ゲーム業界について以前のエントリーで取り上げましたが、CNETの記事オンラインゲーム市場を狙う大手IT企業の思惑の中で興味深い記述があります。
IBMは、Butterfly.netという新興企業の主要な支援者となっているが、Butterfly.netではグリッド・スーパーコンピューティング技術をオンラインゲームの運営に応用しようとしている。同社はまた「オンデマンド・コンピューティング」戦略に関わる他の要素を、オンラインゲームの運営に活かそうと躍起になっているところだ。一方Sunは昨年、ゲーム開発用言語としてのJavaの利用拡大や同社製ハードウェア/サービスを使ったオンラインゲーム運営の促進を目的として、Game Technologies Groupという新部門を設立した。
オンラインゲーム市場に参入したこの他の大手企業としては、話題のオンラインゲーム「Sims Online」の運営用に自社のグリッドコンピューティング技術を提供しているデータベース大手のOracleや、通信大手のAlacatelが挙げられる。こうした動きを見ると、まるでゲーム業界が、企業向けにIT技術を提供しているベンダ各社にとっての新たな活躍の場になっているかのような印象を受ける。
IBMのメディア/エンターテイメント業界戦略担当バイスプレジデント、Steve Canepaは、「ゲーム業界は今まさに転換期を迎えている」の述べ、さらに「今はIBMにとって、同業界の転換の一端を担う千歳一遇のチャンスだと考えている」と語った。
市場調査会社IDCの推計によると、現在北米のオンラインゲーム市場の総売上は10億ドル弱で、同市場は向こう数年間で年率20%の成長を遂げるという。またThemis Groupという別の調査会社は、世界のオンラインゲーム市場は、アジア市場の急成長のおかげで、10年以内に90億ドル規模に拡大すると予測している。
90億ドル規模とは1兆円を超えると言うことですから放っておくてはありません。
この記事を読んで、とっさに梅田さんのBlog「Google PC世代」という考え方に思い至りました。
もしGoogleのスーパーコンピュータが、検索という特殊目的に限って凄い性能を出すものなのであれば((2)の悩み)、そしてそれがそれほどのスケーラビリティを示さないのであれば((3)の悩み)、John Udellがこのコラムで書く「Google PC」というイメージは「Googleを買い被り過ぎ」という結論になってしまうのだろうけれど、そこについての判断が今のところつかない。たとえば、質の高い日本語Blog「Radium Software Development」では、「040511 - Google Cluster Architecture (1)」、「040512 - Google Cluster Architecture (2)」、「040514 - Google Cluster Architecture (3)」、「040515 ? Parallelization」の4回にわたって、Googleのクラスターアーキテクチャについて精緻な分析を行なった上で、
「Google の検索エンジンは,前述のような処理の並列化を行うことによって,高速な検索処理を実現している。ウェブ空間のように膨大な規模を持つデータベースも,適切な領域の分割と処理の並列化さえ行われれば,スループットを極限にまで引き上げることができる。ウェブ検索という特殊なアプリケーションだからこそ実現することのできた技術なのだろうと思う。」
「これが,例えば Gmail のような一般的なアプリケーションになってしまうと,話はだいぶ異なってくるのだろうと思う。ストレージの冗長性に関して GFS が役に立つぐらいのものであり,並列性云々は関係無くなってきてしまう。」
と「汎用性への疑問」を提示されている。こうした意見を持つ専門家が僕の周囲にも多いのであるが、Googleもそういう意見は百も承知の上で「Internet-scale software」の実現に邁進して、「結果で勝負だ」と考えているのだろう。
オンラインゲームを支える技術とGoogleとの間に、一体どんな共通項があるのか、恐らく読者の皆さんは不思議に思われるでしょう。
梅田さんの記述の通り、Googleの技術というのは検索という一方向の技術であって、オンラインゲームのようなインタラクティブな技術には向いていないのではないか、と言うのが一般的な(と言うより専門家の)考え方です。
しかし、果たしてそんな単純に片づけてしまって良いのでしょうか、と言うのが今回のエントリーの内容です。
さて、これを1回のエントリーで行うには時間がありません。3回くらいに分けて行いますので、ご期待ください。 KAI