今回は、人手不足について考えてみたいと思うのであります。
きっかけは今朝このニュースを見たからであります。
訪問介護の現場の人手不足を解消するため、厚生労働省はこれまで別々の事業所が担っていた訪問介護と通所介護のサービスを、ひとつの事業所が提供できるようにし、通所の人材を訪問でも活用できる新たな介護サービスの案をまとめました。こんな小手先の制度いじりでは、まったくもって人手不足解消につながらないのは明らかなのであります。在宅で受けられる介護保険のサービスには、ヘルパーが自宅を訪れる「訪問介護」とデイサービスのように利用者が施設に出向く「通所介護」がありますが、このうち訪問介護の現場では、昨年度の有効求人倍率が15.53倍と、施設で働く介護職員の3.79倍を大きく上回り、人手不足が深刻になっています。
厚生労働省はこうした状況を解消するため、これまで別々の事業所が担ってきた訪問介護と通所介護のサービスをひとつの事業所が提供できるようにし、通所の施設で働く人材を訪問でも活用できる新たな介護サービスの案をまとめました。
それによりますと、新たな介護サービスは、地域の高齢者が住み慣れた環境で介護を受けられるよう「地域密着型」とし、質を維持するため利用者に定員を設け29人以下とするとしています。
また、ひとつの事業所が訪問と通所の両方のサービスを担うことで、利用者の体の状況やニーズなどに関する情報がスムーズに共有されることが期待されています。
厚生労働省は、来週開かれる審議会で案を示して専門家の意見を聞いたうえで、年末に向けて正式に決定したいとしています。
(訪問介護の人手不足解消へ 通所の人材を活用 新たなサービス案、2023年10月31日 6時22分 )
つまり、すでに人手不足の通所の人員を訪問に移動するだけであり、かえって通所サービスの人手不足を悪化させるだけだからであります。
そもそも介護サービスの人員不足の根本原因は、その賃金の安さにあるのであります。
特に給与の低さに関しては介護福祉士の推定平均年収は330万円とされており、全業種の440万円と比べると大きな開きがあります。平均年収330万では、特に都会で家賃を払いながら家族で生活することは不可能と言わざるを得ないのであります。また、最低の年収では190万円という数字もでており、生活していくことが厳しいような給与で働いている介護福祉士も存在します。
参照:介護求人ナビ介護の仕事の年収・月収はいくら? 職種別の平均給料がまるわかり!
(介護業界の人手不足を解消するには?|対策と事例を徹底解説、更新日:2023.10.30)
そしてこの安さは、介護保険制度からくるものであり、いかに制度設計がずさんであったことがわかるのであります。
つまりは、介護保険制度を改善しない限り、介護サービスの人手不足解消は絶望的なのであります。
タクシー業界の人手不足問題
話しは変わるのでありますが、例にもれずタクシー業界も人手不足なのであります。その対策として今言われているのが、ライドシェアと呼ばれシステムなのであります。
なぜか、様々な地域の人たちがこのシステムを、まるでタクシー業界人手不足問題の切り札のように取り上げているのであります。
しかしながらKAIは、このシステムに大反対なのであります。
一番の理由は、日本と言う私たちの社会は、安全性と言う信頼の社会で成り立っているからであります。
もしライドシェアで事故が起きたなら誰がその責任を負うのでありましょうか。
タクシーならタクシー会社がその責任を負いますが、ライドシェアは恐らくそのシステムを運営する会社は、法的責任を忌避すると思うのであります。
ライドシェアのドライバーとなる個人の人々には、もとより任意保険ではこの事故の乗車の人に対する保障は担保されてはいないのであります。
これ以外にも反対する理由は、様々あるのでありますが、究極の理由がこちらであります。
ライドシェア自体が日本の慣習や実情に合わないつまりは、日本ではライドシェアは実現しないと思うのであります。
――ウーバーの主力事業であるライドシェア。日本では参入できていません。現在、日本でライドシェアに参入する計画はまったくない。日本の法律ではライドシェアは認められていないからだ。日本では法律を守ったビジネスを求める感覚が非常に強い。そのことは過去に手痛い目にあってよく知っている。その国の地域性に合わせた事業展開をすることが大切だ。
――法律で認められればライドシェアを始めますか。
それは現実的ではない。ライドシェア自体が日本の慣習や実情に合わない、と考えている。日本ではタクシー会社とパートナーシップを組み、今後もタクシーの配車アプリを展開していく。日本のタクシー会社、日本人のドライバーによるサービスこそが乗客のすばらしい乗車体験を作れると考えているからだ。
(ウーバーは日本のライドシェアを断念したのか、日本のモビリティトップが語る「現実と期待」、中野 大樹 : 東洋経済 記者、2019/08/30 5:20)
では、タクシー業界の人員不足解消はないのか、と言いますれば、あるのであります。
ポイントは、業界の賃金制度、歩合制なのであります。
タクシードライバーが、このコロナ過で会社を去っていた主たる理由は、利用客の減少による手取りの減少であります。
会社を去っていった人々は、すでに定職についていると思われるのでありますが、もちろんこの歩合制の賃金の会社には就職していないのであります。
彼らを呼び戻す方法は、ただ一つ、歩合制ではない年俸保障制度の導入しかないのであります。
幸い、現在のタクシー需要は旺盛なのであります。これに合わせたタクシードライバーに対する年俸の提示こそ、今の業界の人員不足に対する切り札となるのであります。
やはりすべての人員不足の問題には、給与が関係しているのだと言う真実であります。 KAI
コメント