それは、2011年10月17日、英国はロンドン「ロイヤル・アルバート・ホール」で始まった。
こうして世界24カ国で発売されたこのアルバム、あれよあれよと言う間に、世界中で驚異的大ヒットをとばしているのであります。2011年10月17日、ロンドン「ロイヤル・アルバート・ホール」でアメリカ・オレゴン州のジャズ・オーケストラ「ピンク・マルティーニ」とのコンサートを大盛況のうちに終了させた“由紀さおり”。
この日、「BBCコンサート・オーケストラ」も迎えての大舞台披露した「夜明けのスキャット」、「ブルー・ライト・ヨコハマ」、「さらば夏の日」、「夕月」、「マシュケナダ」を収録したアルバム『1969』は、由紀が「夜明けのスキャット」でデビューした1969年の世界のヒット曲を集めたコラボレーション・アルバム。ピンク・マルティーニが由紀さおりという日本のシンガーと組んだという話題性、由紀の美しい日本語の歌唱と独特のアレンジのコラボレーションが話題となり、急きょ海外での発売が決定しました。
(快挙!由紀さおり&ピンク・マルティーニ『1969』、日本の歌謡曲でiTunes全米ジャズチャートで1位獲得!!)
いま、なぜ由紀さおりかといぶかしがるむきもおありでしょうが、これはきわめてなっとくのいく合理的現象なんであります。ピンク・マルティーニとの共演は、リーダーのトーマス・ローダーデール(40)が10年以上前に由紀のファーストアルバム「夜明けのスキャット」を中古レコード店で見つけ、ジャケット写真にほれ込んで購入したことがきっかけ。「高音も低音も美しい」と透明感ある歌声に魅了されたという。美声と同楽団の世界的知名度もあって海外から大ヒット。米iTunesジャズチャート1位(2日付)をはじめ、カナダの同ワールドミュージックチャート1位など各国のランキングで軒並み上位にランクイン。63年に発売した故坂本九さんの「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」が米ビルボードで1位を記録して以来の日本語作品の世界的ヒットとなっている。
(由紀さおり 40年ぶり&史上最年長トップ10入り).
すなわちこれをひとことで言えば、「倍音効果」であります。
「倍音効果」の秘密は、すでにここでご説明済みでありますが、これをそのまま再掲するのであります。
続いて、ネズミ繋がりで、こちらのお話。やっぱり村上和雄は、いいなあ。日経ビジネス最新号(2006.1.9)にこんな記事(p.1)が。
きっかけは、2004年の秋にダライ・ラマの元で開かれた科学者と宗教家の対話の席でした。俳優のリチャード・ギア氏などもいたその場で、ある研究者から「ネズミが笑うって知っていますか」と聞かれました。名前をつけてあげて、おなかをくすぐったりすると、50キロヘルツの音を出す。どうやらそれが「笑い」らしい、というのです。ようやく、6匹のうち1匹を笑わせることができるところまできました。村上和雄が、パスツール研究所と競って、何万頭もの牛の脳髄を使ってレニンの遺伝子解析に勝利を収めた、そのかつてのレニンの遺伝子を、ネズミに入れた結果、ネズミを笑かすことに成功したようです。(モルモットとして笑うのもなんだかなあですが^^;)
こうして、一つ一つ、人の心の仕組みが解き明かされていくことは、筆者にとって40年来のユメが、かなえられます。
ところで、この文章の中の50キロヘルツの音を出す。どうやらそれが「笑い」らしいと言う記述が気になって、50キロヘルツをキーワードにしてググってみました。残念ながら50キロヘルツの音が笑いであるとの説明は見つけられませんでしたが、思わぬ収穫が。
和田雄志さんという方(どうやら未来工学研究所のセンター長の方のようです)の謡の声の正体-犬と謡に関する考察-と言う文章を発見。
次は花筐、シテの私がかなり高い調子で謡い始めた。そうすると、くだんのワンちゃん再び登場、そして、謡っている私の周りを興味深そうにクン々々とかぎまわるではないか?私の謡は、犬にも評価されるほど素晴らしかったのだろうか? どうも違うようだ。いくら飼い主が謡好きとはいえ、まさかね。
一般的に人間の耳に聞こえる音の周波数は20ヘルツから20キロヘルツの範囲。人が声として出せる範囲は、64ヘルツから1024ヘルツまでの4オクターブ。もっとも、普通の人は2オクターブがせいぜいとか。
一方、犬は50キロヘルツまで音として感知できる。犬笛というのがあるが、あれは人間には聞こえないくらい高い周波数で犬を呼ぶ。
それでは、私は犬が感知できる高い声を出していたのだろうか?しかし、どう考えてもそんな高い声は出していなかった、ような気がする。甲グリを謡う場面でもなかった。犬に好かれるようなフェロモンを出していたとも思いたくない。ネズミの笑い声は犬には聞こえると言うことでしょうか。
和田さんは論を進めて、
観世能楽堂の正面席で、能の地謡を聞いていた時である。低い地謡の声に混じって、ときどき、子供または若い女性がハイトーンで謡っている声のようなものが、どこからともなく聞こえてくるではないか。この経験は、一度だけではない。(中略)
先日、新聞の書評欄を見ていたら、変わった書名が目に入ってきた。「日本人の鳴き声」という本だ。鳴き声? 鳥の鳴きまねをする日本人の話だろうか。副題には、「声というメディアの快感」とある。
このところ、謡と犬の関係、能楽堂で聞こえる不思議な高音が気になっていたので、早速、近くの図書館から借りてきた。
著者は、中野純という人で一橋大学社会学部を出たあと、音楽プロデュースなどを手がけている。
(中略)
著者は指摘する。「日本の伝統声楽はすべてホーミーである。」すなわち倍音が豊かに含まれているという。
お経、謡曲、平曲、義太夫、長唄、浪花節など、すべては倍音唱法で歌われている。つまり、ひとつの声に、複数の倍音が豊かに含まれているのである。
冒頭のワンちゃんが私の謡に惹かれて来たのも、実は、私の謡の倍音に感応したのでした。能楽堂の地謡のときに聞こえた不思議な声も、地謡と能舞台構造が生み出した倍音だったようです。デジタル処理された音と、この生の音との違いは、このヒトには聴こえない倍音です。ヒトが聴く音には無意識下で聴く音域が存在していることは、有名な話です。つまり犬だけではなくヒトも、この50キロヘルツの音に無意識に反応しているはずだと言うことです。
もし、ヒトの笑いの中に、この倍音としての50キロヘルツの音があるとすれば、実はこれが笑いの効用の本質ではないかと言う、そう言う気がしてきました。個体間の遺伝子同士のコミュニケーションツールが、50キロヘルツの音であり、笑いと言うことです。
なんだか、KAIは、怖ろしい世界まで踏み込んでしまったのでしょうか。 KAI
(ネズミを笑かすと犬もよろこぶのか?)
この昔話から得られるお話のポイントは、「疑心暗鬼」。ユーロ経済圏を震源とする、世界的経済危機。いまや互いに誰も信用できなくなりつつあるのであります。1284年、ハーメルンに「鼠捕り」を名乗る色とりどりの布で作った衣装をまとった男がやって来て、報酬と引き換えに街を荒らしまわるネズミの駆除を持ち掛けた。ハーメルンの人々は男に退治の報酬を約束した。すると男は笛を取り、笛の音でネズミの群れを惹き付けると、ヴェーザー川におびき寄せ、ネズミを残さず溺死させた。ネズミ退治が成功したにもかかわらず、ハーメルンの人々は約束を破り、笛吹き男への報酬を出し渋った。
怒った笛吹き男はハーメルンの街を後にしたが、6月26日の朝(一説によれば昼間)に再び戻って来た。住民が教会にいる間に、笛吹き男は再び笛を吹き鳴らし、ハーメルンの子供達を街から連れ去った。130人の少年少女が笛吹き男の後に続き、洞窟の中に誘い入れられた。そして、洞窟は内側から封印され、笛吹き男も洞窟に入った子供達も二度と戻って来なかった。物語の異説によっては、足が不自由なため他の子供達よりも遅れた2人の子供、あるいは盲目と聾唖の2人の子供だけが残されたと伝えられている。
なお、ハーメルンの新門にあるラテン語の碑文には、この笛吹き男の正体はマグス(魔法使い)であったと刻まれている。
(ハーメルンの笛吹き男、Wikipedia)
この世界的不安心理と、由紀さおりの50キロヘルツの倍音が、みごとなまでに共鳴したのであります。
そのメカニズムこそ、「個体間の遺伝子同士のコミュニケーション」を実現する「倍音効果」にあったのであります。
これもまたシンクロニシティ。ユーロ経済危機の渦中に隣接するロンドンに端を発して、世界中の人々の心と心が、この由紀さおりの声で繋がった。
ハーメルンの笛吹き男は、笛の音でネズミも子どももすべて街から連れ去ってしまったけれど、はてさて由紀さおりの歌声は、疑心暗鬼にゆれる人々をいったいどこに連れて行くのでありましょうか? KAI