「付加価値」補講

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ようやく少し時間にゆとりが持てるようになり、早稲田の理工学部で教鞭をとる親友の手伝いで、90分の講義をしたのであります。

テーマは「付加価値」。

ぴちぴちの若い学生相手にいろいろお話していると、90分はあっと言う間であります。言い残したことが多々ありましたので、ここで補足をしておくのであります。

まずは、簡単な復習から。

PQ=VQ+F+G
M=F+G
PQ=VQ+M
Q(損益分岐点)=F/(P?V)

(P:売上単価、Q:売上数量、V:変動費単価、PQ:売上、VQ:変動費、M:付加価値、F:固定費、G:利益)

この式の中の、Mが「付加価値」となるのでありますが、ここでPQ=VQ+Mの式を変形すると、M=PQ?VQとなるのであります。

すなわち、「付加価値」とは、モノの価値(売上)から、他所から仕入れた価値(変動費)を差し引いた価値のことであって、その内訳は固定費(研究開発費や人件費など)と利益からなるのであります(M=F+G)。

これを、さまざまな問題にどのように適用していけばいいかをご説明したのであります。

今回は、この応用問題の一つを、あらためてご説明するのであります。

それは、みなさん一人一人がこれから社会に出て、社会人として仕事をしていくうえでの、社会人としての「付加価値」とはいったいなんであるのか。これをこの公式を使ってご説明するのであります。

結論から申しあげると、こうなるのであります。

<仕事の価値> = <知識> + <技術・智恵> + <感動>

<付加価値> = <技術・智恵> + <感動>

PQ(売上)が<仕事の価値>になります。

VQ(変動費)が、仕入れである <知識>となります。

F(固定費)に相当するのが、<技術・智恵>であり、残った利益(G)となるのが<感動>となるのであります。

つまり、<知識>とは、大半のひとびとにとっては、教えてもらうと言うかたちで他所から手に入れた(仕入れた)ものであります。これに自分の<技術・智恵>を加えることによって、 <感動>と言う「利益」を生み出すと言うのが、みなさんにとっての<付加価値>であり<仕事の価値>となるのであります。

ですから大学で学ぶと言うことは、もちろんこの<知識>を得ることも重要ではありますが、この知識をいかに活かしていくかと言う <技術・智恵>を獲得することが、他のなにより最も大切なこととなるのであります。

そして <技術・智恵>とは、具体的には、世の中のモノゴトに対する「考え方」と言う自分なりの「方法」であります。

世の中には、ありとあらゆる「モノゴト」があります。これを一つ一つ個別に、異なる「考え方」として理解していたのでは、とても間に合いません。

そうではなく、あらゆるモノゴトに通用する、より一般化した「考え方」を学ぶと言うのが、大学における勉強の意味であります。

さて、ここまでが、今回のこのお話の前段であります。

これからこの「公式」を具体的にどう応用すればいいのか。これを、先日の講義で少し触れましたが、「金融緩和」の事例を使って、ご説明するのであります。

まず必要となる知識は、この二つだけであります。

実質金利 = 名目金利 − 予想インフレ率

実質金利 = 通貨価値

この<知識>に対して、必要となる<技術・智恵>が何であるかと言えば、「予想インフレ率」の操作、この一点に集約されると言うことが一目瞭然に導き出されるのであります。

つまり、日銀による「インフレ率」への「コミットメント」であります。

これが「実質金利」を下げることによって、「通貨価値」も下がる。すなわち「円安」が誘導され、最終的に「デフレ脱却」と言う「感動」を得るのであります。

もちろん、この「円安」は絶対値ではなく「傾向」であります。ですからこのままほっておくと長続きしない。これを「維持」すると言うのが「コミットメント」の意味でもあるのであります。

更には、「規制緩和」や「統治機構改革」など、一連の「構造改革」による「成長戦略」がこの「コミットメント」を担保することになると言うお話が、これに続いていくことになるのであります。

そこで、この記事をお読みいただきたいのであります。

日銀が2%のインフレを実現するためには、アメリカが4%のインフレになる必要があるが、FRBは2.5%のインフレ目標を掲げているのでそれは不可能だ。これは国際金融市場で実質金利の鞘取りが行なわれるためで、その結果はフィッシャー方程式

実質金利=名目金利?インフレ率

で説明できる。脇田成氏もいうように、世界の実質金利は均一化している。最近の世界各国の実質金利は0?1%の範囲なので、上の式で実質金利を1、日本の名目金利を0とすると、インフレ率は?1、つまり1%のデフレになる。名目金利(国内の資本収益率)が国際的な実質金利より低いため、意図せざる金融引き締めが起こってデフレになるのだ。
2%のインフレ目標は可能か

賢明なる学生諸君は、もうこの一部の記述を読んだだけで、記事の全部を読む必要がないことに気づくのであります。

そうです。「インフレ率」と「予想インフレ率」とは、まったく別物の概念なんであります。

これを、筆者は、一貫して混同して使用しているのであります。

あらためて冒頭の「一般公式」を引用するのであります。

<仕事の価値> = <知識> + <技術・智恵> + <感動>

<付加価値> = <技術・智恵> + <感動>

かように、この「公式」は有効に作用するのであります。

と言うことで、みなさん、正しい<知識>と<技術・智恵>を身につけて、立派な社会人になってください。ご清聴ありがとうございました。 KAI