都心溶融

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地震以来、この国の専門家、政治家、知識人と言われる方々の、一連の言動を見聞きするにつけ、原発で発生した「炉心溶融」は、彼らのお頭の程度、すなわち「レベル」を表す典型的、象徴的現象と言わざるを得ないと考えるのであります。

そもそもにおいて、一般的日本人のお頭の程度は、40歳を境にして、再構成可能なブロック脳と、再構成不能な溶融脳(融解脳)の二つに分化すると、KAIは考えているのでありますが、今回もまたこの自説を裏付ける事例満載なんであります。

融解脳とは、読んで字のごとし。ものごとの識別が、融けてしまって、区別できなくなってしまうのであります。融解脳を示す典型的特徴は、単なる韻を踏むとかだじゃれなどではない、本気モードの言葉遊びであります。

 前にも紹介したが、中西輝政氏の『なぜ国家は衰亡するのか』に「大英帝国衰退の光景」という一章がある。あの繁栄を誇った大英帝国に20世紀初頭、衰退のきざしが見える。そのとき国民の間に何が起きていたかを丹念に調べ上げている。

 ▼例えば海外旅行ブームが起き、温泉ブームに沸く。古典より軽薄な趣味が増え文字よりマンガが好まれる。どれも今の日本や先進国に当てはまりそうだ。その極めつきが「健康への異常な関心」である。新聞は競って健康に関する記事を載せ、雑誌は健康法の特集を組む。

 ▼たばこを好きなだけ嗜(たしな)み、パイプをくわえ健康食品を買いにいく人を皮肉る記事もあったそうだ。今の日本にもありそうな話だ。むろん普段のときであれば目くじらを立てる話ではない。「健康であれば死んでもいい」というジョークも笑って聞き流せる。

 ▼だが今度の大震災では、食料もまだ十分確保できない人たちがいる一方で、風評被害や買い占めが起きている。ごく一部の作物から放射性物質が検知されただけで、野菜全体が売れない。水道水から一回だけ検出されると、もう水の買いだめに走る。

 ▼冷静に考えれば、いずれも健康被害にはほど遠い話だ。それがすぐパニック状態となる。それは異常なまでの健康ブームの悪しき影響と思わざるをえない。この非常時にも「自分と家族が健康であればいい」という気分が巣くっているのである。

 ▼温泉ブームも健康への異常な関心も国家衰退の光景であり原因ではないかもしれない。だが国民が一体となり復興に取り組まなければならないとき、風評に惑わされ買い占めに走る。それでは復興どころか、日本が衰退の道をたどりそうな気がする。
産経抄、2011/4/10

ただ単に「言葉」や「記述」が一致するだけで、論理的に接続可能と考えてしまうのであります。「記号」としての「言葉」や「記述」が、「実体」と融解し一体化してしまうのであります。「記号」が一致すれば、なんの躊躇もなく「実体」を同じと思い込みはじめる。

水道水から一回だけ検出されると、もう水の買いだめに走る。

抄子さんよ、おたくの記者および家族の誰一人として、水を買いだめしなかったと、自信を持って言えるんですな、え?

この日、都は一斉に幼児の水道水の飲用を控えるように言い、備蓄のペットボトルの配布を始めたと言うのに、え、おたくの立派な社員さんたちは、それをおかしいと言って、拒否なさったんですな。なんともご立派なことで。

ま、こんなつまらん記事にかみついても、前向きな議論にはなりませんので、今日書きたかったことは、こちら。

融解脳の代表と言えば、この人。と言っても名前をあげるまでもありません。

国のリーダーの「脳」が、「溶融」していると言うことは、おそかれはやかれ国と言う「社会」自体が、「溶融」し始めると言うことであります。

このように大局的戦略がなく、空気に押されてずるずると状況的に意思決定が行なわれる日本的組織の欠陥は、現在の原発事故の処理をめぐる迷走にも受け継がれている。かつて丸山眞男などは、このような無責任体制の原因を天皇制による「権力の空白」を軍部が埋めたためだと考えたが、実は空白を埋めたのは「民意」だった。新聞が大本営発表を報じたのは言論統制のためではなく、好戦的な新聞ほど売れたためだ。

だから大江健三郎氏のいうように国民に罪はないが軍部が暴走したなどというのは、小説以下のフィクションである。国民の支持なしに、あれほど長期の戦争は不可能である。軍部の暴走を生んだのは、客観的条件を無視して「大和魂」さえあればどんな困難も乗り切れると思い込む国民と、それを説得できない(あるいは迎合する)政治家だった。愚かな戦争を生んだのは愚かな国民なのだ。
戦争は「軍部の暴走」だったのか - 『あの戦争と日本人』

「溶融」し始める、と書きましたが、すでに「溶融」してしまった結果が、「民主党政権」を生み、「溶融脳」のリーダーをかつぐはめになったと言うわけであります。

こんかいもまた、あの原子爆弾による戦争終結の時と同じように、「原発爆発」と言う「神の手」によってしか、この悪夢を終結させ、地獄を脱する方法はないのだと、思わざるを得ないのであります。なんとも罪深い国民なんでありましょうか。 KAI