フォーサイト誌3月号、シリコンバレーからの手紙が、また面白い。
このコラムの筆者である梅田望夫とRubyの開発者松本行弘が対談した話です。松本が、Rubyを始めとしたオープンソースプロジェクトが成立する本質を言い当てて、これに梅田が目から何枚も鱗を落としながら、こう書きます。
なるほどリーダー(引用者注:松本行弘)はそうなのかもしれない。リーダーは達成目標を持ち、その実現に向けての強い意志を有するからだ。
「でもその周囲に集まってきて、プロジェクトに貢献する人々の動機はいったい何か」
私はまつもとに問うた。まつもとからは、私が一度も考えたことのない答えが返ってきた。
「ほとんどの人は、適切な大きさと複雑さを持ったいい問題を探しているんですよ」
(中略)
「新聞にクロスワードパズルが載っているでしょう。あれですよ。見つけると解きたくなる人がいる」
(新潮社、フォーサイト、シリコンバレーからの手紙、梅田望夫、2008/2/16、p.50)
それは次々とアプリケーションのユーザーから提示される『適切な大きさと複雑さを持ったいい問題』を解くことに私たちが没頭しているうちに今に至るからであり、既存の問題の解がそのまま『適切な大きさと複雑さを持ったいい問題』へと自己組織化するからです。
この再帰性を持った機能の追加を行わない限り、アプリケーションは必ず肥大化します。
開発当初は、この仕掛けをパッケージ開発の中で実現しようとしましたが、はっきりいってまったくうまくいきませんでした。私たちのこの「思い」は空回りするばかりで、「半製品」とまで揶揄されたこともありました。
この状況が、ブラウザのみで利用できる製品を開発して、ASPサービスに切り替えた瞬間から、一気に好転します。
今では次々と舞い込むユーザーが提示する問題と、その解決と言う好循環が成立し、この中で次々と起こる外的環境の変化に、まるで生き物の免疫機構のように、自らの組織の中にその変化を取り込む仕掛け仕組みを自然に組み込むことが可能になっているのです。
KAIが30年以上前に、ソフトウェア開発の世界で夢想したことが、今やっと実現しつつあります。 KAI