アゴラに小川浩と言う人が書いているが、起業家にはPrediction(予測・予言)が必要だと言うのは、まったくもってその通りであります。
僕は経営者には(特に小さな会社、ベンチャーでは)4つのPの使い方に長けている必要があると考えるようになっています。
それは、
・Prediction(予測・予言)
・Pressure(圧力・プレッシャー)
・Patience(忍耐・我慢強さ)
・Passion(情熱・感情)
(起業家に必要な4つのPの使い方 - 小川浩)
と言っても、ではこの予言が、どこか日本の起業家から出てくるのかと言えばそうではない。ことごとくは、ジョブズやシュミットのコピーにすぎないことを、さも自分の予言がごとく吹聴する。
まことに、情けない限りであります。
なぜ、ことごとくの日本の起業家は、「独自の予言」ができないのか。
その理由を、今回は解き明かすことにするのであります。
まず、その前に、日本の起業家の予言が決して「独自の予言」でないことを示さないと、なかなかみなさん、この先を読んでいただけないと思いますので、これを説明するのであります。
当の本人の小川浩氏をだしにして大変申し訳ありませんが、氏の「ソーシャルメディアマーケティング」からして、「予言」とはほど遠いものと言わざるを得ないのであります。
「予言」とは、明確に未来に起きる「事象」を言い当てることであります。
みなさんには、この未来に起きる「事象」の意味を、もう少しきちんと理解していただく必要があるのでありますが、みなさんのほとんどの方が誤解しているような、未来に起きる「事象」とは、ノストラダムスの予言がごとく大地震や隕石の衝突のようなカタストロフィ的事象とは、ほど遠いものであることをまずはもって理解する必要があるのであります。
すなわち、社会が、例えが古くて理解できないかもしれませんが、例えばバス中心からマイカー中心へ、白黒テレビからカラーテレビへ、固定電話から携帯電話へ、ISDNからネット常時接続へ、といま当たり前と受け入れていることが、つい数年前までは、誰もそんなことは一言も言ってなかったようなことを、普通になる前に、一人もくもくと「予言」することを言うのであります。
この意味で、「ソーシャルメディアマーケティング」も、これ以外のことごとくのメディアに出てくる、クラウド始めとした、予言と思しき言葉が、ただ単に「いまある」事象をなぞるだけに過ぎないことにお気づきになるのではないかと思うのであります。
そこで、日本の起業家が「独自の予言」ができない理由であります。
これは逆説的ですが、ジョブズにしろシュミットにしろ、彼らがやっていることは予言ではないと言うところに、今回の問題解決のヒントがあるのであります。
つまり、彼らは「予言」ではなく単に「創造」しているだけで、これから何が起きるかなど微塵も考えてはいないのであります。
ひるがえって、日本の起業家。まったくもってこの「創造」の気概が、ない。ただひたすら、部分最適化しか考えない。これではイノベーションもなにも起こるわけがない。
梅田望夫が日本に拡げたWeb2.0。
これは例外的に、梅田と言う日本人起業家による「予言」であります。
この梅田の予言を、実に4年後に、斎藤由多加が実感することになるのであります。仕事の関係で、一ヶ月ほど先行して僕もiPadをさわって、そして昨日社員にそれを貸すことになりました。その際に改めて驚いてしまったことがあります。通常パソコンを人に渡す時はハードディスクをきれいにして、つまり「初期化」して渡すのが慣例です。必要なデータはすべてバックアップする。ところが、このiPadでは何もする事がない。ただ「リセットする」だけ。ローカルにバックアップするデータをひとつも持っていないことにあらためて気付かされたわけ。
ツイッターで知人が「自分の所有物としての愛着がわかない」とつぶやいてました。たしかに本質は手元にはなにもない。自分自身はどこにあるのか、といえば、サーバー上の、自分のアカウントの中でして、iPadはそのエイリアスみたいなもの。ネットカフェのパソコンのようなものなのですね。それがクラウドです。
(子どもたちの時代の結婚披露宴とiPadとかクラウドの関係)
これぞ「予言」ではありますが、だからと言って、この斎藤由多加が他人のコピーではない「予言」できない起業家かと言えば、まったくもってそうではない。彼こそ、日本、いや世界におけるシミュレーションゲームの新たなる本流を「創造」した男はいないのであります。それが「タワー」であり「シーマン」なんでありますが、まるでどのメディアもいまこれを取り上げることはない。
実は、この構造こそが、日本の起業家が「予言」、すなわち「創造」のできないとする根本的な環境を生み出していると言えるのであります。
わかりにくいもの言いで、すまない。
要するに、CnetもITProも、ITMediaも、どこを眺めてみても、日本と言う国のメディアの中には、その分野に精通した専門家集団からなるメディアが独立して存在していない。専門家ではない、素人の記者の集まりにしかすぎないのであります。
やっと、結論であります。
いま、世の中で起きているすべての事象の本質は、ソフトウェアであります。
そしてこのソフトウェアは、アプリケーションと言う付加価値を持ち、ソフトウェアにかかわるあらゆるビジネスが、この付加価値を中心に回っていると言う、根本原理を理解する必要があるのであります。
いまソフトセクターで生き残っている、あるいはグリーがごとくいま興隆をきわめる企業のすべては、この原理原則の中にある。
つまりは、そう言うことなのであります。
これをすでに何年も前から「予言」し、これを「創造」してきているにもかかわらず、専門家集団からほど遠いメディアが、これを取り上げることも、ましてやこれを評価することもない。ゆえに、日本人起業家に「創造」者は存在しない。
こうなるわけであります。
アプリケーションこそ、ソフトウェアの付加価値の源泉。
これを理解して初めて、ツィッターもソーシャルメディアもなにもかも、たちまちにしてその本質が分かる。
ですから、申し訳ないけれど、コンテンツやhtmlやスマートフォンのダウンロードプログラム程度のビジネスが、世の中を変えるなどと勘違いするのもほどほどにしてもらいたいのであります。こんなもの、所詮、すべてジョブズやシュミットのコピーに過ぎない。
そう言うことなんであります。 KAI