「ファッションが教えてくれること」と言う映画を早朝のWOWOWでやっていた。何気なく観ているうちに、ついつい最後まで見入ってしまった。
原題は、The September Issue。9月号、であります。
ヴォーグの9月号が、翌年のファッションの流れを決めるとさえ言われてきた。舞台は2007年9月号の編集。『プラダを着た悪魔』のモデルとも言われる名物編集長アナ・ウィンター。彼女を通して、働くことの厳しさと快感を描いたリアル・ワーキング・ムービー、とのキャッチコピーでありますが、毎号900ページと言う電話帳並みの厚さの月刊誌、これがどのようにして出来上がっていくかのプロセスが、きわめて興味深いのであります。
発行部数は優にネット含めて一千万部を超える。
これを支えるのが、編集長のアナ。「セレブ」時代の到来を誰よりも先に予見し、ヴォーグを一千万部の巨大ファッション雑誌にした立役者なのであります。
これが、彼女のヴォーグを通しての一貫したメッセージであります。ファッションは、ストーリー
毎号毎号、彼女は、締め切り直前の寸前までこだわり続ける。締め切りの2日前、すでに1万ドルかけて撮影した写真を没にして取り直しを命じる様は、ワンマンをとっくに通り越して、孤高のアーティストの姿を彷彿とさせるのであります。
面白いのが、毎号、パネルの4段に並べられる、表紙から背表紙までの100数十枚の写真。アンは、編集過程で終始ここに写真をおいて、採用、不採用、掲載順序、すべてをこれで決めていくのであります。
もちろん9月号だけでなく、7月号、8月号と平行してこの作業が進行していくのだけれど、締め切り直前、1ヶ月前、2ヶ月前のパネルが固定されていて、この映画のエンディング近く、9月号の編集終了と同時に、このパネルも9月号のものが取り払われ10月号の写真に並び替えられるのであります。
まさに、アンは、このパネルの中に、ファッションと言う壮大なストーリーを見るのであります。
ひるがえって日本の、ユニクロ。
この会社は、ファッションの会社であるや、いなや。答えは明白であります。
以前読んだ記事の中に、すばらしく優秀ではあるけれどファッションに興味を持った社員が自分の周りに誰もいないことに失望して、ユニクロを辞めていった人たちが集まっての起業のお話を読んだ記憶がありますが、ユニクロの不振の原因とは、まさにここにあるのであります。ユニクロがUJの不発移行、不調が目立つようになってきました。「しまむら」や「ポイント」の月次売上の推移をグラフ化してみました。それを見ると、ユニクロの不振ぶりがわかります。
この11月の既存店売上高は、「当月は昨年の売上水準が高かったことから既存店売上高は前年比14.5%のマイナスとなりましたが、20日から実施したファーストリテイリング創業感謝祭をはじめとした販促活動が奏功し、ほぼ計画通りの水準となりました」(ファーストリテーリング)ということですが、今年に入って既存店の売上高で、前年をクリアしたのは、5月と7月だけで、5月も販促キャンペーン「ユニクロ誕生感謝祭」によるものです。7月は猛暑効果とすれば、販促キャンペーンを打たないと売上が伸びない状況になってきているということでしょう。
どうもユニクロのポジショニングが難しくなってきているように感じます。実用衣料なのか、ファッションなのか。きわどい境目にユニクロがあると思うのですが、ファッション性を売ろうとすればするほど、トレンドの変化を読んだ企画力、また売れ筋変化にたいする迅速な対応力が必要になってきます。それを実現する体質やしくみがあるのかどうかが従来以上に問われてきます。
(ユニクロは、どこに向かうのか)
それにしてもであります、世界のブランドと伍して戦うには、これではあまりにもお粗末。ユニクロと同じく、英語を社内公用語化する楽天にも共通するのは、世界進出して何を訴えようとするのか、このストーリーの、決定的不在であります。
そこで、あらためて問題となるのが、この「ストーリー」。
ストーリーとは、簡単に言ってしまえば、時間。
あらゆる物語は、時間の流れの中に、ある。
この時間は、ヴォーグと言う1冊の雑誌の中のページの中にも、いまあなたが身に着けている素敵な洋服の中にも、あるいは、渋谷のハチ公前のスクランブル交差点の中にも、あらゆる場所とモノの中に、この時間は、あるのであります。
ファッションとは、この時間の流れの中に、あなた自身が身をおくかどうか。ただこの一点に尽きるのであります。いかなる時間の流れの中に身をおくかを、自らが選択する。
そして、そこにいる居心地のよさを楽しむ。楽しむあなたの表情がステキになる。これが周りの人を幸せにする。時間が空間へと拡がっていくのであります。
時間と空間の拡がり、これを豊かさと言うのであります。
ファッションが、人の心を豊かにする所以であります。
そして、こちらも人の心を豊かに幸せにする、週末テニス。いよいよ師走ですよと言うこの時期に、調子を合わせるように気の流れが良くなってきた。
結果は、土曜、5-7、0-6、1-3、日曜、6-4、3-6、1-6と、2日合わせて1勝しかできなかったけれど、まったくもってこれは関係なし。気の流れがいいから、心地好いことこの上ないのであります。 KAI