不思議なロジックである。
「厳しいご批判を頂いたので、このまま職責を全うすることで負託された使命を果たしたい」という、企業不祥事を起こした会社の経営者が「最初の記者会見」で必ず口にする台詞を首相も繰り返した。
不思議なロジックである。
「不思議」というのは「不合理」ということとは違う。
仕事に失敗したときに、その場から逃げ出さす、踏みとどまって批判の十字砲火の下で引き続き仕事をするという選択は「あり」である。
(鼓腹撃壌のしあわせ)
一体全体安倍さんはなんの「仕事に失敗した」と言うのでしょうか、え?ウチダ先生。
議席を取るのが仕事なら、野党はいままで仕事に失敗し続けていていますが、誰もそんなこと言いません。
そもそも選挙に勝つことが首相の仕事ではないことは明らかで、首相の本来の「仕事」に失敗した結果を批判されて選挙に負けたのであれば、これは確かに「仕事に失敗した」と言われても致し方ありません。
しかし今回選挙民の琴線に触れる数々の問題があったにせよ、首相本来の「仕事」に失敗すること、すなわち失政がありかつこれが批判されているかと言えば、こちらの話は皆無であるわけです。
にもかかわらず「仕事に失敗した」とおっしゃる。
思えばこのレトリック、KAIが社会人になって、反吐が出るくらい一番忌み嫌う連中が常用し続けてきたレトリックです。
「KAIくんはよく仕事をやっているよ。しかしこうして批判があるのも事実だよ。これに耳を傾けるのも大人の仕事ってもんだよ」
「いったい何を言いたいんですか」
「まあよく考えてみたまえ。きみにはいくらでもやってもらいたい仕事があるんだよ」
「つまり辞めろとおっしゃるのですか」
「そうは言ってないが、きみのやり方が批判されているのも事実だよ」
「批判の内容はまったく事実に反することばかりですがそれはどうでもいいのですね」
「KAIくん、上に立つものはもっと謙虚にならんといかんよ」
「・・・」
こんな会社には絶対にしないと決意して20年間。しかし日本の社会にはしつこくこれが根付いている。KAIは結局この会社を辞めて、自分たちの会社をつくりましたが、安倍さんにここで辞めてもらうわけにはいきません。
20年前の自分に重ね合わせて思わず胃が痛くなってくるKAIであります。 KAI