KAIは、リスクに関する専門家でもなんでもないけれど、このところ世の中巷噴出するリスクに関する議論は、根本から狂っている。
今回の議論の発端になった原発。
事故原因を、リスクとそのコスト負担の議論に帰結させようとする方々は、根本的にご自身の「お頭」のレベルが小学生以下であることを自覚した方がいい。
リスクがより高ければ高いほど、リスクに対するコストが高くなる。
一見、真実のようで、まるでそうではないのであります。
高い津波に耐える原発を作るコストは膨大だと。だからできなかったと。
リスクをゼロにしようと思えば思うほど、コストは上がる、と。
一体誰が「リスクをゼロにしろ」と言っているのでしょう?
人は生きている以上、世の中のありとあらゆる事象にリスクは伴う。リスクゼロと思われた東電株も、もはや紙切れ寸前。
リスクとコストの間には、実は何の関係もない。
リスクと直接関係するのは、コストではなく、「保険」なんであります。
もちろん「保険」と言っても「コスト」と言う「お金」のことではない。
例えば、飛行機事故のリスク。エンジン故障のリスクを減らすために、予備のエンジンをいくつもつけるのかと言う暴論は問題外にしろ、常に飛行機が事故にあうリスクはゼロにはならない。
2機あるエンジンが両方ともストップしても、そのまま墜落して乗員、乗客全員死亡とならないよう不時着できるようにするのが、この場合の「保険」。
今回の福島原発の電源喪失。もちろんこのリスクは「想定内」だから、バッテリー、自家発電、すべて用意したのに、これもすべてダメになった。
そんな事態になっても、電源喪失を回避する手立てが「保険」なんであります。
どうやって?
簡単でしょう、今回取った方法と同じことをすればいい。「外部電源」であります。
実は、今回のリスク議論の盲点は、ここにあるのであります。
そもそも「外部電源」の電源喪失と言うリスクに対して、「外部電源」以外の方法を考えると言うのは至極当然のように思われるけれど、今回のリスクは、「電源喪失」であって「外部電源喪失」ではない。
この「リスク」の本体を勘違いしたために、取られた「リスク対策」がすべてダメになった場合でも危機を回避するための「保険」が準備されることはなかった。ただそれだけのことだったのであります。
別系統の「外部電源」と言う「保険」にかかるコストがどれだけのものか。素人が考えてもこんなことは簡単に分かる。
要するに、「保険」をかける、と言う概念の欠如こそ、今回のリスクにおける最大のリスクであったのであります。
これもまたシンクロニシティ。IT業界にもリスクの嵐であります。
自業自得と言うもの。いままでさんざんOracleをかついで高い製品を売りつけておいて、なんて嫌味はおいておいて、この戦略は実に正しい。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2011年4月26日、データベースに関する新戦略の発表会を開催した。新戦略では「データベース ロックリリース」をキーワードに、特定のベンダーの製品にロックインされがちなデータベース環境を、他のベンダー製品上に移行しやすくするサービスを提供する。これにより、データベースベンダーに対するユーザーの価格交渉力を高めることを狙いとする。
日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂執行役員(写真1)は、新戦略を発表した背景として「ユーザーのコストを削減するには、データベースソフトに支払うライセンス費用を見直すことが必須になっている」ことを指摘する。日本HPの試算で2005年の同一性能モデルと現在のコスト構成を比べてみると、ハードウエア費用は20分の1以下になっているのに対し、データベースは30%強ほど下がっているに過ぎない(写真2)。結果として、データベースソフトのライセンス費用が、サーバーのハードウエア価格の約11倍に達しているという。
続いて説明に立ったサーバーマーケティング統括本部 製品戦略室の山中伸吾室長(写真3)は「2010年12月に日本オラクルがItaniumベースのプロセッサーライセンス係数を予告なく2倍にしたことで、プロジェクト進行中のユーザーに多大な予算増が発生してしまった」と、今回の戦略に対するきっかけとなった出来事を説明した。その後の2011年3月に日本オラクルがItanium環境に対する新規開発終了を発表したことについても触れ、「市場を無視して自社の環境に乗り換えさせようというもので、こんな暴挙が許されるのか」と怒りを隠さない。
(「ユーザーに対する暴挙を許せない」、日本HPがOracleからのDB移行戦略を発表)
サンを買収し、MySQLまで手に入れたOracleが、いよいよ脅威になりだして、そのリスクに「保険」をかけようってお話であります。
そして、こちらはクラウドのリスク。
まったくもって無知蒙昧としか、言いようがない。日本時間の2011年4月21日(米国時間 20日)から、Amazonが提供しているクラウドコンピューティングの基盤サービスであるEC2に重大なトラブルが発生している模様で、世界規模で さまざまな利用企業に対して深刻な影響を与えています。
このトラブルのため、カナダのソーシャルメディア向けコンテンツ配信サービスのHootSuieや、Q&AサイトのQuora、位置情報ゲームサービスのFoursquareなどの有力ネット企業が一時的なサービス停止に追い込まれています。
実は僕が経営するモディファイのSaaSサービス群のほとんどが、このEC2を利用しており、我々の事業に(とクライアントの皆様に)も決して軽くない影響が出ています。(クライアントやユーザーのみなさまには多大なご迷惑をおかけしていることに、大変申し訳なく思っています)
(AmazonのEC2長時間ダウンにみるクラウドコンピューティングの未来)
ITにとってバックアップと言う「保険」は当たり前。バックアップとは、データのことを言うのではない。サービスそのもののバックアップを言うのであります。
基幹の業務に利用しようと考えれば考えるだけ、このバックアップのないサービスなど、怖くて使えない。
ミッションクリティカルと言う言葉がありますが、こう言ったシステムの開発経験のない技術者には、なかなかこれが理解できないのであります。
いまやSNSやツイッターもダウンすれば大騒ぎになる。だから、このサービスを支える技術者たちはアクセスが集中してもダウンしない程度の技術まではわかるけれど、それでもダウンしてしまってから、ではどうすればいいかの技術がわからない。
クラウドは、決してブラックボックス化と同義ではなく、むしろ180度反対に位置する技術であることの理解こそ、この「保険」がいかに重要であるかをご理解いただく一歩となると、KAIは考えるのであります。 KAI