生命論的機械工学事始(2)

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いやはや、無謀なエントリーを立ち上げたもんだと、いまさらながら後悔するKAIでありますが、いろいろ調べるうちに、多少見えてきたものがありますので、とりあえずまずはそちらからであります。

と言うことで、非常に参考になりましたのがこちらの記事であります。

iPS細胞とSTAP幹細胞に関する考察、京都大学iPS細胞研究所、山中伸弥

そうです、山中教授直々のSTAP細胞(STAP幹細胞)に関する考察であります。

 STAP細胞とSTAP幹細胞の違いについても正確にご理解ください。細胞にストレスをかけてまずできるのはSTAP細胞です。「幹細胞」というものは、多様な細胞へと分化する能力(多能性)と、自らと同じ能力の細胞へと分裂し続けられる能力(増殖能)を持たなければなりません。STAP細胞は多能性を持ちますが、増殖できない細胞です。基礎科学の観点では極めて興味深い細胞ですが、再生医療や創薬という医療応用の観点からは、そのままでは活用しにくいものです。論文によれば、STAP細胞を特殊な培地で培養することで一部の細胞が増殖する能力を獲得し、多能性と増殖能を併せ持つSTAP幹細胞へと変化します。iPS細胞やES細胞は多能性と増殖能を持つ「幹細胞」ですので、比較すべきはSTAP細胞ではなく、STAP幹細胞です。論文の記載によると分化細胞からSTAP細胞へ誘導すると、およそ8割の細胞が死滅し、生き残った細胞のうちの3分の1から2分の1が、つまり元の分化細胞の約10%がSTAP細胞と考えられます。さらに、STAP細胞からSTAP幹細胞への変換効率は10回に1、2回とあります。

 また項目3で説明するように、医療応用面から考えるとこのような単純な数字の比較はあまり意味がなく、再現性や互換性の検討が重要です。

この山中教授の指摘が、このSTAP細胞(とiPS細胞)のメカニズムを考察しようとするKAIにとってきわめて重要なヒントとなるのであります。

それはすなわち、STAP細胞とは幹細胞にあらず、と言うことであります。

この幹細胞と多能性幹細胞の関係を説明するのが、以前ここでレポートいたしました以下の記述であります。

と言うことで、山中因子のOct3/4は、細胞のなかにもとからあったOct3/4遺伝子を機能させ、これがなんらかの方法で、270種類ある分化のプロセスすべて(かどうかはわからないけれど)について、これを元の幹細胞のもう一つ前、いわゆる多能性幹細胞まで引き戻したのであります。
ディープ・ラーニングとiPS細胞の初期化の関係とは?
つまり、<多能性幹細胞>→<幹細胞>→<体細胞>の関係であります。

iPS細胞では、この関係をファクター遺伝子を利用して巻き戻すことで自動で生成することができるのに対して、STAP細胞では、<体細胞>→<多能性細胞>→<多能性幹細胞>の順序となって、これをすべて手作業で誘導変換する必要があるのであります。

これが何を意味しているのかと申しあげますならば、iPS細胞とSTAP幹細胞が、仮に同じものであるとして、STAP細胞へと誘導する「刺激」によって、初期化に必要となるある遺伝子が活性化されるのではないか。さらにこれを増殖能を持つ幹細胞に変換させるのも、別のある遺伝子が活性化された結果で起こるのではないか、とかように考えられるのではないかと言うことであります。

しかし、残念ながらこれは、山中教授も指摘するとおり、誘導効率も変換効率もきわめて低く、すぐさまそのまま応用研究に結びつくものではないと思われるのであります。

もちろん、これからこれらの効率を飛躍的に改善する方法が発見されるならば、これはまったく別次元の問題になるのでありますが、いまのところはむしろ初期化のメカニズム解明のための基礎研究におおいに貢献するのではないかと、KAIは思うのであります。

そこで、本題に戻って標題の研究テーマでありますが、あらためて上記KAIのレポートをここで引用するのであります。

生命現象とは、そもそもこの「情報」の「次元」を、遺伝子レベルから細胞レベルへの転写をする働きに他ならないのであります。

かように考えますれば、実は「分化」した細胞には、なんらかの形で遺伝子から転写された「情報」が記憶されていて、この記憶をOct3/4と言う遺伝子が消去するのではないか、これが今回のKAIが思いついたアイデアであったのであります。

ここで「遺伝子レベルから細胞レベルへの転写」と書かせていただきましたが、今回の研究テーマは、このメカニズムを詳細に検討してみようと言うことでもあるのであります。

そして、いまKAIが考えている仮説でありますが、遺伝子は何を記憶しているかと言えば、細胞の外面(膜)と中の「形」であります。これを4次元トポロジー的情報として、細胞分裂と言うクロック単位の時間軸方向に記憶していて、ちょうどコンピュータがクロック単位にプログラムを実行するがごとく細胞を分裂させながら細胞の形態をステップごとの目的の形に変化させているのではないか、と言うことであります。

ここで問題となるのが、変化させた細胞の形を「固定」する仕掛けであります。

この仕掛けがあるからこそ、万能細胞をあらゆる体細胞に分化し、組織として機能させることができるのであると考えられるのであります。

でありますから、細胞の初期化とは、この体細胞の「固定化」の解除であり、あたかも糊付けされた部品をのりを溶かしてばらばらにするがごときイメージするのであります。

と言うことで、このあたりをまだまだ検討する必要があるのでありますが、ちょっと関連して面白い情報を見つけましたので、これにふれておくことにするのであります。

 これまでの情報システムの開発では、開発者は情報システムの設計・実装を行うとともに、英語や日本語などの自然言語により、サーバの構成や設定手順を示す文書を書きました。その文書を別の技術者が読んで構成や設定を行っていくのです。こうした自然言語の手順書の代わりにコード、つまりプログラムとして手順を書き、それを実行することで構成や設定を自動化するのが、Infrastructure as codeです。
クラウドの再定義を促す、Infrastructure as codeという新しい考え方
このお話は、KAIがかねてより論じてきました「自己組織化アプリケーション」につながるものであり、そして、今回の研究テーマである、生命論的アプローチにもつながるお話となるのでありますが、こちらはまた別の機会に取り上げたいと思うのであります。

はてさていつになりますことやら。 KAI