ロシアのウクライナへの軍事侵略が続いているのであります。ここでみなさまにはぜひともお気づきいただきたいのが、今回のロシアの暴挙は領土「侵略」であって、決して「侵攻」などと呼べるものではないのであります。
しん‐りゃく【侵略/侵×掠】
[名](スル)他国に攻め入って土地や財物を奪い取ること。武力によって、他国の主権を侵害すること。「隣国を—する」「—戦争」
(Weblio 辞書、しん‐りゃく【侵略/侵×掠】)
しん‐こう【侵攻】侵略と侵攻、この違いこそが、今回の戦争の本質なのであります。
[名](スル)他国や他の領地に攻め込むこと。「内乱に乗じて敵本土に侵攻する」
(Weblio 辞書、しん‐こう【侵攻】)
すなわち、今回のロシアの目的は、決して日本の大半のメディアが報じる軍事侵攻などと言うあいまいなものでは決してなく、軍事侵略そのものであったのであります。
つまり、ロシアは、ウクライナの領土を略奪することを目的とした戦争であったのであります。
それを裏付ける報道があるのであります。
ロシアは、ウクライナ東部に軍事作戦の重点を置く方針を示しました。東部は親ロシア派の武装勢力が影響力を持つ地域で、ウクライナ軍の激しい抵抗を前に、方針転換を迫られたという見方も出ています。もともとロシアはどういうシナリオを描いていたのか?
その手がかりになるのが、軍事侵攻開始のわずか2日後に国営の通信社が配信し、直後に削除した記事です。
「ウクライナは戻ってきた」と、まるで早々にロシアの勝利が決まったかのような内容。「誤配信」とみられる記事が伝えていた、ロシアが理想としていた筋書きとは?
(【詳しく】思っていたのと違う?誤配信に見るロシアの誤算、2022年3月29日 16時28分)
「ウクライナは戻ってきた」とは、ロシアによるウクライナ併合を意味するのであります。
もちろん2日でそれが実現するわけでもないのでありますが、ウクライナの政権奪取を端緒としていたことはまず間違いないのであります。
ところが、この当初の目的、略奪、すなわちウクライナ併合が、もののみごとに失敗に終わろうとしているのであります。
今回のこの戦争に関して、橋下氏をはじめ停戦に向けた様々な議論が交わされているのでありますが、このさまざまな議論のすべてに決定的に欠けているのが、このロシアのウクライナ併合なる当初の目的であるのであります。
ロシアとして、長期戦を覚悟としても、ウクライナ併合は実現できないと判断すれば、停戦に至るあらゆる議論の中に、停戦条件の選択肢は、実ではなく名を取るしかないのであります。
その「名」が、いかなるものになるのか、ここは専門家のみなさまにおまかせするのでありますが、ここに決定的影響を与えると思われる出来事があるのであります。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を巡り、プーチン政権の意向に沿った報道を続けているロシア国営テレビで、ニュース番組の放送中に突然、職員の女性がスタジオで反戦を訴えました。そうです、マリーナ・オフシャンニコワさんの、死を覚悟した政府への反旗であったのであります。
言論統制が強まる中、国営メディアから政権批判の声があがった形で、反響が広がっています。ロシア国営の「第1チャンネル」で14日、午後9時の看板ニュース番組「ブレーミャ」で、キャスターが、欧米による経済制裁についてのニュースを伝えていたところ、手書きの文字が書かれた紙を持った女性が突然スタジオに入ってきました。
紙には「戦争反対」という英語とともにロシア語で「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていました。
女性が「戦争をやめて」と繰り返し叫んでいたところ、放送は突然、別の映像に切り替わりました。
ロシアのメディアによりますと、女性はこのテレビ局で編集担当者として働くマリーナ・オフシャンニコワさんで、このあと警察に拘束され、公共の場で軍事行動の中止を呼びかけることなどを禁止した法律に違反した疑いで取り調べを受けているということです。
オフシャンニコワさんは、事前に収録していたビデオメッセージをSNSに投稿していて、父親がウクライナ人、母親がロシア人だと明かしながら、「今、ウクライナで起きていることは犯罪だ」と述べ、プーチン大統領を非難しました。
プーチン政権は、軍事侵攻に反対する声がロシア国内で高まっていることに神経をとがらせ、法律を改正するなどして言論統制を強めています。
こうした中で政権の意向に沿った国営テレビの放送の最中に図らずも反戦を訴えるメッセージが伝えられたことに対して、SNS上ではロシア国内からも賛同したり応援したりするメッセージが相次ぐなど、反響が広がっています。
【全文】SNS事前投稿メッセージ
1分10秒ほどのビデオメッセージの全文です。
「いまウクライナで起きていることは犯罪だ。そしてロシアは侵略者だ。侵略の責任は、ただ1人の道義的な部分にかかっていてそれはプーチン大統領だ。私の父はウクライナ人、母はロシア人で、敵対したことは1度もない。私の首にかかるネックレスはロシアがこの同胞を殺し合う戦争を直ちに止めなければならないという象徴だ。兄弟国である私たちはまだ和解できるはずだ。残念ながら私は過去何年もの間、『第1チャンネル』でクレムリンのプロパガンダを広め、今はそれをとても恥じている。テレビ画面を通してうそを伝えることを許してきた自分を恥じている。ロシアの国民がだまされるのを許してきたことを恥じている。すべてが始まった2014年、クレムリンがナワリヌイ氏を毒殺しかけたとき、私たちは抗議集会に行かず、この非人間的な政権をただ黙って見ていた。そして今、世界中が私たちに背を向けている。今後10世代にわたる子孫はこの同胞による戦争の恥を洗い流すことはできまい。私たちは思考力があり、賢いロシア人だ。この暴挙を止めるには、私たちの力しかない。抗議集会に加わってほしい。当局は全員を拘束することなどできず、何も怖がることはない」
(【詳報】ロシア国営テレビ職員 放送中に突然「反戦」訴え、2022年3月15日 19時28分
)
もちろん彼女は拘束され、拘留されると思いきや、釈放され、テレビ局を退職したものの、米国テレビ局の取材に応じるなど、いまなお情報を発信し続けているのであります。
これこそがヒントになるのであります。
プーチンにとって、この戦争の「実」である、ウクライナ併合が実現できる見通しがたたない以上、停戦の条件となる「名」とは、いかなるものになるのか、これこそが問題となるのであります。
それは、ロシア国民の納得以外にはないのであります。
戦争前夜、ロシア国民に対して、プーチンは様々なプロパガンダ情報を発信し、この戦争が正当なるものであることを訴えていたのであります。
このことごとくが偽情報であったことを、マリーナ・オフシャンニコワさんは暴露したのであります。
この状況において、プーチンが取る停戦の条件とは、ウクライナからの撤退ではなく、東部占領地域の長期駐留以外ないのであります。
そして、ロシア国民に対して、ウクライナを「正常化」するまで我々は駐留を続けると宣言するのであります。
さてさて、これがいかなることになるのか。
ウクライナ国民は苦しみ続け、ロシア国民も、経済制裁で苦しみ続け、この限度となるのがロシア国民の爆発なのであります。
やがてプーチンは、ロシア国民に対して、ウクライナからの撤退を宣言せざるを得なくなるのは、まず間違いないのであります。
プーチンの敗北となるのは明らかなのであります。
それにしてもこの多くの犠牲者は一体なんだったのでありましょうか。
ただただプーチンの歴史的愚挙を、糾弾し続ける他はないのであります。 KAI
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