偉大なる選手が、チームを狂わす(狂わしていた)

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偉大なる選手とは、イチローであります。

彼が1番から3番に変わったことで、マリナーズは変身したのであります。

イチロー(マリナーズ) 2012年打撃成績

まだ、公式戦4戦目(4/7現在)にしてでの判断ではありますが、彼の打順を1番から3番に変えたのは、大正解であったようであります。

もちろん、これが、昨シーズン連続200本安打の大記録が途切れた、その結果であることは言うまでもないのであります。

イチローが、この連続200本安打の記録更新中は、監督と言えども彼の打順を変えることに躊躇したのであります。この結果の、マリナーズの不振があった。

これは、要するに、一見「部分最適」と「全体最適」の問題であるかのように見えるのであります。

1番と言う打順は、イチローと言う「部分」にとって「最適」であっても、チームと言う「全体」ではそうではなかったってことであります。

しかし、であります。はたして、それは本当であったのでありましょうか。

そもそも打順が1番と3番とは、いったい何が違うのでありましょうか?

これが、確かに連続安打記録更新中は、1番と言うのが直接的に「打席数」を最大化する、すなわち200本を超える確率を最大化するかのように思えるのでありますが、そもそもにおいて、これは本当なんでありましょうか。

ここで視点をピッチャーにうつして考えると、まったく違って見えてくるのであります。

それは、ゲーム開始直後の1番目の打者は、ランナーがいない分、ピッチャーは打者に集中することができるのであります。

このピッチャーからヒットを打つ力があるから、イチローは10年以上1番を維持してきたとも言えるのでありますが、もしこれが3番だったらどうなるか。

ピッチャーにとって、この時常にランナーがいる可能性がありますから、明らかに1番打者より神経を使う必要があるのであります。その点においてバッター有利となるのは明らかなんであります。

しかもであります。1番打者の前で打つのは8番9番のバッターであります。彼らの打率は相対的に低い。であるからして、ランナーがいる確率も低くなるのであります。これに対して、3番は確実にランナーがいる確率は上がるのであります。

このことから言えるのは、イチロークラスになれば、実は3番であったほうがヒットを打てる確率は上がると言えるのであります。

現に、昨年開幕直後のイチローの成績をみると、こうであります。

イチロー(マリナーズ) 2011年打撃成績

確かに最初、絶好調のように見えて、これが急激に打率を下げていくのであります。

これに対する、今シーズン。まだこれからどうなるかはわかりませんが、肝心の打席数と安打数。4試合で、昨年打席19、安打6、今年打席19、安打6。

打席数は減ってはいないしこれでヒット数も同じで、チームは3勝。イチローにとって1番も3番もかわりはないと言うのは、今回のこの「考察」の確かな証拠とまでは言えないものの、いまのところこれはチームにとって「成功」と言えるのであります。

つまり、過去11年間のイチローにとって、打順の1番とは、決して「部分最適」でもなんでもなかったと言うことであり、結果的に「全体最適」化をなんと11年間も放置することになったのであります。

ここに、「思い込み」の怖ろしさを、まざまざと見る思いがするのであります。 KAI

(追記)3番のメリットは実は他にもある。ピッチャーが3番バッターに神経を使う分だけ、4番バッターがより有利になり、これが5番にもつながるのです。つまりチーム打率があがる効果であります。