メルケル盗聴疑惑と秘密保護法案、そしてエネミー・オブ・アメリカ(2)

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ようやく、問題の核心に近づきつつあるといえばあるのではありますが、依然メディアと多くのみなさまにおかれましては、この問題の本質を理解できてはいないのであります。

それは、「秘密の情報」それ自体の、その情報が適法に取得された情報であるやいなやを問う「違法入手方法」の問題と、その情報自体が国家による不法行為を挙証する「不法行為情報」問題、この2点に、今回の一連の問題の本質があるのであります。

そして、この2点は、「国家の不法行為」と言う意味で、まったくもって同根の問題であったのであります。

これを、ご理解いただくためには、まず、「違法入手方法」問題についてであります。

 たとえばグーグルやヤフーの場合は、世界各地に設置されたデータセンターを結ぶ内部のネットワークでのやりとりをNSAが傍受していたという。データセンターを結ぶのは、各社が自前で設置しているプライベートなネットワーク。そこへこっそりとNSAがアクセスしていたとは、グーグルもヤフーも寝耳に水のできごとだったようだ。

 グーグル会長のエリック・シュミットは、「もし事実だとしたら、NSAがやっていることは非道だ。自分たちの目的を達成するために、人々のプライバシーを踏みにじるとは、まともな判断力を欠いており、許されることではない」と述べている。

 また同社の最高法務責任者であるデビッド・ドラモンドは、「わが社は長い間、こうしたタイプのスパイ行為があるのではないかと懸念してきた」と述べ、「われわれのプライベートネットワークにまでアクセスしてデータを傍受しようとする政府のやり方には、憤りを感じている。緊急に規制改革が必要だ」としている。
「スノーデン問題」で米国IT企業がとった“まずい態度”とは?

もはや、めちゃくちゃ、であります。

あまねく世界各国の憲法にうたわれている国民の基本的人権と言う、もっとも重要な概念である通信の秘密も、たまったものではないのであります。

今回のスノーデン問題における、決定的な米国政府の失態とは、この通信の秘密の侵害であったのであります。

一般的に、裁判所が認める範囲において、この盗聴は許されてきたのでありますが、これはあくまでたてまえであります。

日常化する世界的なテロ社会においては、防諜活動をはじめとして、法治国家におけるグレーゾーンの存在を、私たちは決してこれを否定することはできないのであります。

とはいえ、法体系と言うシステムに、かような瑕疵を認めるわけには、いかないのであります。

それは、すなわち、「不法」が「合法的」に隠蔽される瑕疵であります。

もうすこしわかりやすく申しあげますならば、「秘密情報」の内容がいかなるものであるのか、これを問う前に、この情報をいかなる方法で「国家」は入手したのか。

この問題であります。

すなわち「盗品」であるのか、そうでないのかを議論する前に(と言うか議論しないで)、その「品物」の存在を公表するかどうかを決めることができるようにしましょう。

おかしいでしょう?

その品物(情報)の存在公示云々よりなにより、それが盗品であるやいなや。まずもって確認しなければいけないのは、国家によって不法に収集された情報であるや否や。これが、いの一番にチェックされなければいけないのであります。

でありますから、「秘密情報」指定要件に、もっとも重要な条件とは、それが不法に収集されたものではないと言う保証であります。

つまり、第三者委員会によるチェックとは、その情報そのものの内容を伏せて、その情報の入手方法の合法性チェックおよび保証とすればよろしいのであります。

つづいては、国家による「不法行為情報」問題についてであります。

これをご理解いただくのにもっともふさわしい事例が、こちらであります。

西山事件
もちろん、ご承知のように、今回の法案提出の根拠となった事件でありますが、さきほどの「違法入手問題」と「国家の不法行為」問題の、みごとなまでの意図的混同を、KAIはこの事件に見出すのであります。

それは、国家の安全保障レベルの次元において問題となるのが、「民間人」である西山氏の「違法入手」問題であっていいのか、と言うことであります。

問題とするべきは、前段でご説明しました通り、「国家による」不法行為である「違法入手」問題であって、実は西山事件とは、まるで問題の本質がすれ違っていたのであります。

ところがであります。

実はこの西山事件こそ、今回の秘密保護法案にとってもっとも重要な意味を持つ事件であるのでありますが、これをこれからご説明するのであります。

それは、沖縄密約事件と言う「国家の不法行為」であります。

これが今回合法的に隠蔽されようとしている。

決定的問題とは、こちらであります。

この「秘密情報」が、「国家の不法行為」情報であるやいなや。

これもまた、秘密指定要件に加えればよろしいのであります。

「密約」が、「国家の不法行為」であることは、論をまたないのであります。

この「要件」こそ、画期的となる条件であるのでありますが、これが画期的であるが故に、この実現には途方もない知恵がいることになるのであります。(つづく) KAI