連休を言い訳に、しばらく更新を休ませていただいたのでありますが、この日本の平穏とは裏腹に、いま世界は、第二次世界大戦以来70年目にして、最大の危機を迎えようとしているのであります。
その契機となったのがウクライナ問題であることは、みなさんご承知のとおりであります。
もちろん、このウクライナ問題と、第二次世界大戦以来最大の危機と、この二つの言明には、その言明自体の信憑性にも、その因果性にも、いまなんらの根拠たる事実はないのであります。
しかしながらであります。
過去の歴史的事実からしますならば、ことごとくすべてにおいて、歴史は事実の先を行くのであります。
としますならば、いまのいま、第二次世界大戦以来最大の危機なる「歴史」を、決して私たちは、これを無視するわけにはいかないのであります。
今回は、この情勢を含めまして、いま世界は何が起こっているのか、そして、きわめて近い将来何が起こるのか、これをみなさまにレポートするのであります。
と言うことで、このウクライナ問題で機は熟したと判断した中国がうってでたのがこちらの問題であります。
【ワシントン=加納宏幸】米国務省のサキ報道官は7日、声明を発表し、中国が石油掘削を始めた南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島近くの海域でベトナム船と中国公船が衝突したことについて「船舶による危険な行動と威嚇を強く懸念する」と表明した。その上で、関係国が安全で責任のある態度で行動を取るとともに、領有権主張を平和的に国際法に基づいて処理するよう求めた。要するに、先に仕掛けたのは、まぎれもない中国であります。これにベトナムが抵抗していると言う構図であります。ベトナムは問題の海域が自国の排他的経済水域(EEZ)だとして、掘削を阻止するため約30隻を派遣。掘削設備を護衛する中国船約80隻の一部と複数回にわたり衝突した。ベトナムは中国船が意図的にぶつかってきたと主張している。
衝突の原因となった掘削活動について、サキ氏は「係争のある海域で多くの公船を伴って掘削装置を導入するとの中国の決定は、挑発的で緊張を高めるものだ」と重ねて批判した。
(中越船衝突に米政府「強い懸念」 中国の強引な掘削、「挑発的で緊張高める」)
ここで、実に興味深い報道があるのでありますが、実はこの「事実」こそが、今回の事態の本質を読み解く重要なキーワードとなるのであります。
南シナ海で中国とベトナムの当局の船どうしが衝突したことについて、菅官房長官や岸田外務大臣が「境界が未確定の海域における中国の一方的かつ挑発的な海洋進出活動の一環だ」と指摘したことに対し、中国外務省の報道官は「日本は火事場泥棒をたくらんでいる」と述べ強く反発しました。言うに事欠いて「火事場泥棒」とは、と憤慨する必要は、微塵もないのであります。中国外務省の華春瑩報道官は9日の記者会見で、「現場は『境界が未確定の海域』などという所ではなく、中国の領土から17海里の接続水域だ」と主張しました。
そして、「日本があわてて出てきて、こんな発言をするのは、事の是非を混同し火事場泥棒をたくらんでいるからだ」と述べ強く反発しました。
さらに華報道官は、日本政府による沖縄県の尖閣諸島の国有化を念頭に、「一方的かつ挑発的な行動で中国の主権を侵し、地域の平和と安定を破壊する日本の本性は覆い隠せない。われわれは日本が挑発的な言動を一切やめるよう要求する」と述べました。
(南シナ海 中国が日本の発言に火事場泥棒と反発、5月9日 19時05分)
彼ら中国からして、今回の事変を、自ら「火事場」と定義したと言う、画期的事実であります。
この火事に火を点けたのは、まぎれもなく中国自身であります。
まずは初めに中国が掘削設備を問題海域に持ち込んだと言う、この絶対的事実を、いったいどうやって否定することができるのか。まずもって、中国は、ここで瑕疵をしでかしているのであります。
が、これに、中国は気づいていない。
この今回の中国の行動を予見していた人物がいる。
私は3月6日公開コラム以降、一貫してロシアのクリミア侵攻が中国に伝染する可能性を指摘してきたが、わずか2ヵ月で早くも現実になった形だ。中国は「力による現状変更」の意思を変えるつもりはまったくない。ロシアのウクライナ侵攻であります。
(ベトナム船衝突事件から読み解く中国の「尖閣侵攻リスク」)
確かに、この筆者である長谷川幸洋氏の分析のとおり、中国は、このところのロシアの一連の行動と世界各国の反応を見て、機は熟したと判断したのだと、KAIも思うのであります。
しかしながらであります。
このウクライナ問題と、西沙諸島問題とは、今回、決定的に違うのであります。
まさに、これこそが「正統性」問題なんでありますが、これはいったいどう言うことであるのか。
それは、ロシアには正統性があり、中国には正統性がない、と言うことであります。
すなわち、ウクライナ問題には、財政悪化を理由に2010年に誕生した親露政権に反発して、昨年11月ごろから反政府活動が勃発。今年2月ヤヌコビッチ大統領がロシアに逃亡して、政権崩壊。この逃亡政権を継続すると言う、ロシアには確固たる正統性がある、つまりはそう言うことであります。
対して、中国はどうか。
さきほどご指摘させていただきましたとおりであります。
先に火を点けたのは、まぎれもなく中国。
しかも、自らこれを認めたのであります。
さて、これからどうなるかでありますが、「正統性」思想におきましては、これは自ずと明らかになるのであります。
つまり、正統性のあるものが勝つ、であります。
すなわち、ベトナムにこそこの「正統性」があると言うことであります。
そのうえ、これを実証するデータを、いまここでご紹介するのであります。
ベトナムの名目GDPの推移(1980-2014年)
ベトナムの一人当たりの名目GDPの推移(1980-2014年)
この一人当たりのGDPは、日本円で21万円。
日本が、2014年の見込みで387万円でありますから、10分の1以下とはいえ、総GDP、一人当たりのGDP、ともにその成長率には目を見張るものがあるのであります。
これを中国と比べてみると。
中国の名目GDPの推移(1980-2014年)
中国の一人当たりのGDPの推移
明らかに、それぞれの成長率には勢いが違うのであります。
しかも、中国の一人当たりのGDPは、日本円で、75万円。21万円のベトナムが迫ってきているのであります。
まさに、このデータをもってしても、ベトナムにこそ正統性がある。
つまりは、そう言うことだったのであります。
もちろん、世界は、このベトナムだけではない。
そうではあるけれども、では、具体的に、北朝鮮は、尖閣は、となったときに、いったいなにが雌雄を決するかと申しあげますならば、それは結局、正統性の有無にしかない。
と言うことだったのであります。
ただ、これには一つ問題があるのであります。
両方に、正統性があると思われる場合は、いかなることになるのか、の問題であります。
これにつきましては、また次回、ご説明させていただきたいと思うのであります。 KAI
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