3年目もまた、パンデミックの年明けとなったのであります。
そして、3年目に至ってもなお、「ただの風邪」なる風説を流す愚か者が後を絶たないのであります。
コロナに関して、ぼくが最も信頼している木村盛世さん(医師、元厚生労働省医系技官)にオミクロンについて聞くと、ひと言。「ただのカゼでしょ」「ただのカゼ」で、こんな病床使用率(沖縄県65%(416床使用/640床:1月26日時点))になるわけないのであります。
なのに、今週も各誌、オミクロン、オミクロン。
『週刊文春』(1月20日号)「海外最新データで判明 オミクロンの正体」
『週刊新潮』(1月20日号)「『重症化しない』は高齢者・持病もちにも言えるのか 正しく警戒『オミクロン』対処法」
『ニューズウィーク日本版』(1・18)「新型コロナが『ただの風邪』になる日」(表紙は「コロナの最終章?」)
〝コロナ怖い派〟の『文春』でさえ、〈イギリスは年明けに新規感染者数が二十万人を突破。だが死者数は約五十人(一月四日)だ。日本も連日千人前後の新規感染者が出ている沖縄の重症者数はゼロ(一月十日時点)〉
では感染者はどこまで増えるのか。
『新潮』、名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター長、平田晃正教授によると、
〈「以前の予測より2週間ほど早まって2月上旬、感染者数は少なく見積もっても5000人に達するのではないでしょうか」〉
沖縄、北部地区医師会病院の田里(たさと)大輔医師(呼吸器・感染症科)は感染者急増に備えて、隔離するための宿泊施設を増やす必要があると警告。
その沖縄でも〈感染者のうち無症状者と軽症者が92%を超える(中略)人工呼吸器の装着者はゼロ〉だという。
やっぱり「ただのカゼ」だ。
『ニューズウィーク日本版』も慎重な言い回しながら、
〈オミクロンは、新型コロナウイルスの最後の変異株にはならないが、最後の「懸念される変異株」になる可能性はある〉
「ただのカゼ」にしたって、高齢者や基礎疾患を持っている人が十分注意すべきなのは言うまでもあるまい。
『週刊朝日』(1・21)は「まるっと一冊パンダだらけ」で表紙、グラビア6ページ、本文11ページの大特集。
ま、かわいいからいいか。
(花田紀凱の週刊誌ウォッチング(856)オミクロン狂騒曲、「ただのカゼ」では、2022/1/16 09:00)
まさか花田氏は、コロナに感染しても重症者以外入院治療は必要ないとでも思っているのではありますまいか。
ツイッター上でも多くの方々が、「ただのカゼ」に反論を寄せているのであります。
コロナは風邪派の人が案の定「どこが医療逼迫してるんだ」と言ってきてるんですが、そう言う人たちみんななぜか重症者数と死亡者数の数しか出さず、入院数には一切触れないんですよね。いくら重症者数少ないからって、酸素が必要な入院患者が増えれば逼迫はしますよ?この2年間はまさにこの、コロナは風邪、コロナはインフルと同じなどとの風説を垂れ流す愚か者たちとの戦いであったのであります。
(Twitter、EARLのコロナツイート@EARL_COVID19_tw、午後0:20 - 2022年1月25日)
これが、ここにきてオミクロン株の爆発的流行とともに風邪派やインフル派が、息を吹き返してきたのであります。
このオミクロン株を甘く見てはいけないとの秀逸な記事を見つけましたので、ご紹介したいのであります。(長文全文引用になりますが、yahooの記事は時間がたつと消去されますので、ご容赦願います)
オミクロンが「弱毒株」であるがゆえに「自然のワクチンになって」パンデミックの出口に至るという楽観論が世界あちこちで広まっており、日本にも到達したようです。これは科学的には根拠のない話ですが、実際のところどうなのでしょう。よくみうけられる疑問を検討してみます。そして、コロナに関してのもう一つの大きな問題、反ワクチン派の存在なのであります。1)オミクロンは「弱毒株」だから感染しても大丈夫?
オミクロンが「軽症」ですむ場合にはワクチンの効果による部分が大きいです。ウイルス自体の病原性もデルタに比べると「低い」ですが、これは限定的で独特のニュアンスがあります。
というのは、オミクロン感染では、人工呼吸器を必要とするタイプの重症化率はある程度低下している一方で、入院治療が必要になる程度の重症化率は、とくにワクチンをしていない人や、2回目接種から長い時間がたっている人のあいだではそれほど下がらないようです。
このため、集中治療室よりも一般病棟における医療逼迫が英国などでも問題になっています。
重要な点として、オミクロンによる重症化率は特に若年者でより低くなる傾向がありますが、高齢者や持病のある人ではオミクロンでも(デルタと比べて)それほどは重症化率が減ってくれていません。ですから、コロナで重症化しやすいひとは、オミクロンでも同様に危険があるので、感染予防やブースター接種で身を守る必要があります。
オミクロンはデルタとよく比較されますが、そもそもデルタが従来株より病原性が高い変異株であることは注意が必要です。
また、軽症〜中等症のコロナ感染後にもコロナ後遺症がありえることも問題です。コロナ後遺症は治癒後ある程度(たとえば12週間以上)つづく症状で規定されるもので、医学的にはさまざまな異なった状態があると考えられます。オミクロンでどの程度コロナ後遺症が起こるのかについてはまだ未確定です。また、心筋炎といった、呼吸障害以外の合併症がオミクロンでどの程度起こるかについてもまだ不明です。
オミクロンでも、感染しないで済むならば感染しないに越したことはない、といえます。
2)オミクロンで免疫ができれば他のコロナにかからなくなってパンデミックが終わる?
オミクロンは免疫逃避型変異株として、(デルタなどに一度かかったひとが)再感染したり、ワクチンを2回接種したのに感染すること(=ブレイクスルー感染)が普通におきてしまいます。
オミクロンには、既存のワクチンでできる抗体がウイルスにくっつきにくくなるような変異がいくつもはいっています。このため、ワクチンでできた抗体がウイルスの感染をうまく防御できなくて、症状がでたり、一部のひとは症状がきつくなり入院治療が必要になります。従来株やデルタの感染でできる抗体や、ワクチン接種で誘導される抗体ではオミクロンに対する効果は数割程度効果が落ちています。
しかも、そもそも、コロナの自然感染でできる免疫では治癒後、数ヶ月単位で急速に抗体価が下がってしまいます。ワクチンのほうがより安定な免疫になりますが、とくに高齢者では半年ほどでワクチンの効果が(接種直後の)半減してしまいます。
ここで科学的に重要なのは、オミクロンとそのほかの変異株(デルタ、アルファなど)は免疫学的に(とくに抗体という観点から)とても違うということです。
デルタでできる免疫からオミクロンは逃避するので、デルタ感染したことがある人にも簡単に感染できてしまいます。
この逆もまた理論的には考えられます。
オミクロンに感染することで人体がつくる抗体は、デルタなどほかの変異株には効きが悪いという可能性が十分にあります。実験による検討が必要ですが(現在なされていると思われますが)注意すべき可能性です。
そして、次の変異株は、オミクロンともデルタとも異なるタイプの免疫学的特性をもつ変異株が問題になる可能性もまた十分にあります。
なお、オミクロンに感染した場合、オミクロンに対する免疫が特異的に誘導されるので、治癒直後にはオミクロンに再感染しにくいと考えられます。
3)オミクロンでT細胞免疫が誘導されて長期免疫ができてパンデミックが終わる?
自然にコロナに感染することでできる抗体は半年以内に相当減弱します。また記憶T細胞の数も数ヶ月単位で半減していきます。抗体をつくるB細胞とT細胞は助け合う関係で、これらが急速に減少してしまう以上、オミクロンであっても同様に、自然に感染してできる免疫の持続はそう長くないだろうと考えられます。
ワクチン接種は(自然感染よりも)安定した抗体とT細胞免疫を誘導できるので、オミクロンによる重症化回避のうえでも有効です。しかしそれでもワクチンで誘導される免疫は半年単位で減弱してしまいます。高齢者などコロナ感染でリスクが高い人ほど免疫は不安定になりがちなので、ブースター接種が重要になります。
ワクチンの繰り返し接種や自然感染で、だんだん「T細胞免疫が強くなっていく」と楽観的に考える人もいます。これもそうあってほしい話ですが、科学的にはそれほど強いデータが存在しません。T細胞免疫は一般の医療機関では測定が難しいゆえ、そして実験的に測定がきちんとできて確認できないものに頼って判断するわけにはいきません。それゆえに、現実世界での病院のデータや疫学データを注意して見守る必要性が依然あるわけです。
少し長期的な展望を書くと、T細胞免疫を安定かつ長期に維持できるようなワクチンの開発が望まれています。しかしこれにはまだしばらく時間がかかりそうです。
4)オミクロンがデルタを駆逐してパンデミックが終わる?
これは「そうであれば良いな」と思う夢のような話ですが、残念ながら変異株の発生は終わらないという事実は(オミクロンが出現したからといって)変わりません。
デルタの病原性が高い以上、せめてオミクロンがデルタだけでも駆逐してくれればと願うものです。しかしながら、オミクロンがほかの変異株とは免疫的な性質がとても違うことから、オミクロン感染でできる免疫は(特に抗体の免疫については)デルタなど他の変異株に対してはそれほど期待ができません。
デルタもオミクロンほどではないにしろ感染しやすい変異株であるということからも、デルタを駆逐しきれずにオミクロンとデルタが交互に流行するというシナリオもあります。
さらに可能性が高いのは、デルタでもオミクロンでもない新しい変異株が半年〜1年後に世界のどこかから出現して再び大流行するというシナリオです。
以上のことから、科学者の個人的見解としては、オミクロンの登場自体はとくにパンデミックの終わりが近いことを示すものではないと考えます。むしろオミクロンは新型コロナウイルスが予想以上に大きな「振れ幅」をもつことを示したことが科学的には重要です。予測がそう簡単ではないゆえに、流行のリアルタイムでデータを取得して判断していくことがますます重要になったといえます。
また社会的にも、オミクロン大流行の被害が国によって大きく違うので、2022年の世界の動向が読みにくくなったといえます。
5)まとめ
今までコロナにかかったことがない人で、しかもワクチンをしていない人にとっては、オミクロンはこれまでと同様に危険な感染症です。少なくとも、オミクロン感染よりもワクチンで免疫をつけるほうがずっと安全で(より多くの変異株に対して)汎用性のある免疫のつけ方になります。
今回のオミクロン流行の特性を把握して、対策することが緊急ですが、オミクロンはこれまでの変異株と比べて免疫学的にもウイルス学的にも異なる点が多いので、オミクロンの特徴だけを見てパンデミックの長期見通しの根拠とするのは危ういと思います。
確実に明るい材料は、オミクロンの病原性うんぬんよりも、パンデミックを制御するための科学技術が進歩しつづけている点に存在します。
とくに重症化回避のために効果が高いワクチンができて現在広く接種されていること、さらに現在も新しいタイプのワクチンが開発されつつあること、また治療方法が進歩していること、という3点が重要です。
また、検査体制や変異株モニタリング体制も進歩がみられて、より確実にリアルタイムで流行の状況を知ることができつつあります。
こうした科学技術のおかげでパンデミックの核心的問題は少しずつ、より上手に制御できるようになってきています。こうした新しい道具と知識をうまく使っていくことがコロナに安全な社会を作っていく上でより重要になっていくと思われます。
ここを間違えて、せっかく作り上げた科学インフラと専門知を小馬鹿にしてこの2年間積み上げてきたものを崩してしまうと、オミクロン流行への対応における問題だけではなく、近い将来、新しい変異株流行のときにしっぺ返しにあってしまうことになると考えられます。
(オミクロンが「自然のワクチン」にならない理由、小野昌弘イギリス在住の免疫学者・医師、1/20(木) 3:16)
この記事にもあります通り、「ワクチンをしていない人にとっては、オミクロンはこれまでと同様に危険な感染症」なのであります。
コロナに対してワクチンはきわめて有効であり、以下のツイートで報告されている通り、実際にそのデータが提示されているのであります。
極めて素晴らしいデータがでました!はてさて、コロナとともに、この愚か者たちとの戦いは、いつまで続くのでありましょうか。 KAIワクチン接種者の場合、新型コロナ感染後のlong covd(後遺症)が、未接種者に比べて有意に低く、ほぼ感染していない人と同じレベルであった(つまりほぼ後遺症を防いだ)とのことです。
大きな問題であった後遺症も予防接種によって防げることを示唆します。
We revised the paper and not only are #covid19 cases who got 2 #vaccine doses reporting much less #longcovid symptoms than unvaccinated-they're reporting no more than uninfected people- suggesting vaccination brings these symptoms back to baseline https://medrxiv.org/content/10.1101/2022.01.05.22268800v2(Twitter、知念実希人 小説家・医師@MIKITO_777、午前8:12 - 2022年1月18日)
(Twitter、Michael Edelstein@epi_michael、午前3:27 - 2022年1月18日)
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