「安さ」は力だ

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ニトリの経営哲学が面白い。

−−「社内憲法」がおもしろい

 似鳥 読み上げてみましょうか。「1に安さ、2に安さ、3に安さ、4に適正な品質、5にコーディネート」。自分で考えて作りました。1から3を「安さ」にしたのは安さを会社の原点にしたかったから。昔スカウトした役員が私の言うことを聞いてくれなくてね。「品質だ品質だ」と言って高い物を売ろうとする。1万円と2万円の家具で運び賃が同じなら2万円を運べと。その結果、一時売り上げが減ってお客さまも減って、僕の考えと全然違うことになっちゃった。だから憲法で1、2、3で安さを強調したんです。こうすれば品質が1になることはないでしょ。誰も順位をひっくり返せない。私が死んでも変えられない(笑)。
【話の肖像画】安さが暮らしを変える(上)ニトリ社長・似鳥昭雄 (4/5ページ)

この「安さ」の意味を勘違いしてはいけない。「安さ」=「薄利多売」と思いがちだけれど、決して「薄利」ではない。

しかもこの利益は、利益を生むために下請けや仕入先を泣かせたりするわけではない。長年にわたって、地道に利益を生む「仕掛け」を築いてきたからこその利益であり、「安さ」であるわけです。

更にこの「仕掛け」が、いわゆる商品の付加価値であり、品質となるのです。似鳥社長の、

「品質だ品質だ」と言って高い物を売ろうとする。1万円と2万円の家具で運び賃が同じなら2万円を運べと。その結果、一時売り上げが減ってお客さまも減って、僕の考えと全然違うことになっちゃった。

この言葉にあるように、品質優先の価格設定をすると、たちまち顧客の考えるところとは全然違うところへ向かってビジネスする羽目になるのです。

この点は、松下幸之助は、徹底していました。

まもなくして電気アイロンの新製品を発売し、幸之助はこれを市場価格より3割も安く売る作戦に出て、これが見事に当たって売れに売れます。

 品質も高く評価され、昭和五年(一九三〇年)には商工省から国産優良品の指定を受けた。「市場を見ながら製造を考える」−−これこそが、幸之助言うところの「製販一致」であった。
 彼の凄みは、「失敗しながら成功を模索していくというやり方は間違っている」とし、やるからには失敗なしに最初から成功することを自分にも部下にも課したことである。結果として失敗することもあるだろう。しかし最初から「失敗してもいいや」という甘えを抱くことを、彼は厳しく戒めた。
(産経新聞、同行二人(どうぎょうににん)第11回、北康利、2007/11/13、p.26)
松下幸之助の言葉(13)

市場価格より3割も安い価格設定をして、これでも利益が出るように商品を開発する。しかも品質でも負けないどころか、評価まで受ける。決して赤字や薄利の商売ではないのです。

いま経済がこんなだから、このニトリやユニクロが注目されるのではありません。

「安さ」は力であることを、徹頭徹尾理解している企業だからこそ、この厳しい市場の変化を乗り越えていくだけの、大きなポテンシャルを持っているんだと、KAIは思います。 KAI