筆者はたびたび、ユーザーの業務知識が、そのユーザーが所属する業界一般のレベルにないと言う問題を指摘してきました。
この指摘は、別の意味でこれまた問題があります。それはこう言い切る根拠を示していないからですが(根拠となる事例は山のようにあります)、これとは別に業界一般の業務知識レベルとはいかなるものかを曖昧にしたまま議論を続けることにも問題があると言うことです。
そもそもこの業界一般の業務知識レベルなる、一般化された概念が存在するのかどうかも疑わしいのですが、筆者はこれについては明確に“ある”と断言できます。
それは、日々の受注や出荷と言ったルーチン業務だけでなく、CRMやマーケティング業務を含んで、その業界の、いずれかの企業で必ず行われている基本的な仕事のやり方は、すべて一般化できるものであると言うことです。当然これらは、企業毎にさまざまなバリエーションを持ちますが、ソフトウェア的にはすべて分類可能なものであり、決して例外となるものではありません。
実は、この「ソフトウェア的」と言うのがミソで、これは従来からの一般化の手法を「ハードウェア的」と呼ぶことと対比した言い方です。ハードウェア的には、例外としてしか分類できない仕事のやり方が、ソフトウェア的には、例外ではなく一般化された仕事のやり方の基本パターンに分類できるのです。
これを、B2Cのビジネスモデルにおいて欠かせない、カードと言う支払方法を例に説明します。この市場に最近ネットプロテクションズ(NP)と言う会社が「NP後払い」と言う決済システムで参入して健闘しています。
このNPの決済システムとは、一見、コンビニ振込み、郵便振替、銀行振込みの代行会社のようなサービスに見えます。現に受託システムでは、新種の集金代行会社と位置づけて、システム対応を行っているところが大半です。つまりハードウェア的分類では、従来から言えば例外的な支払方法であり、結果的にカスタマイズ作業が必要となるわけです。
しかし、私たちのKAIモデルに基づくソフトウェア的分類では、カードと言う支払方法の中の信販会社にNPと言うブランドのカードが追加されただけで、システム的な変更は一切発生しません。
なぜそうなるか、簡単に理由は説明できます。それは、KAIモデルによって業界全体の業務知識がすべてカバーされ、モデル化されているために、例えば支払方法であればすでに8種類と言う基本パターンに分類されており、この中にどんな決済システムを持ち込んでも必ずこの8種類のいずれかに分類されてしまうと言うわけです。
この8種類の基本パターンは、実はB2Bにも適用できます。つまり卸販売の一見複雑な掛け販売も、必ずこの基本パターンの一つに分類され、結果的に共通のアルゴリズムを持つロジックで処理できてしまうのです。
なぜ8種類なのかとか、こんな簡単なことになぜユーザーの理解が及ばないのかとかいったことは、こんどじっくりひざ突き合わせて、お話しましょう。(明日のパネルディスカッションで少し話す予定) KAI