クラウドコンピューティングは不注意なコンピューティング?!

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なかなか刺激的な指摘でありますが、これからのコンピューティング社会の有り様への、これは本質的な問いかけとしてより深く考える必要のあるテーマなんであります。

 オープンソフトウェアの擁護者で、コンピュータ業界の中でもとりわけ遠慮なく発言する人物であるRichard Stallman氏は、「Chrome OS」が好きではないようだ。

 Free Software Foundationを創設したStallman氏は、The Guardianの英国時間12月14日の記事で、クラウドコンピューティングという概念への非難を続けた。同氏は記事で、Chrome OSのクラウドモデルという概念は、クラウドコンピューティングというより「ケアレス(不注意な)コンピューティング」と表現する方がよいのではないかと語った。Chrome OSは、Stallman氏が大切にしているGNU/Linuxのプロジェクトに大まかに基づいてはいるが、「通例のアプリケーションなしで配布され、アプリケーションのインストールを妨げて阻止する作りになっている」という。
(中略)
 Stallman氏はとりわけ、こうしたコンピューティングモデルで自分のデータに対する管理が失われることを懸念しており、たとえば、玄関で令状を見せることなく政府当局がユーザーのデータを押収できるようになる、と指摘している。Stallman氏は数年にわたり警告を発してきたが、同氏の警告をどの程度留意すべきかについては意見が分かれている。

 Stallman氏のほかにも、12月14日にChrome OSへの懸念を口にした人物がいる。Googleの元エンジニアで「Gmail」を開発したPaul Buchheit氏は、2011年中にこのプロジェクトは廃止されるか、Googleの別のOSであるAndroidに吸収されるだろう、とTwitterで予言した。
R・ストールマン氏、「Chrome OSは不注意なコンピューティング」と批判

ここで指摘されている論点は二つ。一つは、Chrome OSのようなクラウドオンリーとも呼ぶべきクラウド偏重思想の問題であり、もう一つがクラウドコンピューティングそのものが持つデータ管理の危険性の問題であります。

まず前者について。普通に考えれば、すべてがクラウド一辺倒でいけるわけがないのは自明であり、棲み分けこそ未来のコンピューティングのあり方であることに議論の余地はないのであります。

ただ、問題があるとすれば、Chrome OSのようなネット接続前提のOSとは、果たしてChrome OSが最適解と言えるかどうかであります。

一番気になるのがプリンタなどの外部装置のドライバー問題であります。すべての外部装置について、Chrome OS向けに新たにサポートしなければいけないとしたら、その市場性から対応できるメーカーは限られる。

更にネットに接続できないときのための仕掛けとして、Google Gearsでどこまでアプリを作ることができるのか、まったくもって不透明であると言うこと。具体的には、例えばスマホ向けのAndroidアプリと同じアプリをGoogle Gearsで作ることができるかどうかってことであります。

この2点だけを考えても、Paul Buchheit氏の予言どおりになるとKAIも考えるのであります。

次に後者の問題。

「玄関で令状を見せることなく政府当局がユーザーのデータを押収できるようになる」と言うのは、自宅の玄関がデータセンターになるだけで、然したる違いはない。

一番大きな問題は、クラウドサービスにおけるデータの保全性の問題であります。無償のサービスが理由とは言え、これが保証されていないサービスでは使い物にならない。

有償のサービスでも、このデータの保全性を一番に考えているのか、きわめて疑わしいところが大半のような気がするのは、そのWebサービスと言うマルチクライアントな仕掛けによるのかもしれない。

技術者であるKAIでさえ、こう思うのですから、利用者が不安に思うのは当たり前なんであります。

これをカバーする方法は、今のところ一つしかないとKAIは考えています。それは、オフラインのバックアップサービスであります。オンラインのバックアップは常識ですが、これに加えて定期的にオフラインのメディアにバックアップを取り郵送するサービスであります。これであれば少なくともデータをこちら側に保管できる。

以上の結論を言えば、クラウドコンピューティングとは、決して特殊なサービスでもなんでもないと言うことであり、データの保全性に関して、いままでやってきたことを当たり前に普通にやればいいだけのことなんであります。これをやらないクラウドサービスは、確かに「不注意」と言われても致し方ないのであります。

そしてもう一つ。

「ITベンダーに対する改善要望」で最も多かったのは、「もっと値下げしてほしい」(引用者注 57.1%)だったものの、情報公開の強化を求める回答が上位を占めた(図2)。「セキュリティ管理体制を明らかにしてほしい」(51.1%)、「料金体系を明らかにしてほしい」(48.1%)、「システムの構造や管理体制を明らかにしてほしい」(40.2%)が目立つ。ユーザー企業の不満に応えられるかどうか。クラウドサービスを提供するITベンダーの“情報公開力”が問われている。
徹底調査!クラウドサービス利用動向 ベンダーに対する要望は“情報公開”

とにかく、クラウドは高すぎる。前にも書いたけど、まったくもって日本のベンダーは何を勘違いしているのか!

この一点において確かに、「日本の」クラウドコンピューティングは不注意なコンピューティングとしか言いようがないのであります。 KAI