神の宿るピアニスト−−辻井伸行

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嬉しくて、涙が出てくる。

20歳の盲目のピアニスト、辻井伸行くんが、米ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した。そのときの様子をニュース映像で見たけれど、インタビューに答える辻井くんの言葉は、ひときわ胸に来る。

 辻井伸行さんの話 「(セミファイナルから総立ちの拍手を受け)聴衆の皆さんが僕の演奏を楽しんで聴いていただいているのが分かり、心から楽しんで演奏することができました。現代作品はとても演奏の難しい作品でした。楽譜を手渡さされてから1カ月でしたが、共感を寄せることのできる作品でしたので、僕だけ暗譜をして楽しく演奏したら賞までいただいて感激しています。バン・クライバーンからは結果発表時に2度も祝福の抱擁をされた。奇跡のピアニストでこれからもっと活躍してほしい、と励ましの言葉をいただいて、本当に光栄なことです」
【辻井さん優勝】「心から楽しんで演奏できた」「本当に光栄」

このバン・クライバーン(ヴァン・クライバーン、Wikipedia)は、74歳。自らの半世紀前、23歳で第1回チャイコフスキー国際コンクールでの優勝を、伸行くんに重ね合わせるかのような二度の抱擁に見えました。

そして「奇跡のピアニスト」。聴くすべての人々の気持ちを幸せにする、彼は間違いなく天がこの世に使わした「神の宿るピアニスト」です。

 優勝したときに「うれしい」と一言だけ漏らして抱きしめてくれたという母親や、尊敬している父親に対しては、「ここまで来られたのは両親のサポートのおかげなので、本当に感謝しています。親孝行のために早く自立して、よいお嫁さんを見つけて安心させたい」とにっこり。「1日だけ目が見える日があったら、1番見たいのは両親の顔。だけど今は心の目で見ているので満足しています」と話した。
【辻井さん優勝】「まだスタートライン」 帰国会見で心境

この「1番見たいのは両親の顔」。この一言に彼の心の想いのすべてがあります。

いったい目の見えない彼の「心の目」には、いかなる風景が見えているのか。これを考えると、実は私たちは、光の風景が邪魔をして、本当に見なければいけない風景が、まったくもって見えていないのではないかと、強く思います。

伸行くんの「心の目」こそ、いまの私たちすべての人間が取り戻すべき、大本の「心の目」であると言うこと。これに気づかされたことの意味は、とてつもなく大きい。ただただ伸行くんに、感謝。 KAI