こんな言葉があるかわからないけれど、とりあえずASPサービスを利用する能力を「ASPサービサビリティ」と、今後呼ぶことにします。ガバーナビリティがガバーナブル(被統治)な能力であるのと同じ意味合いです。
以前ITProかどこかで、エンタープライズで使用するアプリケーションの多くはASPサービスになじまないと言う企業のCIOの意見と、その理由がいちいちネットに接続する手間にあることを述べた記事を見かけた記憶があります。つまり例えばEXCELを使うのにいちいちネットに繋ぐより、クライアントインストールのそれを使うほうが格段に使いやすい、すなわちアプリケーション側にASPサービスの向き不向きの原因があると言う訳です。
これに対して冒頭のASPサービサビリティの考え方は、ASPサービスを利用するかしないかの原因は、アプリケーション側ではなくユーザー側の「ある種」の能力に依存すると言うスタンスです。
この二つの考え方の違いの本質が、実は自己組織化アプリケーション問題にあるのですが、今回はこれには触れません。
考えてみたいのは、このASPサービサビリティと言う「ある種」の能力についてです。
その前になんでこんなことを考えているのか白状すると、実は私たちのASPサービスと競合するカスタマイズ前提のパッケージベンダーが、私たちに対抗するために今やレガシー同然のシステムをフルカスタマイズすると言う甘言の上に価格を私たちの初期費用より安くする、ダンピングの愚挙に出る事例がこのところ相次いでいます。そもそもこんな戯言につられるようなユーザーはとっとと相手にしないでいいのですが、一方で真摯に私たちのサービスの意味を理解して入会していただくユーザーがいる。この方々は今までほとんどの人が恐らく誰もエンタープライズのアプリケーションを“こちら側”ではない“あちら側”で使用した経験がないはずです。
もちろん“あちら側”で仕事をするメリットを十分理解していただいての上でですが、これ以上に「何か」あると、このところ感じて、そして思いついたのがこの「ASPサービサビリティ」です。
“あちら側”で仕事をした経験のない人が、これをイメージすることは、いままで筆者が見聞きした範囲では、相当困難な作業に思われます。にもかかわらずこれをイメージして、企業の命運を握る基幹システムを、ASPサービスに乗り換える。これは並大抵の決断ではありません。
しかしそれでも決断できる能力こそ、ASPサービサビリティと言う能力である訳です。
この決断の結果、アプリケーションがモノからサービスへと進化をとげ、孤立した環境からオープンな環境へと企業のアプリケーション環境が一変します。しかしこれは、実際に決断した後、システムが動き出して初めて、実感してやっとわかることです。
つまり誰でも既にある経験には、何の能力を伴うことなく、また同じ経験をすることに躊躇はありません。これが初めての経験となれば話は別です。
未知なる領域へ踏み出すことを、アドベンチャーと言います。ベンチャー企業のみならずすべての企業は、アドベンチャーなくしてこの企業を取り巻くビジネス環境の変化と言う大海の嵐を、無事乗り越えていくことはできません。ASPサービサビリティとは、このアドベンチャー精神に基づくものであり、ビジネス環境の変化に対する基本的な適応力であると言えるのです。
そう考えると、今後の私たち自身のマーケティング戦略もよく見えてきます。
ASPサービサビリティこそ、ASPサービスの入会動機そのものだと言うことです。
新しいものを使ってみたい、なにか面白そうなことをやっているけれど、どれどれどんな便利になっているの、すべて未知なるものへの好奇心を駆り立てることが必要だってことです。
さああと1ヶ月ちょっと。がんばって目標を達成しましょう。 KAI