まずは、あるブログの記事に対して寄せられたコメントの一つをお読みいただきたいのであります。
"「男性選手だったらもっと酷いことを言ったりしたりしても警告など受けないのに、抗議をしたことで一ゲームも取るのは女性アスリートへのセクシズムである、というウィリアムズには言い分がある」"KAIはこの匿名さんの意見に諸手をあげて賛成するのでありますが、この匿名さんがコメントしている記事とは、こちらであります。私はただのテニスファンでセクシズムについて明るいわけではありません。しかしこの意見には絶対に賛同できません。
「お前には二度と私の試合の審判が出来ないようにしてやる」というセリーナの発言は一線を越えています。ただの不満や抗議などではなく、自身の立場を利用した審判への脅迫です。
抗議の際の声の大きさや言葉の汚さという点では一部の男性選手の方がはるかに悪いでしょう。しかしセリーナが行った脅迫はレベルが違います。
少なくともこの10年のグランドスラムでは、男性選手が審判に対してこのような脅迫行為を行ったということは私は見たことがありません。
セリーナほどの影響力と強力なスポンサーを持つ選手がこのような発言をしたことは残念でなりません。仮に審判がこれを容認したとすれば、テニス会にとって大きな汚点になったでしょう。
自身のメンタルの問題をセクシズムの問題に置き換えて正当化する彼女の姿には失望しました。
そして、安易にセクシズムの問題として取り上げてしまうメディアが多いことにも失望しました。彼女が黒人で女性で人気者だから攻撃したくないのでしょうが…
セクシャリティーやマイノリティーを持ち出せば、どんな無理やりな言い訳でも否定することがタブーとになってしまう。現代のアメリカの病巣が現れたと思います。
このような歪んだポリティカルコネクトへの民衆の静かな反発がトランプ大統領を誕生させたエネルギーを生んだのではないでしょうか?
(匿名 さんのコメント...、9/09/2018)
なんと言っても、確実な実力と、あんな状況のなかでも落ち着きと集中力を失わない驚異的な精神力で勝利したのに、素直に喜べない大坂さんが気の毒でならない。それと同時に、不当な警告に抗議したことがさらに警告へとつながり、まる一ゲームも取られてしまうという極端なペナルティで、公正な試合をさせてもらえないという思いを強めるセリーナ・ウィリアムズの、これまでに積もり積もってきた思いと、彼女が背負っている女性アスリートの歴史を思うと、ますます涙が出る。あんな警告がなく、通常の試合をした結果だったら、彼女だって潔く女王の座を笑顔で譲っただろうに。それにしても、FBでの友達の投稿を見る限り(きわめて限定されたサンプルであることは百も承知ですが)、どうもこの試合についての反応が、日本とアメリカでずいぶん違うみたいだなあ、と思っていたのだけど、日本の新聞の文章などを見てちょっとわかった気が…もちろん、「・・・というウィリアムズには言い分がある」と言っているのはこの記事の筆者ではなく、アメリカのメディアなのでありますが、これを取り上げる以上、このブログ主さん自身、このメディアの論調に肯定的と見受けられるのであります。私はアメリカのテレビ中継を生で見ていたのだけど、日本の報道の形容と私がアメリカのメディアを通して見たものは、かなり違う。アメリカでは、テレビ解説者の試合中とその後のコメントにしても、メディアでの報道にしても、審判の警告は行き過ぎであり、「男性選手だったらもっと酷いことを言ったりしたりしても警告など受けないのに、抗議をしたことで一ゲームも取るのは女性アスリートへのセクシズムである、というウィリアムズには言い分がある」という論調が主流。これは、単なるアメリカ贔屓、ウィリアムズ贔屓ということだけではなく、スポーツにおける女性、とくにマイノリティ女性の位置付けの歴史の背景がある、というのはアトランティック誌の記事などをみるとよくわかる。
(USオープン ウィリアムズ=大坂 ドラマにみるマイノリティ女性選手の葛藤と連帯)
実はみなさん、今回のトラブルの一番の問題は、この問題にコメントしているメディア含めた多くの方々が「テニスルール」を知らないで発言なさっているってことに問題の本質があることに、お気づきいただきたいのであります。
そのテニスルールとは、こちらであります。
ゲームペナルティとはゲームそのものを失う(相手にゲームポイントを与えることになる)厳しい罰則になります。セリーナは恐らくこの1回目の警告、コーチのジェスチャーを自分は見ていないから警告は間違いと主張していたのでありましょうが、警告に自分が見たか見ないかはまったく関係ないのであります。
テニスには様々な警告がありますが、例えばラケットを破壊するなど紳士淑女にあるまじきプレーや違反があった時に審判が選手に対して警告を与えます。
ということになります。
- 警告1回目:警告1
- 警告2回目:1ポイント(相手に与える)
- 警告3回目:1ゲーム(相手に与える
- 警告4回目:失格(相手に勝利を与える)
つまり、ゲームペナルティとは3回の警告を受けた時に起こる罰則のことです。
(テニスのゲームペナルティは何?セリーナが受けた理由は?(全米OP))
それでも2回目の警告のペナルティ、1ポイントを相手に与えるを受け入れ、0-15からゲームをスタートしたのでありますから、警告が2つになったことを後戻りすることはできないのであります。
問題は、3回目の警告であります。
<「お前には二度と私の試合の審判が出来ないようにしてやる」というセリーナの発言は一線を越えています。ただの不満や抗議などではなく、自身の立場を利用した審判への脅迫です。>
これは冒頭で引用させていただきました匿名さんのコメントなのでありますが、いくらなんでも審判への脅迫は許されることではないのであります。
しかし、ここでみなさんには、ご注意いただかなければいけないのが、脅迫したからゲームペナルティとなったわけではないってことであります。
ここをほとんどのメディアもコメンテーターも識者も、勘違いしているってことなのであります。
セリーナがゲームペナルティを受けたのは、3回目の警告を受けたからであります。
ココ、重要なのであります。
もし仮に、セリーナの暴言が2回目の警告で、ラケットをたたきつけコートを傷つけたことが3回目の警告であったとしても、ラケット破壊による警告のペナルティは、1ゲームを相手に与えるとなっていたのであります。
すなわち、今回の問題の本質は、セクシャリティの問題でもマイノリティの問題でもなんでもないのでありまして、それはセリーナによるルール違反とその違反へのテニスルールどおりの罰則が適用された、きわめて単純明快な問題であったと言えるのであります。
セリーナへのゲームペナルティに不満をお持ちのみなさん、いかがでありましょうか? KAI
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