教育とは「創る喜び」と言う「感動の連鎖」

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たまたま見たNHKの再放送番組、倉本聰の創る世界が、よかった。

 今夜(18)放送の『倉本聰の創る世界』(NHK総合 後10・00〜10・50)から。数々の名作ドラマを世に送り出してきた脚本家の倉本聰。NHKでは初めての新作ラジオドラマの脚本と演出に挑んだ「マロース」を再放送(初放送は09年の12月12日にNHK-FMで放送)が決まった。マロースとはロシア語で、“冬将軍”という意味。倉本自身のライフワークである自然破壊への警鐘をテーマしたラジオドラマで、原案は、半世紀前に「人間が作り出した化学物質が自然のサイクルを壊す」と訴えかけた米国の海洋学者レイチェル・カーソン著「沈黙の春」。そこに、鳥インフルエンザの問題を盛り込み、環境破壊の危険性を問いただしていく。

 今回のドラマ制作には、倉本の思いが深く込められている。自身が主宰する「富良野塾」が、この春閉塾するという大きな節目に、脚本家として第1歩を踏み出した「ラジオの世界」を見つめ直そうと思ったことがきっかけだった。昨年夏の執筆開始から秋の完成まで、その制作現場を詳細に記録、倉本ドラマの秘密に迫る。

 常に「自分は人の心に届くものを書けるのだろうか」という強烈な不安と闘いながら、自らを脚本創りに没頭させていく倉本。それはまさに己の心と精神力との死闘である。さらにラジオという音声だけの世界にも関わらず、実際に喫茶店を作って役者たちに演技させるなど、その演出に妥協はない。せりふ収録や効果音作りの至るところに倉本流の“創るこだわり”が詰まっている。

「“創る”ために、いかに“リアリティー”にこだわっていくか」、その決して“ぶれる”ことの無い強固な制作力が倉本ワールドを形作っていく。観客の心に寄り添う「作り手」であることを信条とし、何もない所から自由に想像力を働かせていく過程こそ“創る”ことだと語る。

 番組は、その創作の世界に密着して、北国・富良野から生まれる倉本ワールドの真髄に迫る。富良野の森や沼をモチーフに、30年あまり暮らしてきた倉本の思いが込められている。ラジオドラマの役者やスタッフには、富良野塾の塾生やOBが大勢関わっているほか、森田美由紀アナウンサーなどNHK札幌放送局のアナウンサーも加わった。

 ちなみにラジオドラマ「マロース」の再放送は、NHK−FMで3月27日(土)の後4・00〜4・50。またドキュメンタリー番組はNHK総合テレビで3月20日(土)の深1・50〜2・40にも再放送される。

ラジオ番組は、(マロース、zoome)とか、(ニコニコ動画)で聴くことができる。

この番組を見て、一番納得がいったのは、最後の場面。冬将軍(マロース)が鳥となって去っていく場面の羽音。倉本はこれを500円の透明のビニール傘で、仕立て上げる。これをスタッフの若い技術者達が横で見て覚える。

そうなんだよね。こう言う場面を、ドラマ作りを目指す若い高校生に見せれば、日本中に倉本聰の2世、3世なんか、あふれかえるのは間違いないのであります。

KAIも、中学生の技術の時間に、車のディファレンシャルの模型を見て、こんな仕組みの車を自分の手でも作ってみたいと、めちゃくちゃ強く思ったのであります。さっそく毎日設計図を書いてはゴーカート作りを夢見ていたのでした。

これが、高校生の時のアポロの月着陸で、無重力船開発へ興味が移ってしまったけれど、ここで火の点いた技術者の「創る喜び」が、いまも煌々と燃え続けていることは、あらためてここで申し上げるまでもないのであります。

倉本は脚本家だけれど、この「創る喜び」は、ハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、すべて一緒。

そしてこれを次の世代に伝えていく、教育も、この「創る喜び」と言う「感動の連鎖」以外にはない。むしろこれこそが、教育そのものの本質であるとさえ言えるのであります。

いまあらためて、「創る喜び」を若い技術者に伝えていきたいとの思いが、KAIの中でふつふつと湧いてくるのであります。 KAI