甘い!甘い!甘すぎる!(2)

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今回のエジケンの文章は、良い悪いは別にして、後進の起業家に与える影響が非常に大きいと思われるので、もう少し丁寧にフォローしておこうと思う。つまりしったかぶりのMBAライクな理論面の考察ではなく、実践的な意味での戦略的起業論として、今回の経験を昇華できなければ、まるでエジケンは無駄死にで終わるだけだと思うのです。

まず簡単にあきらめないこと

起業に関して言えば、これが最初にして最後。すなわち、これがすべてです。前回のエントリーに書いたとおり、松下幸之助を始めとした今世に名をなすあらゆる起業家にきけば、間違いなくすべて同じ答えです。

売上をあげなくていい商売などこの世にはない

この意味を中途半端に理解して、起業の意味を勘違いしている、自称起業家が多すぎます。ビジネスモデルとは、あくまでPQがすべてです。P、すなわち売単価と、Q、すなわち売単位数量、この掛け算以外にはありません。

GoogleやYouTubeをして、最初は売上のことなど考えなくてもいいなんて、大きな勘違いも甚だしい。「1999年6月7日 - KPCB、セコイア・キャピタルから2,500万ドルの資金を調達。」(Google、Wikipedia)と、Googleは25億円の資金を調達していますが、いったい誰が、具体的なPQ(売上)の見込みのない会社に出資すると言うのでしょうか。

「ユーザーを増やしてバイアウト」が悪いと言っているのではありません。YouTubeやGyaoのようにいくらユーザーを増やしても、それ単体で売上の上がるビジネスモデルでなければ、これは単にPではなく、Q(ユーザー数)をバイアウトするしか道がなかったにすぎません。これだけのQがあっても、Qに対応するPが見込めなければ致し方ありません。

しかし実際は、YouTubeもGyaoも、最初に彼らの考えたビジネスモデルは、Qはスポンサーであり決してユーザー数ではなかったのです。そのうえでのバイアウトであり、決定的な戦略上の失敗と言わざるを得ません。

ただYouTubeの売却には、次に上げるもう一つの戦略上の問題があります。

生き延びなければ意味がない

死んでしまっては、もともこもありません。すべてお仕舞いなのです。

生き延びるためには、売上が上がるまでは、Googleのように先を見通したエンジェルが不可欠です。いずれにせよキャッシュフローにおける残高マイナスが、そのビジネスモデルの死を意味します。

起業家は、本来これを本能として備えているものです。

お金が尽きれば、その場から即刻退場です。エジケン同様、YouTubeも維持費を維持できない事態に直面します。

そこで泥縄だろうがなんだろうが考えるのが、生き延びるためにいかにして経費を抑えて売上を上げるか、これだけです。ビジネスモデルもへったくれもありません。かっこうなんて関係ない。いまある資産をいかにすればお金、キャッシュにかえることができるのか。必死に、まさに文字通り死を賭して、考えるのです。

ここに、福の神が、いるのです。

では、今回のエジケンにとって、なにができたか。

R行軍記さんが、サヨナラLingrの中で、これを具体的に詳しく書いていますのでぜひ読んでみてください。

これに付け加えるなら、Rejawが、まったく余分であった。Lingr自体の売上が少しでもあがっていたなら、現状を打開する意味でRejawを新たに開発する意味はあった。しかし、結果はLingrの失敗を繰り返しただけであったことは、誰の目から見ても明らかなこと。

しかし、なぜ、そうしたのか。

その理由は、簡単です。

「生き延びる」と言う発想の、決定的な欠如です。

技術開発に一度でも携わったことのある人間なら、当然がごとく、身にしみてわかっていることがあります。それは、技術とは積み重ね以外のなにものでもない、と言うこと。

新規プロジェクトが、たとえ既存技術の応用であろうと、それを完成させる努力がどれほどのものになるか、まともな技術者であれば当然判断できます。そしてそれがすべてコストであることも。

生き延びるためには、売上が上がらなければ、このコストをかけないことしかありません。更にコストをかけることは、ギャンブルで負け続けた男が、有り金を最後のレースにつぎ込むのと、なんらかわりありません。

エジケンには、なにがなんでも成功してほしかったし、成功にたどりつけなかったとしても、成功への道をずっと歩み続けてほしかった。もちろんインフォテリアとの関係が、今回のすべてであったことも想像に難くない。

つぎの、KAIの言う真の創業のための戦略的シミュレーションであったとしたら、これはこれで凄いことですが、あらためて松下幸之助の創業の話を思い出すまでもなく、VCだろうが顧客、ユーザーだろうが社員だろうが、すべての人たちをその起業家の夢に巻き込むしか、成功への道はない。

これをしっかりともう一度かみしめて、エジケンの再起を願わずにはいられません。 KAI