ロシアの歴史的愚挙に思う(8)

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もはやこの戦争は、終わりのない戦争になってしまったのでありましょうか。

ここにきて秀逸なる記事を見つけましたので、ご紹介したいのであります。

ロシア社会は“プーチンの戦争”を止められない、2023年1月27日

以下、引用しながらコメントさせていただきたいのであります。

「ロシアには人々が意見を表明できる仕組みがない」

ロシア社会について独自の分析を続ける社会学者として知られるレフ・グドゥコフ氏は、いまのロシアの現状をそう語りました。

政権に批判的な姿勢を変えることなく、世論調査や分析を続けてきた独立系の世論調査機関「レバダセンター」で、所長を務めてきたグドゥコフ氏。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア、そしてプーチン大統領をどう見ているのか。
話を聞きました。

(聞き手 モスクワ支局記者 禰津博人)

NHK記者による、ロシアの独立系世論調査機関「レバダセンター」元所長グドゥコフ氏のインタビュー記事であります。
戦争は、名目上はほぼ変化なく支持されており、ピークは2022年3月で、その後いくぶんか低下しましたが、およそ72%から75%になります。

一方で、特に2022年9月の動員宣言後、軍事活動の停止や交渉の開始を願う人が増え始めました。それまで戦争はバーチャルな、テレビの中での性格を帯びており、国民の大多数には影響していませんでしたが、動員のあと態度は変化しました。

8月には、48%の人が「勝利で終わるまで、ウクライナを完全に壊滅させるまで戦う必要がある」と主張し、44%が「もう停戦交渉を始めるときだ、戦争は長期化している、戦争の代償は高すぎる」と考えていましたが、10月以降には50%以上が軍事活動の停止に賛成し、戦争の継続に賛成した人は30%から40%台にとどまりました。

この彼の調査結果は、KAIが9月のエントリーで指摘したことと同じなのであります。
これに対して、30万人といえども動員による戦争当事者に仕立て上げることで、家族を含めて、戦意を戦場に繋ぎとめることを、プーチンは目論んでいるのではないかと思うのであります。

しかしながら、この目論見は真逆の結果を招くことになるのではないかと、KAIは考えるのであります。

それは、今回の動員に応じなければ、懲役10年の刑が科せられるために、いやいや戦地に赴くことになるからであります。家族もまた同様であります。

プーチンの目論見とは逆に、この動員で、一部の国民の中に、厭戦気分が拡散されることになると思うのであります。

さらには、動員した兵士が戦力になるより前に、ウクライナは奪われた領土を奪還し、ロシア軍のさらなる撤退が、厭戦気分に拍車をかけることになるのであります。
ロシアの歴史的愚挙に思う(5)、投稿日:2022年9月25日

しかしながら、同氏は、このロシア社会の厭戦気分が戦争の行方になんら影響を与えないと、すべてに悲観的なのであります。

以下引用。
「ロシアは民主主義国ではありませんし、世論は体制が下す決定に何の影響力も持っていません。」

「威嚇することで自分の意見を表明するなどの権利を失わせながら、国民、社会への弾圧を進めています。体制はただ強権的になりつつあるのではなく、独裁的になりつつあります。」

「ソビエト時代の二重思考の技能はここに由来しています。自宅の台所でなら、罵ったり思っていることを話したりできます。ですが、公の場では人々は政権が彼らに期待している通りに行動するのです。」

「今ではロシアが戦っているのはもうウクライナのナチズムではなく、集団的な西側諸国であり、この状況に耐えるようにとプーチン政権は呼びかけています。」

「ウクライナとの戦争の責任は何よりもアメリカにあると考えている人は60%以上います。ウクライナが悪いと考えている人は17%のみです。ロシアだと考えているのはおよそ7%です。」

「反対派がおらず、情報空間は完全に管理されており、人々には耳を傾けることのできる権威ある意見がないので、起きていることを解釈できないのです。」

「私たちは遅かれ早かれ、指導部内の公然とした衝突を目にするでしょう。そうなれば世論が大衆の雰囲気を表現するチャンネルとなると思います。そうなって初めて、何かが変わるかもしれません。ただ、今はまだそうではありません。」

「警察と、大統領直属の準軍事組織、国家親衛隊は戦争に反対するあらゆる演説を弾圧しているので、人々にはできることがありません。人々は意見を表明することはできないと思っています。」

「この状況に対する責任を自ら負い、状況を変える用意のある社会勢力は見当たりません。 SNSでは反対派から涙や号泣、彼らの状態に対する苦情、プーチン氏の糾弾、罵倒や憎悪が見られますが、強力な反戦活動、反対派の活動の出現につながるような具体的なものは見られません。私は2023年を非常に悲観的に見ています。」

要するに、この戦争を終結させるには、ウクライナがロシアに完全勝利するしかないということであります。

問題はこの完全勝利するまでに、果たしてどれくらいの期間を要するものかってことであります。

このところロシア軍が再び大規模な攻撃を仕掛ける可能性も指摘されているのでありますが、これまでの戦況を見る限りにおいて、ロシア軍は後退を余儀なくされており、ロシア軍が反転攻勢に転ずることは不可能ではないかと思うのであります。

今後も続くさらなるウクライナに対しての欧米による戦車等の兵力の供与によって、ウクライナの攻勢が続くとすると、そう期間を要せずにクリミアを含めたロシア軍の全面的敗走が始まるのではないかと思うのであります。

更に、これを裏付けるのが、両軍の士気の圧倒的違いであります。

ウクライナの士気は、ロシアへの強い怒りであり、一方のロシアは戦闘の強制による恐怖に支配された士気であります。

兵力における大きな差がない以上、明らかに最前線の戦闘能力における士気の優劣の差から、結果は導き出されるのであります。

ウクライナの全面的勝利を願うばかりであります。 KAI