トヨタなど日本勢に追い風 EV一辺倒だったEUがエンジン車販売禁止を転換、2023/3/27 22:32
案の定であります。昨年、2035年までにエンジン車の販売を禁止し全面的にEVへの移行を目指していたEUでありますが、ここにきて一転方針転換であります。
EVの問題は、すでに以下のエントリーで指摘してきたとおりであります。
今回、ドイツがいかなる理由で方針転換を申し入れてきたかと言いますと、前掲の産経の記事によりますれば「エンジン関連の雇用損失」問題があったとのことであります。
方針転換の背景には、フォルクスワーゲン(VW)やBMWなど多くの自動車大手を抱えるドイツでエンジン関連の雇用損失を懸念する声が強まっていたことがある。そこで気になりますのが、エンジン車の使用条件となります「合成燃料」であります。
(トヨタなど日本勢に追い風 EV一辺倒だったEUがエンジン車販売禁止を転換、2023/3/27 22:32)
e-fuelは合成燃料の1種となるが、その合成燃料はCO2とH2を合成して製造される燃料であり、ガソリン、軽油、灯油などの混合物を含む「人工的な原油」のことを言う。なるほど、排出する二酸化炭素量がガソリン車と同じでも、燃料製造時に二酸化炭素を使用するので、実質合成燃料は二酸化炭素の排出量がゼロであると言う理屈であります。
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しかしe-fuelは、燃焼時に排出されるCO2が通常のガソリンを使った場合と同じである(図1)。
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だが、製造時にCO2を資源として利用するため、CO2の排出量と吸収量を差し引いて全体としての排出量はゼロとなる。このため、カーボンニュートラルである「脱炭素燃料」と言われている。
(e-fuel(合成燃料)とは何か? トヨタも取り組む「CO2を排出しても脱炭素」の作り方)
しかしながら問題は合成燃料の価格であります。ガソリンに比べて2〜5倍といわれる価格の合成燃料を使用するエンジン車は果たして市場に受け入れられるのでありましょうか。
ここで世界の潮流に目を向けてみることにするのであります。
米国は2030年までに新車の販売をゼロエミッション車にするという目標を立てているが、米国ではゼロエミッション車にPHVも含まれる。また中国は、2035年までに新車の販売の50%をEVにする一方、残り50%をHVにする目標を立てている。世界の潮流の中心は、EVではなくPHVないしHVにあると言えるのであります。日本は2035年までに新車の販売を電動車に限定するが、HVやPHVも含まれる。
ライフサイクル・アセスメントの観点から言えば、BEVよりもHVやPHVの方が温室効果ガスの排出が少ないという試算もある。それにHVやPHVも、さらなる技術革新で温室効果ガスの排出を抑制できる可能性がある。米国に中国、そして日本は、そうした「BEV以外の手段」で自動車の脱炭素化の実現を模索する可能性が残されている。
(EVをめぐる、欧州「2035年ゼロエミ100%法案」に噴出する“問題”…本当にやりきれるのか?、Jun. 17, 2022, 07:15 AM)
つまり、EUが容認したエンジン車とはHV車に他ならないのであります。
そうです、ドイツの自動車メーカーは、日本のメーカーに技術的に遥かに後れを取ったHV車でしか生き残れないし、しかも欧州では合成燃料しか使用できなくなるのであります。
これは更にドイツの自動車メーカーだけでなく欧州の自動車メーカーすべてに当てはまることになり、結局のところEUはガソリンエンジンを受け入れざるをえなくなると、KAIは見ているのであります。
はてさて、いかなることになるのでありましょうか。 KAI
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