最初からよく理解さえしていれば、まったくもってこんな被害にあうことはなかったのであります。
と言うことで、前置きが長くなりましたが、本題であります。
こういった世界を、「金融取引」と呼ぶのでありますが、もちろんこの世界でも、先のビジネスモデルの方程式は、まったくなんの問題もなくそのまま生きているのであります。
PQ=VQ+F+G
(P:売上単価、Q:売上数量、V:変動費単価、PQ:売上、VQ:変動費、F:固定費、G:利益)
(「モデル指向はなぜ必要か」から一部抜粋)
PQ=VQ+G
(P−V)Q=G
なんと、「金融取引」とは、まことにもって実に簡単なカラクリだったのであります。
これをデリバティブとか、リスクヘッジ、スペキュレーション、アービトラージなどと言う言葉で、いかにもこれは「高尚」で「難解」なビジネスなんですよと見せかけることによって、顧客の期待値を最大限に引き上げようとする、「粉飾」と言われても言い訳できない世界なんであります。
とは言え、決して間違ったビジネスでもなんでもない、「市場」を「安定化」させると言う目的をもった真っ当なビジネスなんであります。
ただ、まだこの単純化した方程式では、具体的になにがなんだか全然理解できないよ、KAIさん、とのクレームも多数。
と言うことで、この方程式を具体的にご説明するのであります。
まず、PやVをご説明する前に、Qについてお話しするのであります。
これは、つまり単純に「数量」のことでありますが、具体的には、穀物(コメ・大豆など)、砂糖、石油、貴金属(金・銀・白金)といったものが分かりやすい。
これらは、毎日、世界中の国にある「市場」で取引されているのであります。ただここが一番のポイントとなるのでありますが、これらの「市場」で取引されているのは、その商品と言う「実物」ではなく、その商品の「権利」と言うものが取引されているのであります。
すなわち「権利」とは、具体的には、「実物」の商品をある未来の「期日」を指定して「買う」あるいは「売る」ことができると言う、そう言う「権利」のことであります。
そして、その「権利」のうち、「買う」権利を、Vと呼び、「売る」権利を、Pと呼ぶのであります。
さらに、「権利」でありますから、この「売る」権利と「買う」権利は必ずペアにして取引すると言う決まりごとを導入することによって、実際に商品の「実物」を持っていなくても取引できるようになっているのであります。(売りと買いをペアにすることで実物商品の数量の影響を受けなくなります)
これを具体的な例でご説明するとしましょう。
■商品の価格が将来値上がりすると予想する場合(250円の価格で「買う」権利を100個買って、400円に値上がりした場合)
(V)=(250円)・・・最初から価格が決まっている場合はカッコつきで書きます。
P=400円
そうすると、利益はこうなります。
(P−V)Q=(P−(V))Q=(400円−(250円))×100個=15,000円
■商品の価格が将来値下がりすると予想する場合(250円の価格で「売る」権利を100個買って、150円に値下がりした場合)
(P)=(250円)
V=150円
G=(P−V)Q=((P)−V)Q=((250円)−150円)×100個=10,000円
ほんと、簡単な仕組みでしょう?
単に、PとVの差額だけの問題だったのであります。
さて、この予測が外れた場合、どうなるかを見てみましょう。
■商品の価格が将来値上がりすると予想して外れた場合(250円の価格で「買う」権利を100個買って、150円に値下がり)
(V)=(250円)
P=150円
G=(P−V)Q=(P−(V))Q=(150円−(250円))×100個=マイナス10,000円
■商品の価格が将来値下がりすると予想して外れた場合(250円の価格で「売る」権利を100個買って、400円に値上がり)
(P)=(250円)
V=400円
G=(P−V)Q=((P)−V)Q=((250円)−400円)×100個=マイナス15,000円
すなわち、いずれの場合でも、予想が外れた場合は、差額がマイナスとなって損することになるのであります。
しかしであります。だからといって、この差額がマイナスになることは、ネガティブな話でもなんでもない、と言うのが、次なるお話、「リスクヘッジ」でありますが、えらい長くなってしまいましたので、続きは後半に。 KAI