これはたぶん、KAIがいつも考え続けてきたことで、しかし言葉にできなかったことのそのものずばりを、初めて言葉として目にすることができたのではないかと、少々感動しながら思うのであります。
要するに、といつものようには要約できないのでありますが、見事なまでにコミュニケーションの本質を言い当てているのであります。これらの断片的事実から推論される結論は意外なことに「公共性と身体性は相関する」ということである。
書いている私もびっくりである。
身体技法の学習とは、端的に言えば、他者(師匠)の身体との鏡像的同期のことである。
他者の身体に想像的に入り込み、他者の身体を内側から生きるということが身体技法の修業ということのすべてをそぎ落としたときの本質である。
その修業は「どのようにして他者の身体に同期するか。どのように呼吸を合わせるか。どのように筋肉のテンションや関節のしなりを揃えるのか。どのようにして内臓感覚を一致させるか」といった一連の技術的な問いをめぐって進行する。
それらの問いは「どのようにして他者との深く、肌理細やかなコミュニケーションの回路を存立させるか」というふうにも言い換えることができる。
コミュニケーションの回路を行き交う「コンテンツ」の意義や真理性よりも、コミュニケーションの「回路そのもの」が順調に機能しているかどうかを優先的に配慮する人間はたぶん「あの、ちょっと」的な本は書かない。
(「あの、ちょっと」な本について)
そして、こちらはマーケティングと言うコミュニケーション問題。
こちらは、冒頭の「身体性」のお話とは、まったく別のお話かと言えばさにあらずなのであります。実はこのリリースが今回最大のファインプレーだったかもしれない。ヤフートピックスだけでは一晩のお祭りで終わっていたかも知れないところ、今度はこのプレスリリースがきっかけとなってまたニュースになり、地方紙や雑誌からの問い合わせが急増し、それが記事として取り上げられる、という好循環に入ったのである。
元はと言えば話題作りのためではなく、生保業界の構造的な問題である情報の非対称性に一石を投じたい、消費者が商品について知るべき当然の情報を了知した上で購入の意思決定をしてもらいたいと考えて行った情報開示だった。それがこれほどにまで話題になり、賛同を呼ぶとは。いかに旧来の業界のあり方への不満が溜まっており、消費者が情報を渇望していたかを痛感した。
当たり前のことを、一つ一つ堅実に進める。それが信頼につながり、事業の成長を加速化させる。やはり近道など存在しないということも強く感じた。
今回の一件を機に取材が増え、かつ知名度がこれまでよりは一段上がったことを感じた。12月の申込件数は11月の619件から968件と約5割増の伸びをみせ、ついに1000件の大台が見えてきた。
(ネット生保立ち上げ秘話(25)13文字の衝撃 − 岩瀬大輔)
マーケティングにおけるコミュニケーションの成立条件には、この「身体性」が不可欠であり、この「実感」抜きにした頭だけのマーケティングなどと言うのは、端からありえないのであります。
「一石を投じたい」
比喩でも何でもない。この「身体性」を伴う言葉にこそ、マーケティングと言うコミュニケーションと言うものの本質が隠されているのであり、その本質が、伝える側と伝えたい相手との間における、「身体性」と言う「コミュニケーションの回路」の形成にあると言うことなのであります。
なるほど、そう言うことであったのであります。 KAI
T.Matsuyama
深く同意します。(はじめてコメントします)
本来、それぞれのサイトにコメントすべきなのかもしれませんが、それ以上に、この2件を併記されて説明されているKAIさんに感謝します。気付かされるところ大でした。
文章を書く、論理を追う、インタビューをするといった場面で、どうも身体の運動、少なくとも脳内の運動のようなものが関係しているのではないかと、かつてから感じていました。
また、マーケティングに限らず数量的分析が納得できる結果になるときとは、単に数字を機械的に計算するだけでなく、数字と“感情”をキャッチボールするような感覚があるように思っていました。
独りよがりで納得しているだけかもしれませんが、このエントリを読ませていただいて「なるほど」とさっきからうなずいています