すでに満足せる豚。眠たげなポチ。さんが詳細にレポートしている話題ですが、CNETの「アプリケーションのカスタマイズを可能に--セールスフォースの新しい賭け」から。
Salesforceは、「Software as a Service(SaaS)」という新しいビジネスモデルに基づいてソフトウェアを提供する企業のなかでも、リーダー的な存在だ。そのSalesforceが、「Multiforce」という新しい開発システムを擁して、賭けに出ようとしている。同社のパートナーや顧客企業は、Multiforceを利用して、ソフトウェアをカスタマイズし、独自のサービスを構築することができるようになる。
アプリケーションのカスタマイズを可能にするという戦略は、「No Software」というスローガンを掲げる同社にとって、不適切と思われるかもしれない。しかし、アナリストは(今ある情報から判断する限り)、この計画が理にかなったものであると述べる。同社の最大の目標は単純明快だ。より多くの企業にSalesforceのサービスを利用しなければならない理由を提供し、さらには既存の顧客に満足を与え続けることによって、自社にライセンス料が入り続けるようにすること。これこそが、同社の究極の目標だ。
この戦略の当否は、更新系機能のサポートとその機能制限で決まると筆者は考えています。詳細は、自己組織化アプリケーションで今後説明していきますが、照会系のインターフェイスがいくら公開されても、アプリケーションとしては体をなしません。
そもそも、ソフトセクターの競争戦略再考シリーズの端緒になったCNETの記事「ERP導入の成功の秘訣はベンダー数とカスタマイズを抑えること」--米調査にも、
また、取引するERPベンダーの数や、アプリケーションのカスタマイズ量が少ない企業の方が、大きなアプリケーション導入効果が得られると、Hackett Groupは述べる。
と書かれている通り、ERPにおいてカスタマイズは鬼門です。それをあえて承知でベニオフはカスタマイズに走ったのか。この理由は想像がつきます。前回のエントリーで、筆者はこう書きました。
情報と人間の主客逆転の結果、今何を行わなければいけないか。上記はてなのビジネスモデルで明らかなように、「Design Strategy」とは、このビジネスモデル自体の、扱う情報に適応したビジネスルールの動的組み換えと言うデザインと同時に、先の人間オブジェクトをカバーするソフトウェアと言うオブジェクトである、(自己組織化)アプリケーション自体の動的な再構成に、全力で立ち向かえるかどうか。この一点が競争戦略の要です。
多くのユーザーにサービスを拡げれば拡げるほど、扱う情報量が極大化していき、それぞれ個々のユーザー毎の「ビジネスルールの動的組み換え」要求に、ベニオフが直面した結果、選択した戦略が「カスタマイズ」です。
しかし、です。カスタマイズは鬼門であることも百も承知のはず。その躊躇するベニオフの背中を押したのはSOA陣営の甘いささやき(あくまで筆者の想像ですが)であったのは間違いありません。
セールスフォースのこの偉大なるチャレンジの行方は、私たちの将来をも占う、重要な意味を持つものになります。 KAI