テレビとは「意識の中の街の風景」(3)

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ここにも、大きな犠牲を払って、この一連のお話をやっと理解した人、と言うかリクルートと言う会社の経営者の面々がいました。

 リクルート事件で自民党単独政権が崩壊し、その12年後に小泉純一郎首相が誕生しました。竹下内閣退陣後、9人の方が首相に就任し政局が混迷を極めたことは、私が「政界によかれ」と思ったことが裏目に出てしまい、慚愧(ざんき)に耐えない思いを今も抱いています。それは生涯背負っていく負い目だとも思っています。

 東京地検特捜部には恨みがましい思いは抱いていません。特捜の使命は大きい。ただ取り調べは参考人も含めて全面可視化でなければならないと思います。

 リクルートの私の次の社長は一切メディアに出ない。その次の社長も出ない、今の社長も出ない。リクルートの売り上げは今や1兆円を超えているんです。その社長の名前、わかります? メディアに一切、出ませんから。江副がメディアに出ていたことを彼らは学習したわけですよ。
(中略)
 江副浩正(えぞえ・ひろまさ) 昭和11年大阪市生まれ。73歳。昭和30年甲南高校卒、35年東大卒。同年にリクルートの前身、大学広告を設立。59年には社名をリクルートに変更。63年リクルート会長退任。平成元年NTT法違反(贈賄)容疑で逮捕され、15年東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を受けた。現在は江副育英会理事長。著書に「リクルート事件・江副浩正の真実」など。
【詳説戦後・政治とカネ】(3)江副浩正氏インタビュー「事件後の政局混迷、慚愧に耐えぬ」 (2/2ページ)

江副浩正。今の20代からすれば、誰それ?なんて言われてしまいそうですが、今で言えば、楽天の三木谷10人分くらいの有名人であったのであります。

この江副が、インタビューに答えているように、メディアを通して政界に深くかかわるようになる。テレビに写ることで、知らず知らずのうちに自分の姿を肥大化させていったのであります。

昔の人は、この危険性を本能的に理解していたのであります。いわく「写真に写ると魂をぬかれる」と。これが、写真がテレビに移って人々の本能が働かなくなってしまった。

この「魂をぬかれる」感覚は、人の生きるチカラ、すなわち生命力の源泉に関わる、きわめて重要な能力であります。

生命力とは、自分と言う個体の中にあるのではない。ほとんどの方々はこれを勘違いしている。朝、起きて、さあやるぞと、なんでやる気が出るかと言えば、それは他者との関係が良好であるからであります。これが良好であればあるほど、自分の生命力を感じる。

逆に言えば、人は、他者から生命力を吸い取って生きているとも言えるわけであります。テレビとは、視聴者と言う他者に生命力を吸い取られる、そう言うメディアであるのであります。

このメディアの中にあって、さんまやタモリがなぜ生命力を吸い取られ尽くされることなく、かくも長い間タレント生命を保つことができるのか。これは彼らが、一般人や他のタレントの参加番組の司会者であることにヒントがあるのであります。

つまり、さんまやタモリは巧みに、自分自身の持つ生命力ではなく、番組に出ている他の一般人やタレントの生命力が視聴者に吸い取られるように仕向けているのであります。ですから、番組に参加する一般人はもちろん毎回変わっていくし、タレントも常に生命力のある若手に変えていくことを繰り返しているのであります。

これから已むを得ず、テレビと言うメディアとお付き合いしないといけないことになった方にとって、このお話は大いなる参考になるはずです。

すなわち「裏方に徹する」であります。たとえインタビューを受ける場合でも、インタビュアーを立てて立ててを徹底することであります。決して主役になってはいけないのであります。テレビとは、危険なメディアであると心すべしなのであります。ま、そう言うこと。 KAI