知の爆発も、佳境に入ってまいりました。
なんと、NHKプライムタイム7時の、トップニュースであります。
このヒッグス粒子とは、前回レポートしました南部の「対称性の自発的な破れ」を、「質量」場に適用したものであります。宇宙の成り立ちに欠かせないものとして、半世紀近く前にその存在が予言されながら見つかっていなかった「ヒッグス粒子」とみられる素粒子を発見したと、日米欧などの国際的な研究グループが発表しました。
ヒッグス粒子は1960年代以降、物理学の標準理論で存在が予言された17の素粒子のうち、ただ1つ見つかっていなかったもので、現代物理学の大きな謎が解明されることになります。これは4日、日本、アメリカ、ヨーロッパなどの国際的な研究グループが、スイスや東京で記者会見を開いて発表したものです。
研究グループは4年前から、スイスのジュネーブ郊外にあるCERN=ヨーロッパ合同原子核研究機関の1周が27キロある巨大な「加速器」と呼ばれる実験装置を使って、ヒッグス粒子を探してきました。
実験では、2つの陽子を光と同じぐらいの速さまで加速して正面衝突させ、その際に生まれる無数の粒子を調べる手法でヒッグス粒子を探してきました。
これまでに2000兆回余りの衝突を起こさせた結果、およそ2000個の未知の粒子が発見され、その特徴を調べたところ、ヒッグス粒子とみられることが分かったということです。
ヒッグス粒子は、宇宙を構成するすべての物質に「質量」を与えるものとして、1964年に、イギリスの物理学者、ピーター・ヒッグス氏が存在を予言しました。
1960年代に確立された物理学の標準理論で存在が予言された17種類の素粒子のうち、ただ1つ見つかっていなかった素粒子で、発見に至れば、現代物理学の大きな謎が解明されることになります。
「ヒッグス粒子」は、もし存在しなければ、星や生命なども生まれないと考えられることから、「神の粒子」とも言われていて、宇宙の成り立ちを解明する重要な手がかりともなります。
(ヒッグスとみられる粒子発見)
このずいぶんむかしから「予言」されていた粒子の存在が、こんかいついに実験的に「証明」されたと言うことであります。
この結果、舞台はいよいよ、「ダークマター」、「暗黒物質」に移っていくのであります。
暗黒物質とは、「質量」はあるもののそれを「光学的」に直接観測することのできない物質であります。宇宙は、この暗黒物質が22%をも占めていて、あと既知の物質がたったの4%、残りがダークエネルギーで構成されていると考えられているのであります。標準理論の疑問点はウィークボゾン質量の起源だけではない。宇宙の大部分が暗黒物質と暗黒エネルギーからなることが知られている。暗黒物質が標準理論に現れる通常の物質であるとは非常に考えづらい。
(標準理論を越える理論)
この暗黒物質の有力候補である「超対称性粒子」ニュートラリーノを発見しようと言うのが、こちらのお話であります。
暗黒物質には、この宇宙全体の22%の「質量」を説明するだけの、自分自身巨大「質量」を持っている必要があるわけでありまして、この「質量」が陽子の30〜5000倍と言う「超対称性粒子」ニュートラリーノは、暗黒物質候補として最適だと言うことであります。NHKの番組クローズアップ現代で、いまごろなぜか「ダークマター」が話題に。
このXMASS(エックスマス)実験は、小柴昌俊がノーベル賞を受賞する舞台となった、世界で初めてニュートリノを検出した実験施設カミオカンデと同じ岐阜県神岡鉱山のなかで準備が進められている実験であります。既存実験の100倍の検出感度
ダークマター直接探索実験は世界中で行われており、激しい国際競争の中にあります。図6はダークマター探索実験の感度をダークマターの質量を横軸、ダークマターと核子の反応率を縦軸として示したものです。青と緑の線は既存の実験による検出感度、黄色い丸は特に可能性が高いと考えられている部分です。XMASS実験では、既存のダークマター探索実験の100倍の感度を持ち、いち早く超対称理論で予想されるパラメータ領域(グレーの領域)に大きく踏み込み、直接探索によってダークマターを発見する可能性が大きいと考えられています。
(XMASS(エックスマス)実験)
そしてこれが準備が整いいよいよ10月から実験開始、開始早々「ダークマター発見」の期待が大きくふくらむのであります。
(中略)
このうち、今回のXMASS実験のターゲットが、仮説上の素粒子の中の超対称性粒子である「ニュートラリーノ」。このニュートラリーノ、なんと予測されている質量が、陽子の質量の30〜5000倍。幅があるとは言え、素粒子でこの規模はいままでの常識をはるかに超えるレベルなのであります。
(ダークマターから意識の世界が見えてきた、September 15, 2010)
ちなみに、「超対称性粒子」とは、ボゾンとフェルミオンを入れ替えると言うスピン対称性を持つ粒子でありますが、詳細は割愛して、ダークマターの続きであります。
暗黒物質は、「光学的」に直接観測できないけれども、「間接的」には観測ができるのであります。IPMUと名古屋大学のメンバーよりなる日本の研究チームは高精度の大規模数値シミュレーションを用いて、観測された質量分布がいくつかの成分の足し合わせで説明できると突き止めました。その結果、銀河の質量分布には有限な境界があるのではなく、分布の裾野はゆるやかに無限に広がっており、十分遠方では隣の銀河の裾野と重ね合わさっていることが分かりました。これは、銀河の光を出す成分、すなわち星の分布が有限の範囲にあるのと対照的です。さらに詳細な計算からは、銀河の外苑部に広がる暗黒物質質量は銀河の全質量のちょうど半分に達することも分かりました。この新たな知見により、宇宙の物質の半分がどこにあるのかという謎が解決された事になります。
(宇宙を満たす暗黒物質 〜暗黒物質は銀河間空間にも広がっていた〜、January 25, 2012)
それは、「重力レンズ効果」と言われる、質量(暗黒物質)によって光が曲がる現象を利用するものであります。
なんとこの研究によれば、銀河周辺の「質量」分布が、銀河と銀河の間に境目がなく、銀河同士「質量」のすそ野が重なっているとのことであります。
私たちが、直接目で見ることができる宇宙の姿とは、似ても似つかぬ姿が、実は本当の宇宙の姿だったとは、まったくもって驚愕するばかりであります。
そしてこれは、泡宇宙論とも直接的に関係すると思うのでありますが、この考察は、また次回に。
と言うわけで、本日はこれにてお仕舞い。 KAI