フラクタルとカタストロフィ(3)

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この研究テーマについて、まだまだ整理できてはいないのでありますが、備忘もかねて途中経過をば。

と、書こうと思った矢先、大栗先生が、これまた興味深いことを仰っておられる。

大栗: 僕は物理学者として、世の中のすべての現象は因果律に従っていて、前に起きたことによって決まるという決定論を支持していますので、自由意志が入り込む余地はないと考えています。ただ、こういう問題はそもそも、自由とは何なのか、定義がちゃんとなされていないというきらいはありますけどね。池谷さんの本でも、自由意志はないとされていますが、脳が決めたことを否定する自由はあると書かれていて、そのあたりは躊躇されているような印象を受けたのですが。
ブルーバックス創刊50周年記念特別対談 大栗博司×池谷裕二 『科学は「幻想」か』
この「因果律」こそ、くせものなんだと、KAIは思うわけなんでありますが、とにもかくにもこの対談すべて、ヒントがちりばめられているのであります。しばらくして、また読み返すことにするのであります。

と言うことで、いま気にかかっていることの一つ目、小澤の不等式であります。

■小澤の不等式

この小澤の不等式とはいったいどういったものであるか、まずはKAIが以前書かせていただきました以下のエントリーをご覧いただきたいのであります。

小澤の不等式ーー不確定性原理再び
おかげさまでこのエントリー、Wikipediaの小澤正直のページにリンクが張られているせいか、毎日10件以上アクセスがあるのであります。

そこで、この不等式ですが、あらためて見直してみると、今回の研究テーマである「フラクタルとカタストロフィ」と深くかかわっていること、さらにはさきほどの「因果律」ともつながっているのではないかと言う、そんなお話なんであります。

これをご説明するのでありますが、着目すべきは、ハイゼンベルクの不等式にくらべて小澤の不等式で追加された以下の項目であります、

ε(Q)σ(P)+σ(Q)η(P)
つまり、σと言う記号であらわされる「標準偏差」の項が追加されたのであります。

これが、何を意味しているのか、と言うことであります。

誤差と擾乱の間の関係式が、ハイゼンベルクの不等式。これに標準偏差を加える意味とは、何か。

それは、2次元から3次元への拡張であります。標準偏差と言う次元の拡張であります。

ここで、あらためて標準偏差とはなにかと考えれば、実はこれは「時間」の次元のことであったのであります。(つまり、XY軸の円周から時間軸方向の球面への拡張)

現代物理学において、この「時間」軸の扱いこそ常にキーポイントとなってきたのでありますが、フラクタルとカタストロフィにおいても、これに「時間」をどう組み込めばいいのか。これが問題となるのであります。

そして、これがいままで特にカタストロフィにおいて、ものの見事に失敗してきたと言うことであります。

今回の標準偏差と言う次元の追加が、このヒントになるのではないか。かように考えているところであります。

もちろん、先日もご紹介しました、先ほどの大栗先生の著書「大栗先生の超弦理論入門(講談社)」も、この問題のおおいなるヒントになっているのであります。

続いては、望月教授の宇宙際タイヒミュラー理論を解釈する際に出てきた「被覆次元」についてであります。

■宇宙際タイヒミュラー理論と被覆次元

この問題について、解説したエントリーがこちらであります。

知の爆発--直感を疎かにしてはいけない(4)
フラクタル構造をしたトポロジー空間を理解する際にキーワードとなるのが、「被覆次元」であります。

フラクタル構造と言うのは、とても興味深い図形でありまして、普通の図形の次元と言うものは、線なら1次元、面なら2次元と言うぐあいに、自然数になるのであります。ところがフラクタル構造の図形の次元は、小数点を持つことができるのであります。

例えば以下のページにある、マンデルブロ集合と言われるフラクタル図形をご覧いただきたいのであります。

マンデルブロ集合
この図形は、複素空間と言う平面上に描かれた1次元の曲線の集合でありますから、普通に考えればあくまで1次元の図形と言うことになるのであります。

しかしながら、複素平面上を埋め尽くされた曲線を見れば、これは2次元の絵であるとしか見えないのであります。

この問題を解決するのが、被覆次元と言う概念であるのであります。

すなわち、次元の値に小数点を取れるように定義することにより、この次元で計算した面積や体積が有限である場合、これが有限から無限あるいはゼロになる次元の境界値を被覆次元と呼ぶことにするのであります。

これが、例えば、1.985と言うような値を取る図形であれば、きわめて2次元である平面に近い図形であると言えることになるのであります。

でありますから、上記引用のエントリーに出てきましたABC予想におけるD=2と言う次元は、素数と合成数の関係が被覆次元が2と言う曲線と平面の関係にあると言うことができるのであります。(これはあくまでアナロジーでありますのでご注意を)

さて、この「被覆次元」でありますが、いったいこれの何が、今回の研究テーマに関係するのかと言えば、わかりません。(ズッコケ)

しかし、であります。

間違いなく、この「被覆次元」は、この宇宙の「ダークエネルギー」、すなわち、時間軸とは異なる次元に関係していると、KAIは考えているのであります。

私たちが、「因果律」と言う原理の支配から解き放たれて初めて、21世紀の物理学のイノベイションが始まる。KAIはかように夢想するのであります。 KAI