「メディア」の進化と本質(2)

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これも、シンクロニシティ。非常に重要な論考が掲載されましたので、ご紹介するのであります。

本稿は、新聞社や一部の Web メディアで動き始めている"コンテンツへの課金"モデルから、"ヒト(執筆者)への課金"モデルへのシフトを検討するものです。
そうはいっても、有料個人ブログやメルマガの手法を議論するものではありません。先に述べた「読者と執筆者の関係」を見直し、メディア企業が執筆者を前面に打ち出したメディアの有料化戦略を議論したいと思います。

もうひとつ、興味深い最近のトピックを紹介しておきましょう。
オランダの新興メディア企業が最近リリースしたニュースアプリ DNP は、資金難ですでに前年に閉鎖ずみのフリーペーパー新聞の編集長が、その執筆陣を引き連れサービスインに持ち込んだという興味深いニュースアプリです(ダウンロードサイト → こちら)。
同アプリは、"われわれが信じるのは人々やジャーナリストであり、それはメディアブランド以上のものだ"との信念の下に設計・デザインされています。特徴は、DNP に集まった寄稿執筆者らを、その執筆記事単体やパッケージとして選択的に購読できることです。アプリ上で目にした記事を購入することもできれば、執筆者を選択して購入に至ることもできます。

(中略)

スタート時点で執筆者らは11名。しかし、年内に50名にまでそれを増やしたいとの抱負を表明しています(参照 → こちら)。
同アプリがユニークな点は明らかでしょう。アプリは個々の執筆者とそのコンテンツを売るための場(市場)であると同時に、それ自体がメディアであるということです。執筆者らは App Store の販売手数料を差し引いた残余の75%を受け取ります。DNP 自体は無償 iOS アプリですが、コンテンツ単体もしくは執筆者のコンテンツ全体を購読する際に、Apple App Store が有するアプリ内課金の仕組みを用います。

(中略)

同氏は、この論で新聞メディア等が読者の関心事やニーズの違いなどにきめ細かい注意を払うことなく一律の課金の壁を設けることに反対します。
氏は、メディアや執筆者に対するこだわりのない読者に向けて単純に課金制限を設ければ、同じようなニュースを提供する無料メディアに向かわしてしまうとします。逆に、お気に入りの執筆者にこだわりがあるような読者に対して、そのお気に入り執筆者のコンテンツを購入するという切り口を設けるべきだと、氏は主張するのです。
そして、そのようなアプローチがビジネスとしてプラスに作用するようにするためには、ペイウォールが"引き算"ではなく"足し算"となるようにすべきと述べます。つまり、ニュース記事を読むことに単純に制限を設けるのではなく、"それに加えて"お気に入り執筆者との関わり、きずなを深めるような施策を設けて、それに課金をすべきだというのです。
"ヒトへの課金"に向かうメディア コンテンツ課金型ペイウォール批判

アプリは個々の執筆者とそのコンテンツを売るための場(市場)であると同時に、それ自体がメディアである

これは、KAIの前回指摘した「アプリケーションがメディアになる」と同じ主張であります。

しかも、「執筆者」への課金と言うかたちで、ヒト自体が「アプリケーション」となる可能性を示唆しているのであります。

まさにこれこそ、KAIがずっと以前から主張してきました、「貨幣価値からアプリケーション価値へ」と言う、時代の変革であります。

これでいいのであります。

毎日ブログを書き続ける。

もちろん中身はなんでもいいわけではありません。件のブログのような「定点観測」が基本であります。

ブログを書くあなた自身が、「観測」と言う「アプリケーション」になればいいだけなんであります。

先日のエントリーで取り上げた「キュレーター」も、まったく同じであります。あなた自身が「キュレーション」と言う「アプリケーション」になって、社会に「贈与」すればいいだけなんであります。
アプリケーション価値の時代を生きる(3)−−お金の発明を起点にして

ここで言う、メディアと言う「装置」は、「ブログ」でありますから、前回の議論のとおりの理由でもってそのままこれが「贈与」となるのであります。

一方、上記引用の記事の中の「DNP」アプリは、「執筆者」と言う「アプリケーション」と一体となって、有償アプリ、すなわち有償の「メディア」へと進化を遂げているのであります。

インターネット時代にあっては、ヒトも含めた「アプリケーション」化を図っていく以外には、「メディア」を有償化する方法はないと、KAIは考えるのであります。 KAI