小泉・竹中批判が、惨い。「売国奴」よばわりまでする奴輩がいるが、こんな年寄りの作家までもが、「米国陰謀論」と言う週刊誌ネタにふりまわされるとは、世も末としか言いようがない。
−−自民党が凋落し始めた時期は
なだ (1971年の)ニクソン・ショックで、変動相場制に突入してからですね。米国はドルのインフレで起こる経済危機を世界に振り向けることができるようになった。だから、日本政府は米国べったりにならざるを得なくなってしまった。最近の郵政民営化にしても、米国からの圧力が遠因でしょう。西川(善文・日本郵政社長)という人は銀行員時代、米国の銀行に利子を保証して債権を買うと約束した。誰が彼を郵政のトップにして喜ぶか。米国しかない。
−−小泉政権から麻生政権までを振り返って
なだ 小泉純一郎元首相は米国依存症でした。安倍晋三元首相、福田康夫前首相は、何か本当に大きな問題にぶち当たったわけじゃないのに、政権をほうり出してしまった。ある意味で、元首相の大平正芳氏や福田赳夫氏は哲学を持ってました。人気がなかったけれども、最後まで頑張りましたよね。
(【話の肖像画】老婆心ながら…(中)精神科医・作家 なだいなだ(80))
一体全体、なぜこんなことになってしまったのか。このKAIと同じ疑問を持つ人が、ここにもいました。
もっとも討論というのは、反対意見を際立たせる事が前提ですが、自民党、民主党、その他全ての政党が、大なり小なり小泉・竹中批判で一致していたのはどうしてなのでしょうか。異口同音に「行き過ぎた規制改革を巻き戻す」と叫ぶ様は、「なんかヘン」というのを通り越していささか不気味でした。海外に住み、海外メディアの論調を吸収し、日本国内メディアから遠ざかりながらも池田さんのブログだけはしっかり読んでいた私には、現在の日本経済の低迷は行き過ぎた小泉改革の結果ではなく、小泉政権で端緒がつけられた改革路線を、続く安倍/福田/麻生がしっかり継承しなかったからというのが世論の主流だと当然のように思っていたもので。いったいどこでどのように、日本国内における言論統制(?)がこの政界あげての小泉/竹中批判翼賛状態を生み出したのか、皆目見当がつきませんでした。どなたか事情に詳しい方、ここらへんのからくりの種明かしをご教示いただけませんでしょうか。
(総選挙に関する雑感 - 矢澤豊)
そもそも、この「行き過ぎた規制改革」と言う批判が正当なものかどうか。これが正当どころか、いかに不当で卑劣な欺瞞に満ちた言いがかりであるか、これを統計からきちんと検証した本が出ているのです。
本書では実際に「小泉改革で格差は拡大したか」が詳しく議論されているので、少し追ってみよう。(中略)さて、では、小泉政権の期間はというと、2001年から2006年である。あれ? 小泉改革は格差の広がりと関係ありませんね、という結論が出る。(中略)
いや、「小泉改革で格差は拡大した」というのはジニ係数だの所得格差のことではない、完全失業率の問題だ、という主張もあるだろう。雇用が悪化したのは小泉改革の弊害であるといった議論だ。(中略)むしろ、完全失業率の増加は小泉政権以前から見られるので、小泉改革が失業率を減らしていると言えそうだ。あれ? それでいいのか。では、単に働いていない若者を数えるとどうか。これも1990年代からの増加で小泉政権下での目立った増加はない。つまり、ここでも「小泉改革で格差は拡大したか」というと、どうやらそうではない。
では、話題になっている非正規雇用者の増加はどうだろうか。これも統計を見ていくと、同様に特に小泉政権下との関連はなく、それ以前からの変化が続いていたとしか言えない。では、ワーキングプアの増加はどうだろうか。これは統計の扱いが難しいが、やはり同様の結論が出てくる。ではでは、生活保護世帯の増加はどうか。これも小泉改革との関係はわからないとしかいえない。さらに、ホームレスとネットカフェ難民もと統計値を見ていくと、むしろ減っているように考察できる。結局どうなの?
本稿のテーマは、小泉政権が格差を拡大したのかどうかを検証することでした。え? そうなのか。いや、そうなのだ。それが、各種統計を見て出てくる結論であって、逆に、小泉改革で格差は拡大したという議論は、おそらく、特殊な方法論を使っているか、ごく主観的な主張に過ぎないだろう。
これまで見てところでは、わたしたちの実感とは異なり、それをはっきりと裏付けるデータは、公式統計からは見当たりませんでした。
([書評]不透明な時代を見抜く「統計思考力」(神永正博))
これだけ明白なデータが出ているにもかかわらず、です。
再び言う。一体全体なぜこんなことになるのか。これを一言で説明する言葉があります。
為(ため)にする
ある目的に役立てようとする下心をもって事を行う。
(kotobank 為にするとは デジタル大辞泉の解説)
要するに「下心」なわけです。あーやだやだ。日本経済にとって大恩のある二人に対して、こともあろうに「下心」からの批判とは。これはもう必ずや「天誅」が下されることでありましょう。
それにしても自民党。前回のエントリーで、小泉ジュニア圧勝にこそ、自民党復活のヒントがあると書きましたが、小泉・竹中批判地獄に堕ちてしまった方々には、皆目この意味が理解できないでしょう。
小泉批判、世襲批判と言う大逆風の中、世襲であり、小泉である、このジュニアに対して、なぜこれだけ支持が集まるのか。地元と言うだけでは、これは決して説明できる話ではありません。それは、小泉ジュニアと言う「人」そのものへの支持と考えるのが、最も納得がいく答えです。すなわち、世襲であり小泉であることこそ、「小泉・竹中路線」を決して裏切らないと言う確固たる信頼を、有権者から勝ち得たからに他なりません。
つまり、自民党が有権者の信頼を取り戻すためには、「小泉・竹中路線」のような、有権者を決して裏切ることのない明確な政策を打ち立てる以外にはないのであります。
現在の日本経済の低迷は行き過ぎた小泉改革の結果ではなく、小泉政権で端緒がつけられた改革路線を、続く安倍/福田/麻生がしっかり継承しなかったから
(総選挙に関する雑感 - 矢澤豊)
当然、自分たちが犯したこの大きな間違いを、清く反省することがスタートになります。その上で、「小泉・竹中路線」に変わる、成長戦略のための規制改革路線の政策を、改めて明確に打ち出すことです。
民主政権になって、必ず10年前以上のデフレがより深く進行します。再びあのどうしようもない閉塞感が、世の中を覆い尽くすのは、目に見えているのです。
この時に、自民党の手で解決の道筋を示すことが出来るかどうか、これが自民党の命運を決するのは、間違いありません。できたらこれをジュニアに成し遂げて欲しいと思うけれど、まだ若すぎて、荷が重すぎる。
となれば、石破茂。52歳とまだまだ若い。彼なら、この程度の成長戦略は、簡単に理解できるし、自民党の中で経済問題と距離を置いてきたのは返って好都合。おまけに防衛問題では自民保守本流を行く。
自民党の皆さん、ここはひとつ石破茂に託してみてはいかがでしょうか。 KAI
コメント