まさにジョブズのiPhone。インターフェイスを追求し続けてきたジョブズにしかできない仕事です。
「従来製品のユーザーインターフェースについて話をしよう。従来製品が抱えていた問題といえば、ボタンだ。配置も本当にこれでいいのか分からないし、コントロールボタンは決まってプラスチック製だ。本当は個々のアプリケーションにあわせてボタンのセットを用意する必要があるのではないか」
「ボタンなどの設定を変えられなければ、機能もうまく使いこなせない。こう思い悩んだ」
「われわれはこの手の問題を解決した実績がある。20年前、われわれはコンピュータの世界でこれを解決した。ビットマップのスクリーン、そしてポインティングデバイス。この問題を解決したのはマウスだった」
「では、携帯端末の場合どうするか。まず、これらすべてのボタンは必要ないと考えた。その代わりに大きなスクリーンを用意しよう。スタイラスペン?そんなものは使いたくない。採用は見送ろう」
「われわれのスタートポイントになったポインティングデバイスに立ち返ろう。そこで誕生したのが『マルチタッチ』という技術。スタイラスペンも要らないし、これまでのどのポインティングデバイスよりも正確。そう、この技術で特許も取得済みだ!」
(Macworld開幕--S・ジョブズがついに「iPhone」「Apple TV」を披露)
iPodがソニーのウォークマンを駆逐し、楽曲ダウンロードビジネスを劇的に変えたと同じように、このiPhoneは既存のケータイマシンを駆逐し、キャリアのケータイビジネスモデルを撃破することになるのでしょうか。こんな疑問に答えてくれるBlogのエントリーに出会いました。
まとめるとすれば、僕の今のところの見立てでは、AppleのiPhone事業の発展可能性としては、iPodのような爆発的な普及と成功を収めるのではなく、Macintoshと同じようなイノベーター層にのみ受け入れられるデバイスに留まる可能性が高いのではないかと考えている。もちろん、こうした僕の見立てを大きく裏切られるような事業展開をAppleがやってくれることを期待してやまないわけであるが。
(『インターフェースのイノベーションはキャズムを乗り越えられるか:Apple iPhone』)
確かにiPhoneと言う製品単体ではこの通りだと思いますが、マウスインターフェイスの普及の歴史に重ねれば、iPhoneモードとでも名付けたいマルチタッチインターフェイスは恐らく爆発的にケータイビジネスに普及していくと、KAIは直感しています。
従来のケータイの、ボタンインターフェイスの代表がiモードです。このiモードによってインターネットへのアクセス自体は可能になりましたが、このiモードはMS-DOS時代と同じCUI(キャラクターインターフェイス)と何ら変わりありません。そのため時代は目一杯GUI(グラフィックスインターフェイス)であるにもかかわらず、CUIであるケータイアプリと言う特殊領域を生み出してきたのです。
こんな状況で、iPhoneモードの誕生です。ケータイアプリは劇的に変わります。いえ変わらざるを得ません。
しかもこれはスマートフォンに限った話ではありません。普通のケータイのインターフェイスに、このiPhoneモードが追加されていきます。しかしそれは、やがてiPhoneそのものと同じようにボタン自体を放逐し、iPhoneモードのみになっていきます。もちろん入力画面はQWERTYモードと親指モードの両方が選択できるようになっています。
つまりもはやiモードではなく通常のパソコンと同じインターフェイスが実現するのです。ただ単に多少インチの小さいパネルと言う違いだけです。この結果アプリケーションが共通化されていくと言う流れは、昨年夏のエントリーパソコンの未来の中に書いたとおりです。
もし本当にそうなれば、キャリアの大半の今のビジネスモデルは間違いなく破綻します。
唯一ここで生き残るのは、通信はグレードに応じた定額制、コンテンツダウンロード単位の従量制、この二つをバインドして提供できるキャリアのみです。
もちろんこの流れに理をたて消費者になきに訴えiモードの延命をはかるキャリアが大半であると、思います。しかしひとたび得たインターフェイスの進化と言う果実にあらがうことがもはや不可能であるのは、人がやすきに流れるものである真理に照らしてみれば、火を見るより明らかです。
これは、もし2008年ソフトバンクが堰切ったとして、意外に早い2011年には結果がでていると思われます。もしこのソフトバンクが、純正のiPhoneでなくてもiPhoneモードのインターフェイスのケータイのラインアップとそれをバックアップするサービスを提供できれば、結果は同じ流れになります。
GUIのインターフェイスを誰が提供しようが、ユーザーには関係ありません。しかしジョブズの、このまた新たな偉業に世の中がおおきくうねりを上げて旋回していくのは、間違いないと思います。 KAI