September 27, 2006

それを解決するにはソフトウェアのサービス化しかない

なかなか示唆深い記事です。日経BP社の経営とIT新潮流2006に、JTB情報システム社長の佐藤正史氏が書いている「経営者がITを理解できない本当の理由」と言う文章です。

この中で佐藤氏は、

 極めて重要な経営ツールであるITや情報システムについて、経営トップの理解を妨げている真因は何でしょうか。結論を先に書きますと、それはIT投資の費用対効果の不確実性です。その不確実性の原因は、ユーザー企業とITベンダーの役割分担問題にあります。本稿では、役割分担の問題を指摘した後、「新たなIT時代に向けて、我々ユーザー企業とITベンダーの関係はどうあるべきなのか」ということを考えてみたいと思います。

と、経営者がITを理解できない理由、と言うよりITへの不信感が、IT投資の費用対効果未達にあり、その原因はユーザー企業とITベンダーの役割分担問題にあるとして、これを説明しています。この役割分担問題とは、IT業界のプロフェッショナリズムの欠如による、IT業界が本来負うべきIT構築責任をユーザー企業へ転嫁してしまっていることだと言うのです。

しかし、一方でユーザー企業側もそのユーザーとしての責任を十分に果たしていないと、ITベンダーが提案するソリューション・パッケージへの、ユーザー企業の取り組む姿勢を自己批判してこう述べています。

 そういうことばかりやっているから、経営にとってやはりITは解りづらい。「データベースをたくさん作ったが、営業収益が上がっていないじゃないか」と経営者は問うて来るわけです。

 ユーザー企業である我々がいくつかの痛い経験を通して学んだことは、「ソリューションはITベンダーから与えられるものではなく、パッケージやツール製品から得られるものでもない」ということでしょう。一企業にとってのソリューションは、各論に入れば入るほど、企業競争領域のビジネス領域に近ければ近いほど、他企業のソリューションと共通である確率が少なくなります。

 また、IT関連の基本技術は、“個別最適の究極化”を基本的な性質として持つものであります。このため、差異化を競争戦略とする事業領域のソリューションのケースでは、この基本的性質を十二分に認識したうえで自社のIT適用を決定すべきものであります。

 したがってITソリューションはユーザー企業自らが、詳細に、克明に、実現可能な形で描ききることによってのみ、実現できるものです。ITはその目指すべきソリューション・ツールの選択肢にすぎません。失われた10年の間に、我々ユーザー企業は、自ら果たすべき本来の役割の多くを、ITベンダーとパッケージ・ソフトに過度に依存してしまったのではないかと考えています。

 「ITベンダー側の宣伝に乗せられてしまって」という言い訳ではなく、我々ユーザー企業自身が猛省し、企業にとって真に価値ある情報システムの実現を通して、経営トップの理解を獲得していかなければなりません。

これはKAIに言わせれば、人間オブジェクトとソフトウェアオブジェクトとのインピーダンスミスマッチ問題以外の何者でもありません。

企業活動においてそのビジネスの価値(利益)を生み出すのは、あくまで人間オブジェクトであってソフトウェアオブジェクトではありません。この人間オブジェクトのインピーダンスに、ソフトウェアオブジェクトのインピーダンスを合わせるか、ソフトウェアオブジェクトのそれに人間オブジェクトのそれを合わせるか。もちろんソフトウェアオブジェクトを一から作り直さない限り後者以外の方法はありません。

これがカスタマイズで(前者の選択が)可能だと考えているのが、IT業界も、ユーザー企業もであるわけです。そしてその結果が、現在のITユーザーをも巻き込んだIT業界の、品質問題と言う混迷なのです。

これを解決する方法が、今までと同じように巨費を投じて何もかも一から作り直すか、それとも別の方法があるのか真剣にユーザー企業もIT業界も、考える必要があります。 KAI

投稿者 kai : September 27, 2006 08:24 PM | トラックバック
コメント

はじめまして。
いつもブログを拝見させていただいていますが,非常に有意義な考察が多く,参考にさせてもらっています。

>企業活動においてそのビジネスの価値(利益)を生み出すのは、あくまで人間オブジェクトであってソフトウェアオブジェクトではありません。

この考え方について私も同意します。

しかし,もしその考えが真であるとしたとき,

>この人間オブジェクトのインピーダンスに、ソフトウェアオブジェクトのインピーダンスを合わせるか、ソフトウェアオブジェクトのそれに人間オブジェクトのそれを合わせるか。

の後者に関しては本末転倒ではありませんか?
「インピーダンス」というレトリックを曲解しているかもしれませんが。

Posted by: との : September 28, 2006 06:13 PM

とのさん、コメントありがとうございます。
確かにややこしい書き方ですが、人間コンポーネント(HCP)のインピーダンスが価値を生み出すわけではありませんので、結果的にどちらに合わせてもかまいません。
価値を生み出す人間コンポーネントは、最初はソフトウェアコンポーネント(SCP)を意識せずに構成されます。本来あとから導入されるSCPによってHCPを組み直す必要があるのですが、この必要性をほとんどのユーザー企業は理解できていません。
あくまで人間が主役でいたいんだと思います^^;

Posted by: KAI : September 29, 2006 08:32 AM
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