March 12, 2008

ダイレクトマーケティング考(再録)

日時: Tue, 25 Feb 2003 06:18:52 +0900
件名: ダイレクトマーケティング考
差出人: kai@open.jp


最近、おかげさまでJADMA加盟会員企業の担当者様とお話をする機会が増えています。

このJADMAとは通信販売企業の団体ですが、「JADMA」(*1)の中の綴りの「DM」がダイレクトマーケティングを意味していると言うことをご存知の方は意外と少ないのではないでしょうか。
(*1)Japan Direct Marketing Associationの略

今、ダイレクトマーケティングという言葉、販売方法、経営そのものが着目されています。

今回は、ダイレクトマーケティングという概念を、筆者が考えるダイレクトマーケティングの原点である「富山の薬売り」の商法を通じて、Q&A形式で明確にしていきたいと思います。

■Q 今やネット通販上で勝ち組み、負け組みがはっきりしてきましたが、どういった理由で差がつくのでしょうか。

■A ネットでの商品の販売はいわゆる通信販売の一種ですが、多くのモール出店企業は、この通信販売という販売方法のノウハウを持たないまま単にお店を開いているだけで売上を伸ばせないでいるのが実態です。古くからカタログ通販を手がけて来た企業でさえ、インターネット通販については試行錯誤を繰り返している段階というところが少なくありません。

その中にあって図抜けた売上を伸ばしている企業(いわゆる勝ち組み)もあって、その差がどこから来るのか、これを解き明かす鍵となるのが「ダイレクトマーケティング」という考え方です。

ダイレクトマーケティングという用語は、通信販売とほとんど同じ意味で使用されていますが、訪問販売や店頭販売でも顧客を識別しながら販売する手法はすべてこれに含まれます。

この考え方の歴史は古く、米国では1800年代の後半に既にカタログ販売がスタートしています。日本では更に歴史が古く、江戸元禄時代(1600年代後半)に始まったと言われる越中富山の薬売りがダイレクトマーケティングの草分け的存在です。

■Q もう少しダイレクトマーケティングについて説明して下さい。

■A 筆者は、ダイレクトマーケティングの定義として次の3条件が必要だと考えています。

・顧客を識別して販売する
・媒体を利用して販売する
・DB(データベース)を利用して販売する


これらを富山の薬売りを例に説明しましょう。

●顧客を識別して販売する
まず顧客の識別について、富山の薬売りは行商人と同じように地方を転々としますが、訪れた先の見知らぬ人に薬を販売するのではなく置き薬という手法を取ります。

これは「先用後利」(せんようこうり)と呼ばれる仕掛けで、無料で薬を配っておいて使った分だけ後から代金を頂くということです。当然顧客との間に信頼関係がなければ成立しない取引方法です。

●媒体を利用して販売する
2番目の媒体を利用するという話ですが、富山の薬売りと言うダイレクトマーケティングの媒体は販売員である「売薬さん」と言われる人そのものです。これは通信販売と言うより訪問販売の一種と言えますが、現在のダイレクトマーケティングによる売上の内この訪問販売による売上が実に85%(*2)を占めているのです。

(*2)旧通産省「商業統計調査」平成9年度店頭自販機以外小売額17.9兆円(訪問15.3兆円+通信・カタログ2.7兆円)

売薬さんが手土産で持参する紙風船は富山の薬売りの代名詞にもなるくらい有名ですが、この紙風船を持って大風呂敷で包んだ柳行李を担ぐ売薬さんの姿を記憶されている方も筆者の年代では多いのではないかと思います。

●DB(データベース)を利用して販売する
富山の薬売りのデータベースと言えば「懸場帳」(かけばちょう)です。これは単なる顧客名簿ではなく、今までに配置し消費した薬の内訳が、家族構成、家族の健康状態とともに時系列に詳細に記録されたデータベースとなっているのです。

この懸場帳を使用することにより、顧客毎に効果的な配置薬を選択し売上を極大化し、「古薬」(こやく)と呼ばれる配置期限切れを減らすことで損失を少なくすることが可能になります。

更に、全体の売上を集計し、今期の販売予測まですべてこれでまかなうことができるようになります。

■Q このダイレクトマーケティングのどこが、成功の鍵(勝ち組み)となるのでしょうか?

■A ダイレクトマーケティング・ビジネスを成功に導く要諦はただ一つ「リピートの獲得」です。

どんなビジネスでも新規客しか相手にしなければやがて客はいなくなります。既存客に、食品などのリピートがきく商品を定期的に販売したり雑貨など興味を引く商品を次々提示してリピートを獲得していくことにより、この顧客から得られる利益を最大化させていく活動こそダイレクトマーケティング・ビジネスそのものと言えます。

富山の薬売りの例で言えば、置き薬というのはすべての家庭に同じ薬が配置されているわけではありません。売薬さんたちはその時の家族構成や健康状態をみながら顧客毎の配薬を行っていきます。この結果家族の一人が薬を必要とする時に必要な薬が必ず備わっていることになり、この積み重ねで何年もの間にたった一つの置き薬箱から膨大な利益が産み出されることになります。

■Q 具体的には何を実践していけばうまくいくのでしょうか?

■A 現在行っているインターネット通販が、先に挙げたダイレクトマーケティングの三つの条件を満たしているかチェックしてみて下さい。もし欠けているものがあればその欠けている条件を満たす仕掛けを導入して、本来の目的である「リピートの獲得」に集中することです。

具体的には、
(1)顧客を識別する仕掛けになっているか?
(2)媒体を利用しているか?
(3)データベースを利用しているか?
この3点をチェックして見て下さい。

■Q 1番目の顧客を識別する仕掛けとは何ですか?

■A リピート客がホームページに立ち寄ったときに自分の名前を名乗ることによりポイントが付いたり割引が利くなどの仕掛けになっているかと言うことです。特にポイント制の導入は、単純な割引制よりリピート注文の獲得に絶大な効果があります。

顧客に対して、「特別扱い」をしているんだというメッセージをダイレクトに伝える方法が、このポイント制であり、顧客のランクに応じたポイント率とポイント期限の設定の中にリピート獲得のノウハウがあります。

■Q 2番目の媒体を利用しているかどうかですが、インターネット自体媒体ということではありませんか?

■A 確かにインターネット自体が媒体ですがこの場合eメールを利用しているかということです。しかも手入力ではないeメール、つまり注文メールの自動受信やお届け日とお届け伝票の番号をお知らせするサンキューメールの自動送信等です。

受注時にお支払方法を確認するメール、出荷時に出荷日とお届け予定日、お届け運送会社、お届け伝票番号、この伝票番号から配達状況などを照会できる運送会社のURLなどをお知らせするメール、更には出荷から2週間後に送るアフターフォローメール等、すべて自動化しないといけません。

初期の頃は、扱う量も少なくこれらを人間の手で処理できるためついつい手作業でもやっていけると考えがちです。しかも手でできるので、ある意味で何でもありです。ところが、いずれは手作業では対応できなくなると言うことは誰が考えても自明です。

その時に、機械で処理していても1件1件手で処理していると思わせる仕掛けが必要だと気づかないと、何万件と言うリピート獲得は夢のまた夢となります。

■Q 3番目のデータベースの利用ですが、お客様の購入商品の履歴はコンピュータに保存するようにしているのですが?

■A データベースの利用とコンピュータ化は必ずしも一致しません。富山の薬売りのデータベースである懸場帳は、昔は紙縒りで綴じられた紙媒体でした。

それでも見事なまでのデータベースの利用が可能であったと言う事実を、今のコンピュータ化に取り組む技術者は、真摯に受け止めるべきです。

リピート獲得という一点に絞った分析が必要であって、分析のための分析など金ばっかりかかって何の役にも立たないということを、そろそろ理解する必要があります。

これらの説明をすると、すぐeCRMソフトだとか高価なものを想像してしまいがちですが、逆にうまくいくまでできるだけお金をかけないということが重要です。インターネットの初期に何千万と言うお金をかけて物々しくスタートしたECサイトがことごとく失敗している事実を見れば明らかです。

ダイレクトマーケティングの金言に「小さく産んで大きく育てよ」というのがありますが、正にこの言葉通りです。

■Q 「小さく産んで大きく育てよ」の言葉の意味を説明してください。

■A 言葉どおりお金をかけないということですが、それだけではありません。

ダイレクトマーケティングという販売方法は「数学による販売方法」と言っても過言ではありません。

まず最初に、仮説ありき、です。

この仮説に基づき、様々な陳列商品の選定、この商品毎の陳列方法、仕入れ方法、プロモーション方法、を決定し結果を出します。思った結果が出なければその日の内に仮説を訂正して次の手を打ちます。生のテレビ通販では、これをCTI機能を使ってリアルタイムにやることさえあります。

仮説通りうまく廻りだしたところで、どんどん規模を拡大させていくと言うのが「小さく産んで大きく育てる」という意味です。

■Q ダイレクトマーケティングの将来性について教えて下さい。

■A インターネット通販だけでなく日常の販売方法の大半がダイレクトマーケティング化していくのは必定です。

例えば現在はコンビニでの販売はダイレクトマーケティングではありませんが、近い将来、コンビニに買い物に来る多くの客がポイントカードと呼ぶICカードを携帯するようになり、コンビニでは、誰の誰べえが何月何日にどの商品をいくつ買ったかという事実を把握できるようになります。

従来の元データが既にセグメント化されたデータと違って、元データから個を識別できるようになります。

そうすると何が実現できるようになるかと言うと、従来はセグメントから消費傾向を抽出すると言う、いわゆる統計解析で言うところの因子分析あるいは数量化分析から、個体ごとの傾向を分析して類型化するという真の意味のクラスタリングが可能になると言うことです。

この結果、消費者1人1人のレベルで消費傾向が手に取るように見えて来ます。

まさに「懸場帳」によるきわめて確度の高い需要予測が、「一般消費者」に対しても予測可能になると言うマーケティング担当者にとって夢のような世界が実現するかもしれません。

以上、結論部分はかなり筆者の思い入れの入った内容になってしまいましたが得てして世の中は理論通りにはならないということも、真実ではないかと思います。

投稿者 kai : March 12, 2008 01:42 PM | トラックバック
コメント

I don't know who you wrote this for but you helped a btroher out.

Posted by: Philly : March 26, 2012 03:06 PM

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Posted by: rlylhfpc : March 27, 2012 08:06 AM

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Posted by: ujdypj : March 27, 2012 12:54 PM

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Posted by: mhieqgwe : March 28, 2012 02:16 PM

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Posted by: pzmskmid : March 28, 2012 06:25 PM

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Posted by: soklmb : September 4, 2012 06:17 PM
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