September 10, 2009

選挙に負けては意味がない、試合は負けても意味がある

今回の選挙は、あくまで「政権交代」。マニフェストを選択していないのだから、国民が「白紙の委任状」を渡したのではないことを、民主党の人たちは、ぜひとも心してほしい。具体的な政策、一つ一つについて、ことあるごとに、日教組などではなく国民の声をきいて実行してほしい。さもないと、すぐ国民は見放します。

この選挙について、こんなことを書きました。

それにしても、結果はどうあれ、ながらく霞がかかってもやもやしていた霞ヶ関と永田町。一気に霞が晴れた。これが選挙の効用ってもんです。何事にも、勝ち負けは必要ってこと。

週末テニスも、一緒。KAIの週末テニスは、ご承知のようにゲームのみ。試合をやって勝ち負けをつけるから、自分の弱点も分かる。それを克服して、ゲームに勝つための戦略も立てられる。テニススクールも、それはそれで経営上仕方ないんだけれど、練習ばかりやっていてもテニスは上達しない。
選挙と週末テニス

この「試合」について、ウチダ先生、こんなことを書いています。

一年近くかかった本をようやく仕上げたので、気分がだいぶ楽になったので、杖道の稽古に大学まででかける。
暑い中、4人部員たちが来ている。
体育館で形稽古。みんなずいぶん上達した。
全剣連に加盟して審査を受ければ、それなりの段位が得られるのだろうが、加盟すると「試合」というものに出場しなければならない。それが厭なのである。
私は競争的環境に置けば人間の心身の能力が高まるということをあまり信じていない。
もちろん一時的には高まる。劇薬的な効果がある。
でなければ、これほど「試合」が繁昌するはずはない。
けれどもそれはあくまで「劇薬」である。
生きる知恵と力を高めるということを目的とするなら、「劇薬」を投与して、一時的にパフォーマンスを向上させるということは避けた方がいい。
たいていの場合、劇的効果をもたらすあらゆる薬物がそうであるように、その「支払い」のための長期的な苦痛は、効果がもたらした一時的な快楽上回るのである。
私に同意してくれる人はきわめて少数であろうが。
ふた仕事終わる


ここで取り上げられている「試合」は、全剣連と言う公式の「試合」。KAIもまた、公式のトーナメントに出なくなって、30年。この理由は、昔書いた通り(週末テニスに学ぶ勝負心得)、公式の「試合」に出て、勝負に勝つためには、我慢のテニスを強いられるから。

ウチダ先生が言う、公式「試合」が「劇薬」であるかの当否は別にして、公式「試合」と言う「勝つこと」を目的とする「試合」は、「試合」を職業とする人以外には、その効果よりも弊害の方が大きいと、KAIも思う。

ならば、高校野球も、高校サッカーも、弊害ばかりじゃないのかと言えば、さにあらず。優勝チーム以外は必ず負ける。人は、勝つことよりも負けることの方が、それから学ぶことははるかに大きい。

学校の勉強だけではメシは食えない!(こう書房、岡野雅行、2007/11/10)

 失敗することは悪いことじゃないんだ。全部経験として見れば、かけがえのない貴重なことなんだから。だけど、ひとつだけ注意がある。それは、失敗して騙されて、世の中に流されないことだ。最初自分が決めた道を突き進むんだ。そうすればその先に、成功が見えてくるだろう。(p.213)


立秋になぜ人は本を読むのか(2)

岡野の言う通り。会社も人生も、まったく同じ。何度も何度も小さな失敗(負け)を積み重ねて、成功(勝ち)に至る。それが、最初から真剣で果し合いなんかしたら、それこそ切り殺されて一巻の終わり。そんな果たし合いに生き残って行くうちに、身も心もカブトムシの雄のような、戦うためだけの鎧をまとう、そんな姿に固定化されてしまう。

そもそも「人間の心身の能力」とか「生きる知恵と力」なんてものは、カブトムシのように「試合」の対戦相手に勝つことの中にあるのではなく、自分自身であり自分自身の中にある大きな気の流れの中にしかそれを高める道はないのです。

しかしそうは言っても、自分自身の中で戦うことはとても難しい。その意味で、負けることのできる公式でない「試合」こそ、思い切り相手の中に自分自身を投影してシミュレーションができる。まさに実戦ではない「試合」、「ゲーム」の効用と言えます。

そして、このシミュレーション。決して相手の裏をかくといった駆け引きではなく、相手の弱点をつくことがすなわち自分自身の弱点の克服に繋がる。相手が勝ち、自分が負ける。それは相手が自分の弱点の克服方法を教えてくれている。そう考えれば、KAIにとって「試合」とは「生きる知恵と力」を与えてくれる宝の山。なんともすばらしいお話ではありませんか。 KAI

投稿者 kai : September 10, 2009 08:49 PM | トラックバック
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