村井愛子氏が、なかなか興味深い記事を書いておられるのであります。
「インサイト」とは、「正統性」思想から申しあげるならば、「内省」であります。インサイトについては「ビジネス・インサイト」という必読の書がありますが、こちらのサイトに内容が分かりやすく要約されています。
要は“対象となる顧客に内在化し、いくつかの断片的な事実あるいは断片的な理論から、「意味ある全体像」を描き出す”ことです。リンク先では、本の中でも主題として語られるポランニーの暗黙知を用いて説明しています。
(中略)
ではインサイトの場合はどうするのか。対象物に内在化するので、徹底的に若年層の気持ちになるのです。若年層が興味がある物を見て、使っている物を使う。私の知り合いのマーケターの方は、若者に1日動向させてもらって普通に過ごしてもらう(その間一切質問はしない)ということをしていました。その内在化しているプロセスの中で、ふとひらめいきが生まれて、様々な事象が繋がり、新しいフレームワークが生まれる瞬間がやってくるのです。
(インサイトとの重要性〜上からのビジネス、下からのビジネス〜)
ここで「内省」について、少々ご説明するのでありますけれども、この言葉に対する世間のみなさまの一般的理解は、むしろこちらであります。
しかしながらであります。KAIの主張するところであります「正統性」思想においては、この「内省」もそうですが、「大気」や「気分」といった言葉は、きわめて広い範囲に適用する概念なんであります。今回は、昨年末からカヤックで局所的にはやっている「リフレクション
というキーワードについて書いてみたいと思います。リフレクションは日本語では「内省」などと訳されます。内省は、簡単に言うなら自分の考えや行動などを深くかえりみることです。それは人間として、あるいは仕事をしていく上で、成長するために欠かせないものです。自分の感情が動いたとき(喜怒哀楽)、なぜそのように感情が動いたのかを逃げずに見つめることで、自分という人間への理解が進み、成長が促進されるからです。
(カヤック社内でブームの「リフレクション会議」とは〜素晴らしい体験も内省によって価値が高まるんです)
ですので、この「内省」は、「自分自身の問題」、「当事者意識」、「内なるものと外なるもの」、「内在性と外在性」、「予知能力」といった、「正統性」思想における重要な概念であるこれらの言葉すべてと直接的に繋がっているのであります。
さて、このお話が、標題にある「欧州危機問題」といかなるつながりがあるのか。これが今回の問題であります。
緊縮財政問題(つまり反緊縮)が、ようやくギリシャの国民にとって、「内在化」した瞬間であります。【ベルリン=宮下日出男】総選挙後の混乱が続くギリシャで、パプリアス大統領は15日、組閣に向けた最後の調停のため主要政党の党首らと会談したが、物別れに終わった。会談後、大統領報道官は再選挙実施が確定したと述べた。総選挙後9日間続けられた政権樹立への試みが失敗した。再選挙は6月17日に行われる見通しだ。
再選挙では、反緊縮派の第2党、急進左派連合が第1党に躍り出る可能性が高い。再選挙までの政治空白や同党主導の政権樹立は、ギリシャの「ユーロ離脱」に対する懸念を一層高め、欧州債務危機の一段の深刻化を招く恐れが強い。
(ギリシャ再選挙へ 大統領の調停失敗 組閣を断念、2012.5.15 23:15)
そして、これはギリシャ以外の、特にドイツやフランスの国民にとっても、今後を占う重要な契機となる「事件」となっていくのであります。
これを理解するのにヒントとなるのが、この広瀬隆雄氏の記事であります。
すなわち、いままでドイツやフランスの国民にとって、「緊縮財政」は「ひとごと」であった。もちろん自国における緊縮財政は、「ひとごと」ではないものの、これとギリシャに求められている「緊縮財政」とは、決して「一つのもの」としての「自分自身の問題」とはなりえなかったのであります。欧州財政危機問題に関して、ヨーロッパのリーダー達に、コペルニクス的な発想の転換が、今、起きています。
その結果、デカい事が発表される可能性があります。それらは:
です。1.欧州中央銀行(ECB)による利下げ、ならびにLTRO3
2.欧州安定化債の発行
3.ドイツ労組の賃上げ
(ヨーロッパのリーダー達にコペルニクス的な発想の転換が、今、起こっている、2012年05月15日 01:07)
これが、今回のギリシャの「再選挙」確定で、一瞬にして切り替わったのであります。
まるで、太陽の極磁場反転と同じであります。
つまり、いまや、ドイツ国民もフランス国民も、一夜にして、「反緊縮」が「自分自身の問題」と化したのであります。
村井愛子氏が書くところの「新しいフレームワークが生まれる瞬間」であります。
ここでご注意いただきたいのは、今回のギリシャの再選挙が、ユーロ圏からの離脱の国民投票となるとの「見解」の「間違い」であります。
なにもギリシャ国民は、ユーロ圏からの「離脱」など望んではおらず、彼らの気持ちは「反緊縮」の一点にあるのであります。
そして、これがフランスの国民、ドイツの国民に、一瞬にして「伝播」したと言うのが、今回の「事件」の「真実」であります。
たびかさなる「緊縮」をいくらくりかえしてみても、ドイツ以外どの国の税収も改善しない以上、「緊縮」ではなく「経済成長」しかないよね、と言うコンセンサスが、瞬時に「形成」されたのであります。このメカニズムこそ、欧州各国国民の「インサイト」が機能した瞬間であったのであります。
ですから、これからユーロ圏でなにが起こっていくかと申しあげますならば、広瀬隆雄氏ご指摘のとおり、ドイツの大幅な妥協であり、ユーロ圏全体のインフレ率へのコミットと言う「メッセージ」の発信であります。
これが、「正統性」思想的、欧州危機問題の今後の見通しであります。 KAI