小沢有罪確定(2)

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先月書きました、「小沢有罪確定」のエントリーにコメントをいただきましたので、あらためて新しいエントリーにしてご説明するのであります。

>この調書採用の意味はとてつもなく大きい。それは他の調書の大半が不採用となった中での、採用だからであります。つまり、供述の信用性に疑いをさしはさむ余地なしとされたわけであります。

刑事訴訟法第317条には、「事実の認定は、証拠による」旨の明文規定がある。(証拠裁判主義)

すなわち、厳格な証明の対象となる事実については、「証拠能力」を備えた証拠について 、法定の証拠調べ手続を踏まなければならないとされる。

証拠申請で提出される証拠には、証拠には証拠能力《刑事訴訟法319条》と、証明力《刑事訴訟法318条》があります。

これは、《刑事訴訟法319条》に定める裁判要件逸脱の、任意性の無い、又は違法手段で収集された証拠能力の無い違法証拠を除外したということであって、「証明力」とは違います。

残った証拠が信用されたわけではない。ここが間違いです。

法に照らして違法証拠を書類審査で選別したということで、それを信用するかどうかはまったく別問題なのです。(重要!!)

小沢氏側に不利な証拠とされるものは殆どが「証拠能力」の「書類審査」(刑事訴訟法319条〉段階でふるい落とされたということです。

今、「水戸黄門のインロウ」は小沢氏側に移ったといえるのではないでしょうか。

今のところ大善文男裁判官に対しては、「平成の児島惟謙」として後世の評価に耐えうる判断をしているとの評価がある。

小沢弁護団は、2月17日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し「元代表を有罪とする証拠はほとんど消えた。無罪獲得に向け、証拠を精査したい」と述べた。
Posted by: EXcite : March 5, 2012 01:22 PM

確かに、おっしゃるように「証拠能力」と「証明力」は別ものであります。

証拠能力と証明力

ある人・物を、訴訟において証拠方法として用いることのできる資格を、証拠能力(しょうこのうりょく)という。すなわち、証拠能力のない人、物、書面等については、これを取り調べて事実認定のために用いることはできない。

一方、ある証拠資料が、証明すべき事実の認定に実際に役立つ程度を、証明力(しょうめいりょく)、証拠力、証拠価値という。例えば、証拠能力のある書面を取り調べて証拠資料が得られたとしても、その内容が信用できなかったり、証明すべき事実とあまり関係がなかったりする場合には、事実認定には役に立たないから、証明力が低いことになる。
証拠、Wikipedia

ところが、これを読んでもよくわかるように、「その内容が信用できなかったり、証明すべき事実とあまり関係がなかったりする場合」に「証明力」が低いとなるだけで、「その内容が信用できる」場合は、当然、「証明力」が「高い」と認定されるわけであります。

その前提で、先の公判の裁判長の発言を今一度お読みいただきたいのであります。

「任意性には疑いがなく、特信性を肯定すべきものと認められる」

この「特信性」と言う法律用語がポイントとなるのであります。

「特信性」とは、公判での証言と調書の内容に食い違いがある場合、調書が公判証言より信用できることを言うのでありまして、「特信性を肯定すべきもの」と言うことは、調書の内容を否定する証人の公判証言ではなく、調書の中に記述されている証人の「供述内容が信用できる」と、裁判長は決定づけたと言うことであります。

もちろん、この池田の供述の内容そのものが、被告関与の「証明力」を有するものかどうかの議論の余地はなくもないでしょうが、収支報告書の記載について池田と小沢の間で直接的な会話があったとする、そう言う池田の供述でありますから、小沢が「池田との間で直接的な会話は一切記憶にない」との法廷での「証言」を真っ向から否定する「証明力」のある証拠となるのは、まったくもって否定することのできない、事実であります。

このことからして、裁判官が、小沢の公判での「証言」に対して、その信用性に疑いの心証を持って、判決にのぞむことになるのは、これまた逃れようのない事実なのであります。 KAI