すっかり報道が下火になった感のあるゴーン問題でありますが、カルロス・ゴーンの仏ルノー会長兼CEO辞任によって事態が大きく動いたのであります。
日本の自動車メーカー、日産自動車の前会長で日本で勾留中のカルロス・ゴーン被告(64)が23日、フランスの自動車メーカー、ルノーの会長兼最高経営責任者(CEO)を辞任したことが明らかになった。フランスのブルーノ・ルメール経済・財務相が24日、ブルームバーグTVで「昨夜、辞任したばかりだ」と発言した。この辞任の原因となったのが、こちらの報道であったのであります。
(ゴーン被告、ルノーの会長兼CEOを辞任と、2019年01月24日)
【パリ=三井美奈】フランスのメディアは10日、カルロス・ゴーン被告が租税を回避するため、日産自動車、ルノーの統括会社があるオランダに住所を移した疑いがあると報じた。ルノーが同社幹部に統括会社経由で不透明な報酬を支払っていたとの指摘も浮上し、仏政府は同社に説明を求めた。こういった問題では、一旦悪行が暴露されると、次から次へと続報が出てくるものなのであります。10日付仏紙リベラシオンによると、ゴーン被告がフランスからオランダに住所を移したのは2012年。同年就任した社会党のオランド大統領(当時)は「富裕層に重税を課す」と公約し、富裕層対象の資産税を増税したことが原因だとした。納税義務が生じる居住国は通常、1年間の半分以上滞在することが判断基準となるが、ゴーン被告は日仏を往復し、オランダには居住実体がなかったとしている。仏公共ラジオは、ゴーン被告の「税対策アパート」はオランダのアムステルダムにあり、日産が月8千ユーロ(約100万円)の家賃を負担していたと伝えた。
ルノーはオランダの統括会社を経由して幹部1人当たり最高13万ユーロの報酬を支払い、フランス法が定める報酬額の公開を免れていたとの報道がある。ルノーの労働組合は統括会社をめぐって昨年末、筆頭株主である仏政府に実態解明を要求。ルメール仏経済・財務相は6日、ルノーに詳細報告を求めたと述べた。
(ゴーン被告、仏でも「税逃れ」疑惑浮上、2019.1.11 18:36)
[パリ 13日 ロイター] - フランスの経済紙レゼコー(電子版)は13日、ルノー(RENA.PA)・日産自動車(7201.T)連合の前会長、カルロス・ゴーン容疑者がオランダにある日産と三菱自動車(7211.T)の統括会社を通じて700万ユーロ(800万ドル)の支払いを受けたと報じた。その結果のお約束が、こちらとなるのであります。報道によると、日産と三菱自は2017年6月、両社の従業員や管理職にボーナスを支払うためオランダに「日産三菱BV」を設立した。
同統括会社の取締役は当初、同社からボーナスを受け取るはずではなかったが、ゴーン氏は2018年2月に同社の従業員として採用され、支払いを受ける資格を得た。他の取締役はこうした事実を知らなかったという。
日産の広報担当者のコメントは得られていない。
(ゴーン容疑者、オランダの統括会社から700万ユーロの報酬=仏紙、2019年1月14日 / 12:26)
フランス政府はこれまで、「推定無罪」の原則からゴーン被告の解任に反対してきていたこともあり、日本では、フランスは日本を非難していると言う論調の報道が多くありましたが、しかしながらフランスに関するそんな報道の影では、ルノーの労働組合からの反発もおきていたのです。すなわちゴーン可哀そうとのフランスの世論が、一気に反転、ゴーンへの批判に転ずるとみるや、ルノーの大株主であるフランス政府が動いた結果の、ゴーンの会長兼CEO辞任であったのであります。最初は、昨年の時点で、オランダの支社からルノーの幹部に情報開示されていない給与が払われている疑惑から始まりました。この件に関しては、フランス政府もルノーに詳細を求める要求をしています。そして、今年に入り、1月10日に新たにフランスの大手新聞リベラシオンにより、ゴーン被告がフランスの富裕税課税を逃れるため、オランダに税務上の居住地を移していたことが問題提起されたのです。オランダに移住して税逃れをしたことは、フランスラジオ・ヨーロッパ1でも、「公共心に欠け、違法性がなくても大問題だ」と指摘されるなど波紋を広げ、ゴーン被告の逮捕直後の昨年11月に、同被告のフランス国内での納税状況に関し「報告すべき特別な点はない」と、ルメール経済・財務相が説明したことについて、「ほんとうに知らなかったのか」それとも「うそをついたのか」と、対応したフランス政府側も批判されることに発展していきます。
(仏国内でゴーン批判高まる、投稿日:2019/1/18)
と言うことで、このゴーン辞任によって、図らずも日産ルノー経営統合問題とゴーン問題が見事に切り離されることとなったのであります。
そこで今回は、この二つの問題の行方について、考察してみたいと思うのであります。
まずは日産ルノー経営統合問題についてでありますが、これは前回昨年末に述べさせていただいたとおりであるのであります。
ゴーン問題に見る平成最後の年末について、投稿日:2018年12月31日でありますので、今回は二つ目のゴーン問題の行方なのであります。
そもそもゴーン問題とは何だったのでありましょうか。
それを解説する良記事が、こちらなのであります。いつもどおりNHKの記事はすぐ消えてしまいますので、全文引用ご容赦願いたいのであります。
世界的な経営者に対する前例のない捜査で、国内外から大きな注目を集めた事件。「日本のトップ企業を私物化した」とみる東京地検特捜部に対し、「I am innocent=私は無実だ」と全面的に無罪を主張するカルロス・ゴーン前会長。両者の主張は真っ向から対立し、今後の裁判では激しい攻防が予想されます。併せてNHKは次なる情報も報じているのであります。1 報酬の過少記載
まず、みずからの報酬を有価証券報告書に少なく記載したとされる罪についてです。ゴーン前会長は平成22年度から昨年度までの8年間の報酬を有価証券報告書に合わせて91億円余り少なく記載したとして金融商品取引法違反の罪に問われています。
特捜部は日産内部の文書の内容などから、ゴーン前会長が高額報酬への批判を避けるため、実際には毎年20億円程度だった報酬を10億円程度と報告書に記載し、差額は別の名目で退任後に受け取ることにしていたと判断。金融商品取引法などでは将来支払われる報酬でもその見込み額が明らかになった段階で報告書に記載する必要があるとしているため、特捜部は退任後の報酬は将来支払われることが「確定」した報酬で、報告書に記載する必要があったとみています。
一方、ゴーン前会長は「退任後の報酬は確定していない」と主張。そのうえで「開示されていない報酬を日産から受け取った事はなく、報酬を受け取る法的な効力がある契約を締結したこともない。検察による訴追は全くの誤りだ」と無罪を主張しています。
2 特別背任
次に資金を不正に支出させるなどして日産に損害を与えたとされる罪についてです。ゴーン前会長は11年前のリーマンショックで18億円余りの含み損を抱えた私的な為替取引の権利を日産に付け替えたほか、この損失の信用保証に協力したサウジアラビア人の実業家の会社に日産の子会社から1470万ドル当時のレートで12億8000万円余りを不正に支出させたとして特別背任の罪に問われています。
特捜部はゴーン前会長が為替取引の損失をめぐって銀行側から多額の追加担保を求められたため取り引きの権利を一時的に日産に付け替え、日産に巨額の損失を負担する義務を負わせたと判断。また、実業家への12億円余りもこの損失の信用保証に協力した謝礼などとして不正に支出されたものだとしていて、子会社の当時の幹部が「実業家の会社に日産との取り引き実態はなく不要な支出だった」と供述していることも重視しているものとみられます。
一方、ゴーン前会長は取り引きの権利を日産に移した際の取締役会の議決や議事録に英語で「no cost to the company」と記されていたとして、日産には一切損害を与えていないと主張。また、実業家への資金についても「日産への投資を呼び込むため中東の複数の国の要人との面会をセッティングしてもらった。信用保証に協力してもらう前の年にも実業家側には3億円を支払っており、こうした経緯は書面にも記録されている。正当な報酬だったことは明らかだ」などと無罪を主張しています。
また、ゴーン前会長の弁護士は「特捜部は実業家から話も聞かずにゴーン前会長を逮捕した。全く異例の事だ」と捜査を強く批判していて、両者の主張は真っ向から対立しています。
特捜部の今後の捜査は
今回の事件で、東京地検特捜部は司法取引などによって膨大な資料を入手しており、今後もゴーン前会長をめぐる不透明な資金の流れについて捜査を継続するものとみられます。一連の事件で特捜部が注目しているのが、ゴーン前会長がみずからの裁量で使えるCEO=最高経営責任者の予備費です。
関係者によりますと、この予備費からはサウジアラビアの実業家に支出された12億円以外にも、ほかの知人が運営に関わるオマーンの販売代理店におよそ35億円、レバノンの販売代理店におよそ17億円が支出されていたということです。
このうちオマーンの代理店の知人からはペーパーカンパニーを経由してゴーン前会長の妻が代表を務める別のペーパーカンパニーに1220万ユーロ、15億円余りが支出され、こうした資金が前会長らが使っていたクルーザーの購入費用に充てられていた疑いがあるということです。
一方、ゴーン前会長はこうした支出について「成果を上げた代理店への正当な報奨金として長年かけて支払ったものだ。オマーンの知人から受け取った資金とは全く関係がない」などと説明しているということです。
特捜部は中東各国に捜査共助を要請して協力を求めていますが、海外を舞台にした複雑な資金の流れをどこまで解明できるかが、今後の捜査の焦点になります。
(東京地検特捜部 vs ゴーン前会長 全面対決の構図に、2019年1月15日 17時47分)
日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が、サウジアラビア人の知人にCEO=最高経営責任者の予備費から16億円余りを不正に支出させたとして再逮捕された事件で、この予備費からは、ほかの知人が経営に関わるオマーンとレバノンの販売代理店にも合わせて50億円余りが支出されていたことが関係者への取材で分かりました。このうちオマーンの代理店の知人からはその後、前会長側に15億円余りが支払われていたということで、東京地検特捜部は、中東を舞台にした巨額の資金の流れを調べています。そして、こちらであります。日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)は、私的な損失の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏の会社に、日産の子会社から16億円余りを不正に支出させたなどとして、特別背任の疑いが持たれています。
この16億円余りは、子会社の「中東日産会社」を通じてCEO=最高経営責任者の予備費から支出されていましたが、この予備費からは、ほかの知人が経営に関わるオマーンとレバノンの販売代理店にも合わせて50億円余りが支出されていたことが関係者への取材で分かりました。
支出されたのはオマーンの販売代理店におよそ35億円、レバノンの販売代理店におよそ17億円で、このうちオマーンの代理店の知人からはその後、前会長側に15億円余りが支払われていたということです。
東京地検特捜部は中東を舞台にした巨額の資金の流れを調べています。一方、弁護士によりますと、ゴーン前会長はジュファリ氏への16億円余りについて「正当な報酬だった」としたうえで、ほかの2社への支出についても「成果を上げた代理店への正当な報奨金として長年かけて支払ったものだ。オマーンの知人から受け取った資金とは全く関係がない」などと説明しているということです。
(ゴーン前会長 CEO予備費から中東2社に50億円支出か、2019年1月10日 18時08分)
日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告(64)が、日産の子会社からサウジアラビアの知人の会社に支出した13億円について、支払いに関する契約書が存在しないことがわかった。KAIは、一連のこれらの情報を読む限り、ゴーンには釈明の余地がないと思うのでありますが、ゴーンは、あくまで強気なのであります。ゴーン被告は、私的な金融取引の損失をめぐって、信用保証に協力したサウジアラビア人の知人側に、日産の子会社「中東日産」から、およそ13億円を支出させるなどした罪で追起訴された。
この13億円について、ゴーン被告は、「現地でのロビー活動などの報酬だ」などと主張しているが、関係者によると、ロビー活動の内容や成果について、日産側には報告がなく、支払いに関する契約書も存在しないという。
この13億円は、信用保証に協力した謝礼とみられていて、東京地検特捜部が、金の流れをさらに調べている。
(13億円、契約書存在せず ゴーン被告→知人の会社、2019年1月12日 土曜 午後0:10)
会社法違反の特別背任罪などで起訴された日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)が30日、勾留先の東京拘置所(東京・小菅)で日本経済新聞のインタビューに応じた。中東の知人側への巨額送金について「必要な幹部が(決裁に)サインした」とするなど改めて違法性を否定し、検察側との全面対決の姿勢を鮮明にした。なるほどと、あらためてKAIは思うのであります。
(日産ゴーン元会長、逮捕後初のインタビュー、ゴーン元会長、独占インタビュー、2019/1/30 17:00)
このゴーンの強気にこそ、ゴーン問題の本質があると言うことなのであります。
それはすなわち、ゴーンのこの類まれなる強気こそが、日産ルノー連合を世界一の座にまで押し上げた源泉であり、それを可能にした、良くも悪くもルノーと日産の経営体制そのものにその原因の一旦があったと言うことなのであります
つまりは、ルノーと日産と言う水の中で、水を得た魚のように経営手腕を発揮したのが、カルロス・ゴーンその人であり、ゴーン事件の真相であったと、KAIは考えるのであります。
でありますので、ゴーン問題の行方とは、まさに日産ルノー経営統合問題の行方と連動していると言わざるを得ないのであります。
すなわち、経営統合問題を、日産経営陣が回避できた暁に、ゴーン有罪があり、経営統合問題で混迷し経営が混乱する事態になれば、限りなくゴーン有罪は遠のくと、KAIは見るのであります。
はてさて、いかなる展開となりますやら。 KAI
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