電子ブック問題とは「メディア」と「情報」のアンバンドル問題

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iPad発表以来、電子ブックの議論が喧しい。

Business Media誠の「電子書籍が普及、または普及しない理由」という記事を興味深く読んだ。記事によると、電子書籍は「普及しない」と考える人は18.9%、普及するかどうか「分からない」と答えた人は37.5%もいたようだ。

分からない?インターネットによって生活がまだそれほど変化していない大半の人にとっては、まだ分からないのかもしれない。でもネットの急速な変化に伴なう痛みを経験したことのある人には、長期的に見て電子書籍が普及するのは当たり前の話。当たり前過ぎて、議論にもならない。
電子書籍の問題は「普及するかどうか」ではなく「いつ普及するか」

もちろん、この「電子書籍が普及するのは当たり前」と言う議論は間違ってはいないし、「当たり前」すぎる結論と言っていいでありましょう。

ただしかし、この議論には大きな問題があります。それは、紙の書籍と電子ブックとは、まったくもって似て非なるメディアであると言う、決定的な視点が欠けていることであります。この、本質のまったく異なるメディア同士を、同じ土俵で較べてみても、なんの意味もありません。

もう少し言えば、紙の書籍とは、メディアと情報が永遠にアンバンドル不可のメディアであり、電子ブックはもともとからしてアンバンドルのメディアであると言うことであります。

つまりは、紙の書籍とは、このメディアと情報が永遠にバンドルされていることこそが付加価値であり、これがすなわちメディアに記録された情報の不変性を保証することになるのであります。

これを理解していれば、こんな未来はあり得ないと言うことが、すぐ分かります。

でも理解しておいていただきたいのはスタートレックのような宇宙時代までを含む究極の未来には、紙という植物にインクで情報を印刷し読み終わったら捨てるという環境に悪い行為や、蓄積して住居スペースを圧迫するような行為を伴なう情報伝達の手段はいずれ姿を消す。その方向に時代は移行しているのは間違いない、ということだ。
電子書籍の問題は「普及するかどうか」ではなく「いつ普及するか」

更にはこういった話も、まるで本質的な意味が理解できていないから、こうなる。

紙の百科事典のビジネスはほぼ成立しなくなったし、音楽はダウンロードすることが主流になってきた。航空券の電子チケット化は急速に進んでいる。
電子書籍の問題は「普及するかどうか」ではなく「いつ普及するか」

百科事典も音楽も航空券も、すべて「情報」。「メディア」は関係ない。つまりは、今までたまたま「紙」や「CD」と言う「メディア」とバンドルしてきただけで、バンドルの必然性はさらさらないのであります。

ですから、この視点に立てば、これから起こることは、自明です。すなわち、紙の書籍から電子ブックへの「移行」ではなく、単なる電子ブックと言う新しいメディアの「進化」であり、両者は「排他的」ではなく「補完的」関係となるわけです。

具体的には、電子ブックで「情報」として書籍を購入し、これを「メディア」として保存したければ紙の書籍を購入すると言うこと。

このビジネスモデルの考え方に基づいた、両方の書籍のそれぞれの付加価値に合わせた新たなマーケティングと値付けが求められていると考えると、すべての問題がクリアに見えてくるのであります。 KAI