夕方母親から電話がかかってきた。用件だけ話して電話を切った後、はたと気づいた。今日は母親の誕生日ではありませんか。あわてて架けなおして、傘寿のお祝いを言う。言葉だけのお祝いはいつものことと諦められているけれど、今年はとうとう八十の大台。なんとも不思議な感覚に襲われる。
そういえばと言うことはリキの誕生日でもある。生きていれば八歳。八十歳と八歳・・・。
この悠久の時間と空間のゲームSPOREをひっさげて、ウィル・ライトが、やっと還ってきた。ウィル・ライトの新作ゲームと題して彼のことを取り上げたのが、2005年3月15日。もう3年と半年が、たった。
Wright氏は、米国時間9月7日(日本では9月5日)に発売が予定され、高い期待を集めているEAのシミュレーションゲーム「SPORE」の世界的なプロモーションツアーの一貫で、初めてシンガポールを訪れた。(ウィル・ライト氏、「SPORE」「The Sims」、科学を語る)
ゲームのコンセプトを考える際、何を参考にするのですか。例えばThe Simsでは、J. R. R. Tolkien氏が「指輪物語」で新しい言語を作り出したように、独自の言語が使われています。
たいていの場合、アイデアを生み出し、ゲームを作っていく中でコンセプトはダイナミックに生まれてきます。基本的には、丸い穴に四角いくいを打ち込むような作業です。通常は、ゲームデザインの制約を克服する作業が大半を占めます。例えばThe Simsでは、着替えをさせる方法がいつも問題になっていました。ドレッサーを開け、服をかけるといった作業をさせるのは面倒です。結局、この問題はユーモアの力で解決することにしました。現在、The Simsのキャラクターは、空中に飛び上がり、回転して服を着替えるようになっています。
ゲームデザイン上の問題であったものがThe Simsの特徴の1つになりました。そして、キャラクターが飛び上がり、回転して着替えるというシステムは、いまやゲームの広告にも掲載されているほどで、The Simsシリーズの世界観に完全に溶け込んでいます。
シムの赤ちゃんが生まれる際、花が舞うというのも・・・
わたしたちは、当初はゲームデザイン上の制約であったものを、ユーモアによってゲームの世界観を象徴する特徴に変えてしまうのです。それによって、ユーザーは自分がその世界にいることを実感します。ある意味これは、相手の力を利用してそれを自分の力に変える合気道に通じるものがあります。
(ウィル・ライト氏、「SPORE」「The Sims」、科学を語る Page 4/4)
この合気道に通じると言うのは、なかなか興味深い話です。
そもそもこういったゲームと言うものの、本質をあらわす言葉に、ターンと言う用語があります。ターンとは、簡単に言ってしまえば、プレイヤーとゲームとの間の相互作用、すなわち引力です。
合気道が、この引力を利用する技であることを考えると、みごとに道理にかなった話です。この世界の探求は、まだまだ続きます。KAIの傘寿まで。 KAI