オープンにはいろいろな形のオープンがあります。先日やっと意味が理解できたオープンソースの意味もその一つです。
これもシンクロニシティと言うべきか、グッドタイミングで面白い事例が三つあがっています。
インターフェイスのオープン化
一番目は、はてなのオープン化戦略に見るインターフェイスのオープン化です。
はてなのオープン化戦略について、梅田さんの『何でもオープンにすることについて(つづき)』と言うエントリーで議論に火が点いていますが、ここではこの戦略の意味を、はてなのビジネスモデルとの関係から考えてみることにします。(※お断り:ここで言うビジネスモデルとは、筆者の独断と偏見でもって記述するものであり、まじめに学問的に考察したものではありません)
はてなのビジネスモデルを、今考案中のOML(オープンモデリング記法)を使って記述するとこうなります。
<はてな:ビジネスモデル>:
<<ユーザー:1>> |−−−−><はてな:1>
<はてな:2> /−−−−><<ユーザー:2>>
<はてな:3> |−−−−><<スポンサー:3>>
<<スポンサー:3>>|・・・・><はてな:4>;
比較するためにGoogleのビジネスモデルもあげておきます。
<グーグル:ビジネスモデル>:
<グーグル:1> |−−−−><グーグル:1>
<グーグル:2> /−−−−><<ユーザー:2>>
<グーグル:3> |−−−−><<スポンサー:3>>
<<スポンサー:3>>|・・・・><グーグル:4>
<<代理店:5>> |−−−−><グーグル:5>
<グーグル:5> |・・・・><<代理店:6>>;
はてなのビジネスモデルでは、起点がユーザーになります。ここがグーグルのビジネスモデルと比較して大きく違う点で、グーグルでは起点がグーグル自身であり情報はグーグル自身で生成したものです。これに対してはてなでは、ユーザー自身がはてなに情報を提供し、ユーザーがその情報をはてなに取りに行きます。ここからは何の収益も上がりません。売上になるのは、はてなを経由してスポンサーに流れるユーザーの(注文などの)情報に対するコミッションです。
このはてなのビジネスモデルの記述を見ながら、はてなのオープン化がどこにあるのか考えると、ルールの上の2行の中にあることがわかります。
つまり、上述したようにグーグルではグーグル自身で生成した情報に対してユーザーがアクセスするのに対して、はてなでは、ユーザー自身が提供する情報をユーザー自らアクセスすると言う自己言及の構造になっています。このタイプの構造では、外部にインターフェイスを公開(オープンに)するのは難しいことではないと言うことが、容易に想像できると思います。(ユーザーとはてなの間に<API>を挿入してみて下さい)
これに対して、グーグルは、自ら情報を生成するために、そのプロセスの間にユーザーの介入を認めることができないと言うのも、良く理解できます。(片方向しか<API>を挿入できません)
さて、ここで<はてな>と言う内部オブジェクトを、一つのアプリケーションと見なすと、はてなはアプリケーション機能の集合と見なせます。この状態で<API>を導入してオープン化を図ることは、アプリケーション機能を追加することと同じ意味を持ちます。結果としてオブジェクト間に流通する情報量を増加させる効果を生みます。
流通する情報量の増加は、そのままスポンサーへの情報量の増加となって、売上に結びつくことになります。
インターフェイスのオープン化戦略とは、つまりこう言うことです。
データ構造のオープン化
二番目はデータ構造のオープン化です。データ構造とはインターフェイスの一種ですから、一番目の問題と問題構造は一緒です。
この事例のネタはCNETです。『マイクロソフトのXML戦略は、本当に「両刃の剣」なのか』と言う記事には、マイクロソフトがOffice製品の標準フォーマットをXMLに移行することの是非が書かれています。
この問題をアドビのPDFの戦略と重ね合わせて考えると、いろいろ面白いことが見えてきます。
<アドビ:ビジネスモデル>:
<アドビ:1> /====><<ユーザー:1>>
<<ユーザー:2>>|−−−−><アドビ:2>
<アドビ:2> /−−−−><<ユーザー:3>>
<<ユーザー:4>>|・・・・><アドビ:4>
<アドビ:4> /====><<ユーザー:5>>;
アドビのビジネスモデルの中心のPDFファイルを読み書きするためにはアクロバットが必要です。つまりアドビにおけるビジネスモデルは、ユーザーが起点になってアクロバットをダウンロードします。これによって流通するPDFフォーマットのすべての情報を読むことができ、変換と言う形で書くこともできます。このアクロバットのダウンロード(あるいはプレインストール)は無料ですので、PDFフォーマットの情報の流通にとって加速こそすれ、障害になる心配はありません。
更にPDF形式の情報が十分流通するようになると、情報発信者は、限定された機能のアクロバットではなく、本来の有償製品を必要とすることになり、お金を払って入手すると言う流れになるのは自然の流れです。
さてここでマイクロソフト(MS)のビジネスモデルです。従来のモデルを書くと次のようになります。
<MS:ビジネスモデル>:
<<ユーザー:1>>|・・・・><MS:1>
<MS:1> /====><<ユーザー:1>>
<<ユーザー:3>>|−−−−><MS:3>
<MS:3> /−−−−><<ユーザー:4>>;
3行目、4行目のルールはなくても全くビジネスモデル上問題ありません。つまりルールの圧縮をやるとこうなって面白くもなんともない形になります。
<MS:ビジネスモデル>:
<<ユーザー:1>>|・・・・><MS:1>
<MS:1> /====><<ユーザー:1>>;
こう言った状況で、今回のデータフォーマットのXML化によって、ビジネスモデルがどうなるかです。結論を書くとこうなります。
<MS:ビジネスモデル>:
<<ユーザー:1>>|−−−−><MS:1>
<MS:2> /−−−−><<ユーザー:2>>
<<ユーザー:3>>|・・・・><MS:3>
<MS:3> /====><<ユーザー:4>>;
XML化によってアクロバットのダウンロードさえ不要になり、情報の流通量が極大化します。MS製品がXML情報の発信の武器になるなら、ユーザーは無条件でMSへの支払を増やします。
よって、データ構造のオープン化も、結果的には情報量の流通を増やし、それにかかわるアプリケーション機能のベンダーの収益に貢献すると言うのが、筆者の仮説です。
無料化と言うオープン化
三番目は無料化と言うオープン化戦略です。
記事ネタはこれまたCNETの『フルブラウザは無料の時代に--「jigブラウザFREE」公開』です。
この記事を詳しくお読み頂ければ、jigブラウザの無料化は、ここで言う「フルブラウザは無料の時代に」と言っている流れとは意味が違うことが分かりますが、業界?の流れは、フルブラウザが無料化と言うオープン化戦略の流れにあることは間違いありません。
さて、これ以上書くとボリュームが増えすぎます。以降は次回に書いて、とりあえずウェンさんの料理を頂くことにします。 KAI