まことに腹立たしい限りでありますが、村木元局長の国家賠償訴訟で国側は、約3770万円の請求を認諾したと言う。
この記事を書いた北村氏が抱く疑問はもっともでありますが、これを冤罪問題ではなく役所の組織防衛問題とみなすと、きわめて納得のいく顛末なんであります。冤罪被害者にとって、国家賠償の金額の多寡は2次的な問題であるかもしれないが、164日の不当勾留で3770万円に対し、6395日の刑務所暮らしの賠償金が8000万円では、余りにも差が有りすぎる。年金も当てにできない菅谷さんと今後の活躍が期待される村木さんとの差を考えると尚更である。
(「法の下での平等」は何処に?−冤罪事件の国家賠償と、琴光喜事件判決での疑問)
すなわち、村木裁判とは村木個人の裁判のようでいてそうではなく、実質が厚労省と言う組織相手の裁判であったと言うことであります。ですからこれは役所同士の戦いであったわけであり、つまり国という内輪の中の揉め事に負けた側の手打ち金と、3770万円は評価するべきものなんであります。
そもそもにおいて、これが冤罪事件ということ自体がきわめて疑わしいのであります。
供述を翻して単独犯行と主張する上村元係長の裁判。この結果について、ネットを検索してもどこにも出てこないのが不思議であります。すなわち今回は、弁護側のシナリオ通りの判決であり、そのシナリオとは、公判における検察の挙証根拠となる供述調書の全面否定による無罪獲得であります。
しかし、公判で翻した係長の証言どおり、係長の単独犯行とすれば、係長と凛の会の直接の接点が示されなければならないし、たとえ接点があったとしても係長にとって公文書偽造は間違いなくクビがとぶ重大犯罪。しかも生涯を保証された中央官庁の係長と言う一公務員が、この程度の接点で自分の人生を棒に振るようなリスクをとったとはまったくもって考えられないのであります。
ゆえに、事実は検察側が描いた「絵」のとおりであると、KAIは思うのであります。
これは、この事件のできごとを時系列にならべたものですが、今回の弁護側のシナリオは、2009年2月の広告会社社長逮捕直後に練られたものに違いありません。(障害者団体向け割引郵便制度悪用事件、Wikipedia)
- 2009年2月 - 大阪地検特捜部が、広告会社の社長らを逮捕。
- 2009年4月 - 大阪地検特捜部が、大手家電量販店など広告主や凛の会の関係者を逮捕。
- 2009年5月 - 大阪地検特捜部が、厚生労働省元係長、郵便事業株式会社関係者を逮捕。
- 2009年6月14日 - 大阪地検特捜部が、村木厚子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(不正当時社会・援護局障害保健福祉部企画課長)を逮捕。
- 2010年9月10日 - 村木に無罪判決。
このままいけば、凛の会、石井一、厚労省元部長、村木、係長すべてが手繰り寄せられる。そこで出た結論は、係長の単独犯行。例の押尾の「お前の面倒は一生おれがみる」であります。初犯ですから当然執行猶予。厚労省のいきのかかった組織で面倒見ればいいだけです。村木もともだおれなら、これができなくなるわけであります。
そこで打たれた手は二点だけ。
まず一点目。係長が逮捕されたとき、弁護士から「被疑者ノート」を差し入れるので、これに取り調べの内容を毎日記述する。そして最後に必ず「調書は作文」と入れること。これによって、公判で供述調書否認の根拠となる。
二点目。凛の会元秘書が石井一に接触した日付を、石井一のアリバイのある日に変更する。元秘書のスケジュールの記録なんて自由に改ざんできる。
この二点において、見事村木の上と下の接点が切れるのであります。
それにしても、検察は甘いと言わざるを得ません。
最初から組織防衛のため、係長が供述を翻すなんて、簡単に予想できたこと。石井一だって、はいそうですかなんて素直に認めるわけがない。
(甘い検察)
このことも含めて、この元係長の今を、どこかの週刊誌がスクープすれば、事の真相はたちどころに明らかになるのであります。
おまけ。こんなページもありました。
みなさん思うところは一緒であります。 KAI