希望は思わぬ処からやってくる(5)

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いったいこれは、なぜなのか。

フランスにあるエビアンマスターズGCで開催されている米国女子ツアー第13戦「エビアンマスターズ」の最終日、2位に2打差の単独首位からスタートした宮里藍が、4バーディ2ボギーの「70」で回って通算15アンダーとし、2位に2打差をつけて逃げ切り優勝。今季初勝利で米ツアー通算7勝目。今大会は09年に続いて2度目の優勝を飾った。
宮里藍が今季初優勝!「日本に良いニュースを届けられた」

ついさきほど届いたばかりの「良いニュース」でありますが、もちろんこれは、丁度1週間前のなでしこジャパンの金メダルが、直接的にこの結果に作用しているのは、まず間違いないのであります。

この「彼女たち」の中で、何が起こっているのか。

実は、この2日前から、こんなエントリーの下書きを書き始めていたんであります。

平次が首が痒いって首を掻く

ほんと、生命の意味を、つくづく思い知らされる毎日であります。

圧巻は、夫に悪態しかつけない老婆に抗しきれず、老牛を市場に売りに行く場面。こんな老いぼれ牛ではと買いたたかれ、なら売らないと啖呵を切る老人。そばでそれを見る老牛の頭部を、カメラがズームアップする。とすると、牛の眼に涙がきらりと光っているではありませんか。
希望は思わぬ処からやってくる(2)

これはテレビの中の、しかもドキュメンタリー映画の中の映像でありましたが、この平次はわが家の愛亀であります。その平次を何気なく見ていたときであります。

突然、いつもと違う動きをするのでよく見ると、台石に上半身をあずけながら左前足で大きく伸ばした自分の首を一生懸命掻くしぐさをしているではありませんか。

いや、こんな光景、平次と暮らして24年、初めて目撃したのであります。

毎朝、こちらが朝ごはんを終えるころから、小さな水槽の中で、なにかあったかと思うほど大きな音を立て、さかんに動き回りだすのであります。

「自分のゴハン、忘れんでね!」

「ハイ、ハイ、わかってますよ!」

思えば、この会話を何千回、毎朝毎朝繰り返してきたことでありましょうか。

しかし、この繰り返しこそが、生命の本質なんであります。

台風以降一挙に気温が下がって、エアコンを「ドライ」にしたまま運転中の影響と思われるけれど、背中が痒くてしかたがない。なんども平次のいる横で、孫の手で背中を掻くのを繰り返しているうち、平次にもこれが伝染するのであります。

ここまで書いたところで、宮里藍の優勝を深夜のWOWOWで観たんであります。

そうなんであります。

「なでしこ」も、「宮里藍」も、この「伝染」なんであります。

3.11以来の、「がんばろう日本」と言う言葉に出会うたび、この何かの違和感を感じてきて、これがなにかわからなかった。

天罰や自業自得と言う「バカ」はおいといても、どれだけボランティアに参加したかとか、募金をしたかとか、節電してますか、はてまた、脱原発にウツツをぬかして、「がんばろう日本」と叫べば叫ぶほど、このすべてが虚しくひびくのはなぜなのか。

一方で阪神淡路大震災との比較の言葉が飛び交うたびに、なにか今回の大震災との間に、薄膜が張られているように思えてしかたがなかった。

この、これらすべての違和感の正体とは、生命体としての「がんばろう日本」が正しく「伝染」しないもどかしさ、ここにすべての原因があったことに、この宮里藍の大きな日の丸の国旗を背負って優勝トロフィーをかかげる映像を見ながら、いま理解したのであります。

海外のツアーで優勝して、今の被災者に勇気と希望を与える。なでしこの時も、そう言われたけれど、実はこれは本質でも何でもなかった。

福島の原発避難者や被災者すべての人々の心が、そのまま、彼女たちの心に「伝染」して、そしていまこれが共鳴しあっている。

毎日、少しずつでもと続く瓦礫の撤去と、この彼女たちの「勝利」が、直接的に繋がっている。

一方で、脱原発と言う、耳障りな不協和音があふれかえって、こちらはまったくもって繋がらないどころか、被災者はおいてきぼり。

彼女たちの「勝利」を目の前にする一方で、このなぜか「伝染しない心」の存在に、KAIはいまはげしく苛立ちを感じざるを得ないのであります。 KAI