KAIはこういった記事を読むと、心が救われる思いがするのであります。
石川が主張するとおりの記載であるならば、4億円(A)の金の流れはこうなる。(3)以上は「4億円」の借入についての被告人石川氏と被告人池田氏の弁明です。
両者の言い分は同じではありません。
むしろ矛盾しています。小沢氏から借入れた「4億円」は2004年分政治資金収支報告書に記載していると主張しているのが被告人石川氏で、当該「4億円」は「預り金」にすぎないから報告義務はないから、その返済を2007年分政治資金収支報告書に記載しなかったと主張しているのが被告人池田氏なのです。
被告人石川氏の弁明が真実で妥当だとなると、被告人池田氏は政治資金規正法上の不記載の罪に問われることになります。
他方、被告人池田氏の弁明が妥当だとなると、被告人石川氏は虚偽記載の罪に問われることになります。私は、この時点で、どちらかが有罪になると簡単に予想できたのです(それでも両者が無罪になる論理はありますが)。
(4)では、どちらの主張が妥当なのでしょうか?
まず、被告人石川氏の弁明は通用するのでしょうか?
その弁明は他の事実に矛盾します。
というのは、被告人石川氏は転借りした「4億円」を記載していないことを認めていますが、にもかかわらず、転借りした「4億円」は、検察の冒頭陳述で説明されているように2005年と2006年に2億円ずつ小沢氏を介して銀行に返還されており、2005年分と2006年分の政治資金収支報告書に返還の記載がなされているからです(当初の小沢氏から借入れた「4億円」が返還されたのは2007年です)。
借り入れのとき記載しなかった「4億円」について、返還では報告するのは、矛盾しています。
そうすると、2004年分の政治資金収支報告書に記載されている小沢氏からの4億円の借入は、検察側の主張するように銀行からの転借り分の「4億円」だという方が辻褄があいますので、当初小沢氏から借入れた「4億円」は記載されていないというのが、真実でしょう。
すでに紹介した被告人池田氏の陳述が被告人石川氏の弁明の嘘を暴いていることになります。
被告人石川氏は、小沢氏からの4億円の借入を報告していないことを自覚していたから、当初は罪を認めていたのでしょう。
(5)では、被告人池田氏の「預り金」の主張は通用するのでしょうか?
2004年10月に、小沢氏を介して銀行から「4億円」借り入れできたので、当初の小沢氏から借入れた「4億円」をすぐに返済したというのであれば、「預り金」の主張は理解できないわけではありません。
しかし、2004年に借入れた「4億円」もの大金を2007年に返還して、それでも「預り金」だと主張するのは、通用しませんし、通用させてはいけません。
すぐに返済しなかったのは、本件4億円がなければ陸山会の資金運営に支障が生じたからでしょう。
それなのに「預り金」という弁明が許されるのであれば、政治資金規正法は遵守しなくてもいい法律だ、ということになってしまいます。同法は真実の収支を報告させ、それを国民の不断の監視と批判に委ねているからです。
記載されなければ国民は適正な判断ができません。
(「陸山会」裁判の東京地裁判決について(3):土地取得をめぐる事件)
■4億円(小沢→陸山会→銀行)・・・(A)
4億円(陸山会→銀行)の部分は、客観的証拠の残る否定しようのない事実でありますから、4億円(小沢→陸山会)がウソの供述で、実際は4億円(銀行→陸山会)であったわけであります。
要するに池田が不記載とした4億円(B)と合わせた8億円の金の、真実の流れはこうだった。
■4億円(銀行→陸山会→銀行)・・・(A)
■4億円(小沢→陸山会→小沢)・・・(B)
では、石川はなぜ(A)の4億円を銀行からではなく小沢からの借入と主張する必要があったのでしょうか。
それは、銀行からの借入が(B)の4億円隠蔽のための偽装工作との検察主張に対して、隠蔽していません、ちゃんと記載しています、と主張するためでありましたが、これを銀行に実際にも返済して「墓穴」をほるにいたるのであります。
では、銀行からの借入を記載したと主張していたとすれば、どうなっていたか。
池田の主張するとおり、「預り金」と言うしかなかったわけでありますが、土地代金の支払が銀行からの借入金ではなくこの小沢からの4億円で実際に行われており、この支払でもって「預り金」に仕訳することは不可能であったわけであります。
かように、8億円もの巨額の金の流れがここまで明るみに出て、さて小沢裁判はいかなる弁明が可能なのでありましょうか。
元秘書による虚偽記載及び不記載への、小沢の関与。
この8億円のお金の出入れ自体に、すべて小沢自身が直接関わっている。最初の4億円も小沢自身が手渡しており、これを受け取った陸山会によるとする土地取引にも自身が署名している。銀行借入も小沢自身が行い、この返済にも利息の支払にも直接自身が関わる。
最初の4億円の、2007年小沢への返済も、当然のように現金で懐に入れているのであります。
これらすべてを政治資金収支報告書にいかなる記載あるいは不記載とするのかは、すべて元秘書の裁量範囲とするには、あまりにも無理筋なんであります。
それにしてもであります。
裁判の判決文に1行も目を通したわけでもないKAIが、こうまで小沢裁判の帰趨を見通せるのも、上掲のブログ記事のおかげであります。
これがブログのない時代には到底ありえないことであり、いまこれがありえていることが、とてつもないことと理解する必要があるのであります。
このことの本質は、もう少し別のところにあるのでありますが、これはまた次回に書くとするのであります。 KAI