知の爆発--直感を疎かにしてはいけない(6)

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週末金曜日の午後、あわてて帰宅して、NHKが流すテレビ映像に何度声をあげたことか。あれから3年。

亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申しあげますとともに、避難されているみなさまの故郷への帰還がなんとしても早期実現することを願ってやみません。

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今回の知の爆発シリーズは、素数。

多少、出遅れ観大でありますが、このところ素数周辺が騒がしいのでありまして、今回はこのあたりについてレポートするのであります。

きっかけはこの記事であります。

 新定理では、どんな大きな数でも、600個ごとに区切ると素数が2個含まれる場合があると分かった。必ず2個あるわけではないが、2個の素数が含まれる600個ごとの区間は無限に存在する。今後の研究で、区間の幅はもっと狭まる可能性があるが、現時点では600が最小の幅という。
素数の間隔で新定理発見 極端な偏りなく分布、米英数学者
このニュースを見て、さっそくあの超弦理論の大栗先生が、こんなコメントのツイートを書いておられる。
共同通信配信の「素数の間隔で新定理発見」のニュースは、張益唐さんの業績について何も触れていないのが残念だと思う。http://www.gentosha.jp/articles/-/1554?page=6 …
大栗博司@PlanckScale、16:07 - 2014年2月26日
ここで紹介されているページを訪ねてみると、なんと物理の先生と思った大栗先生の、数学の世界をテーマにしたコラムを発見。少々長くなるのでありますが、これを引用させていただくのであります。
 2013年4月17日、数学の世界でも最も権威のある査読雑誌の一つ『アナルズ・オブ・マセマティックス』に、ニューハンプシャー大学の無名の数学講師から思いがけない投稿があった。間隔が70,000,000未満の素数のペアが無限個あるというのだ。『アナルズ』に投稿された論文は厳格な査読を受けるので、出版までに2年ぐらいかかることも希(まれ)ではないが、この論文は約1カ月の後の5月21日には出版が認められるという最速の決定だった。査読者の報告には、「素数の分布に関する画期的な結果である」と書かれていた。

 この論文の著者の張益唐(ザン・イータン)は、20年以上前に博士号を取得しているが、長い間安定した研究職に就くことができず、ファストフードの店員をして口を糊(のり)したこともあったという。素数を見つけるためには、古くからエラトステネスの篩の方法が使われていたが、2005年に、素数のペアを見つけるために改善した篩が提案された。張はこの方法に着目し、8年間の研究の末、この篩をさらに改善することで、間隔が70,000,000未満の素数のペアを選び出し、これが無限個あることを証明することができた。

 いったんこの方針で素数のパターンが見つかることがわかると、多くの数学者が参入するようになった。張の結果を改善して、もっと間隔の短い素数のペアについて、同じような定理を証明しようというのだ。

 最近は、インターネットを使って、多くの数学者の共同作業で定理を証明することもなされている。2009年には、ケンブリッジ大学のティモシー・ガウワーズが、自らのブログ記事で、ある定理の別証明のアイデアをコメント欄に書き込むことを呼びかけたところ、40人がかりで6週間で証明が完成した。この結果は、Polymathという名前で発表された。英語で“polymath”というのは、百科事典的な知識を持っている人という意味だが、「たくさん=“Poly”」の「数学者=“Math(ematicians)”」という意味ももじっているのだと思う。

 張の結果を改善するためにも、Polymathプロジェクトが立ち上がって、7月27日には、間隔が 4,680未満の素数のペアが無限個あることが証明された(70,000,000から、4,680に間隔が縮められた)。

 しかし、伝統的な数学の研究方法も健在だ。11月19日には、モントリオール大学のジェームス・メイナードが、間隔をさらに600まで縮めた定理を発表している。

 このペースだと、1つ飛びの素数ペアが無限個あるというもともとの双子素数の予想が証明される日も近いかもしれない。

 この原稿を校正しているときに、アメリカ数学会の2014年度のコール賞受賞者のひとりに、張が選ばれたことを知った。今回の話の一番最初に出てきたフランク・ネルソン・コールを記念した賞だ。論文の投稿から受賞まで9ヶ月という最速の決定だった。


張さん、おめでとうございます。
素数のふしぎ 前編

なんと、今回の新定理発見のニュースとは、すでに昨年11月19日発表されたものであり、しかもその半年前の張益唐さんが発見した新定理から導かれる必然の流れであったと言うお話だったとは。

それにしても、この一連の流れを予知する大栗先生のコラムとは、なんとも、これこそ、意味ある偶然、シンクロニシティそのものだったと言えるのであります。

この張益唐(Yitang Zhang、ザン・イータン)さん、大栗先生のコラムにあるとおり、実に苦労人の学者であったのであります。

Yitang Zhang
この張さんの論文発表の記事が、こちら。
Yitang Zhang: A prime-number proof and a world of persistence
今回の素数問題について、大栗先生のコラム以上に、素人のKAIが付け足すことは、まったくもって何もないのでありますが、素数問題で忘れてはいけないのが、あの望月教授の宇宙際タイヒミュラー理論であります。
知の爆発--直感を疎かにしてはいけない(4)
この宇宙際タイヒミュラー理論から導かれますのが、これまた素数問題でありますところのABC予想の証明であります。

これが現在どうなっているかと思って、いろいろググっていますと、こんなページを発見。

しかし二人の査読者としての実績を踏まえて考えると、(3),(4),(6)で報告したこれまでの検証活動は既にその「綿密さ」および「解像度」において一般的な数学論文の査読の範囲を大幅に超えており、その活動を通して二人からいただいているIUTeich理論に対する極めて肯定的な評価には一定の重みがあると考えております。
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多くの人はABC予想の不等式の数値的な側面を主な関心の対象としているようですが、「本命」として認識されるべきものは「IUTeich理論」という理論の方であり、理論と比較すると、不等式は理論が如何に深いところまで掘り下げているものであるかを示す単なる「一つの指標」に過ぎません。
宇宙際タイヒミューラー理論の検証:進捗状況の報告(2013年12月現在)
望月教授自身の手による、理論検証の進捗状況報告であります。

順調に検証作業が進んでいるようでありますが、ここで面白いのは、引用の後段部分であります。

ABC予想は、単にこの理論の深さの指標の一つにすぎない。

この宇宙際タイヒミュラー理論によって、これからまだまだ、信じられないような素数の世界の構造を解き明かしてみせる。

望月教授による、数学会への宣戦布告であります。

ますますKAIの期待は膨らむばかりであります。

と言うことで、これでお仕舞いと思ったら、偶然「直感の爆発」する映像を発見しましたので、簡単にご紹介させていただくのであります。

高井研「極限・宇宙生物学〜生命の起源はどこにあるのか」
宇宙生物学者高井研によるプレゼンテーション映像であります。

キーワードは、「直感ドリブン」、「直感と科学のぶつかる瞬間」であります。なぜヒトは生きものが大好きなのか?と言う命題に対して、ヒトの本能的に持つ直感に基づく環世界で説明するのであります。(生きものを認識する脳部位であるとか、太古の昔からリンネ同様の生物分類であるとか)

と言うことで、こんどこそお仕舞い。続きは、また次回と言うことで。 KAI